骸骨は助ける

どれだけ歩いただろうか。

この身体、眠らず、食べることも、疲れることもない。

アンデッド特有の能力のおかげで、不眠不休でひたすら道を歩いている。


昼はひたすらに歩いていると、狼に見つかり、威嚇をされることもあるが、匂いを嗅ぎ、興味を無くしたように離れていく。


(食べる身がないから、襲われないのだろう)


時たま会うゴブリンや、先日のような猪も、こちらが骨とわかると、食べる部分がないためか、襲いかかってはこない。

だが、俺はレベル上げのために、コツコツ敵を殺してはいる。


そして夜。これまたひたすら歩く。

頭上には月が出ていて、世界を照らしている。

俺はその月を見ながら、あてもなく歩き続ける。時々、月に夢中になってしまい、木に体当たりしてしまうが、別段痛くもない。

たまに月が雲に隠れ、顔を出さない日もある。

そんな日は、寝静まる狼やゴブリンなどのモンスターを狩っている。昼に狩るよりかは、楽に狩れるのがいいところだろう


ステータスも、別に水に映った自分ではなく、手を見るだけで十分なようだ


名前:

種族:月ノ骸骨ルナ・スケルトン

ランク:E

レベル:12/20

HP92/92

MP18/18


固有スキル

月ノ眼

堅骨


スキル

剣術Lv2

隠密Lv1


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛、忍び寄る恐怖


レベルも、進化への折り返し地点といったところだろうか。


(歩き続けて、何日目だろうか)


あてもなく歩き続けてきたが、これでは金色に光る泉も、真っ白な洞窟も、雪山にそびえる氷の城も、どこにあるのかわからない。


(人に聞こう……露天の商人か、街……か)


街に入る勇気などはなく、俺は整備された道をひたすら歩いていた。

馬の音がすれば、森に入り身を隠し、街が近づけば、何もない森の中へと突き進む


(月は18回ほど見たか。つまり、それほど日が過ぎたということだな)


今日も今日とて、道無き道を、歩いていく。


(どこかに人はいないものか……)


その時だった


「お父さーん!お母さーん!助けてー!!」


女の子の泣き声が、森の奥から聞こえた。

俺は、すぐに声がしたほうへ走る。

木の枝などは、走る俺の邪魔にはならず、次々とへし折れていく。

少し走ると、広い場所へと出た。

大木を背にし、木の棒を前へ振り回す少女。

傍に転がっている籠からは、草花が落ちている。

その少女を取り囲むように、狼が3匹


(やっと会えた人間だ。話を……の前に)


肋骨の骨を1本外し、狼めがけて全力で投げる。

青い肋骨は直線的に飛んでいき、一番端にいる狼の頭に炸裂した。


バゴッ


嫌な音がして狼が倒れる。死んだようだ。

残りの狼は、その死んだ仲間を見て慌て、周りを警戒する。

少女は口を手で覆いながらびっくりしている。


俺はその隙を見逃さず、物陰から出て、そのまま狼の首を一閃。噛み付こうと襲い掛かってくるもう1匹に、左腕を噛ませる。木の盾は既に壊れていた。

だが、狼の顎は、俺の骨を砕くほどの力はなかったようだ。

俺は下から剣を尺骨と橈骨の間から差し込み、狼の頭に突き刺し、捻った。


俺は、一瞬にして3匹の狼を葬ることに成功した。


剣についた血を払い、鞘へと戻し少女へ向き直す


「あ、ありがとう。ございます」


少女は、震えながら尻餅をつくと、安堵したようで、お礼を述べた


「礼には及ばない。ところで、少し尋ねたいことがあるのだが」


「は、はい」


少女は、目を離さずにこちらを見る。


(この少女……耳が長いな。ダンとシシリーとは比べものにならない……こういう人間もいるのか)


そう考えていると、森の中から矢が飛んでくる


俺は難なく右腕で弾き、矢が飛んできた方向を睨む

すぐ後ろから別の人間が飛び出し。攻撃を仕掛けてきた。

俺は、振り向きながら剣を抜き、それを受けた。後ろからはニ射目の矢が飛んでくるが、ガードはしない。

外套を開き、骨と骨の間を矢が貫通するようにし、そのまま反対側の男へと突き刺さる。


「グッ……」


矢が刺さった男は後退し、森の中から次々と人間が出てくる。皆耳が長い


「貴様!何者だ!」


どうやら取り囲まれてしまったようだ。


「通りすがりのものだ。道を聞きたい」


「人間は皆そう偽る。このエルフの森へなんのようだ!」


(俺が人間?エルフの森?)


俺達は武器を構えたまま、話が進んでいく

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