骸骨についていく
そして俺たちはミカイルに案内された服屋でハルカの服を買った。
街のエルフたちが着ているような、葉のような模様が描かれた服とスカート、ミカイルたちが着ているような、魔法が付与された服などをハルカのために買った。
「ムルト様も記念に買いましょう!」
「いや、俺はどうせ披露する機会がない」
「思い出ですよ!思い出!」
「だが」
「私も選ぶのをお手伝い致しましょう」
そんなことがあり、ミカイルとハルカに俺の服も選ばれてしまった。
鎧などよりも骨の方が断然防御力が高いので、魔法の付与されたものは買わず、普通の服だ。
緑色を基調とし、首元の葉脈のような線に青色が入っている
「お似合いです!」
「あぁ……部屋着として使おうか」
「それが良いと思います!」
正直、服はひらひらとして動きにくく、モンスターの俺にはいらないものだと思っていた。だが人間は衣服を身につけ、オシャレをするものだ。
(たまに着るのも、悪くないな……)
諸々の買い物を終え、帰路につく途中、俺はミカイルにそろそろエルフの国を出ようと思っていることを伝えた。
「ジルに別れの挨拶をしたいのだが、予定は空いているだろうか」
「お聞きしておきますね。ムルトさんたちは、どれくらいにここを発ちますか?」
「急ぎの旅ではないが、早ければ早いほど……準備が整うのなら明日にでも」
「そう、ですか……かしこまりました。それでは陛下に時間があるか聞きますね。それでは、ごゆっくりと」
「あぁ。ありがとう」
ミカイルはそう言って家を後にする。
家に残ったのは俺とハルカだけだ。
この国に滞在したのは1週間と少しだが、それでも楽しく、色々なことがあった。
まずはエルフにつけられ、敵視されたところからだろう。本当は、あそこで逃げられても仕方がなかったかもしれない。あの時の彼が、木板を見てくれなければ、その木板を疑い、ミカイルに届けていなければ、俺はここにいない。
角の生えたスケルトンも、俺が行くことを無理矢理にでも決めなければ、俺が角の生えたスケルトンを倒せる可能性があったおかげで、ここまで優遇されている。
パーティを開いてもらい、世界樹の上で風呂も入り、バルギークなども非番の時に俺たちに街の案内、兵舎の案内をしてくれた。
本当に、本当にみんなが優しくしてくれた
「お食事にしますか」
「あぁ。頼む」
ハルカも思い出していたのだろう。
寂しそうにしていたが笑顔で俺にそう言い、食事を作るためキッチンに向かった。
ハルカもエルフの国で友を得た。ミカイル、ファッセ、クルシュ、バルギークなどもそうだ。
温かい友に、温かい国。正直ここは、居心地がいい。
(来れて、よかった)
だが、俺はここに留まらない。まだ見ぬものが多いからだ。この国にはこの国の良いところがある。だが、俺はさらに多くを見聞きしたいのだ。
(だがハルカはどうだ。もしかするとこの国に……)
俺が考え事をしていると、ハルカはすぐに食事を作り、俺たちはそれを平らげた。
この国で最後になるかもしれない食事、ハルカも、俺のようなことを考えているのだろうか、いつも談笑しながらとっていた食事だが、今日は静かだった。
そんな中、ポツリとハルカが言った
「みなさん、優しかったですね」
「あぁ」
「すごく、良い国です」
「あぁ」
「ずっと居ても、みなさん優しくしてくれると思います」
「……ハルカが良ければ、ハルカだけで」
「でも私は」
俺の言葉を遮り、ハルカが手を止め言葉を続けた
「私はムルト様との旅が好きなんです。色んな国を、景色を、人を、ムルト様と一緒に見たいんです」
「……」
「前にも言いましたが、私はムルト様とずっと一緒です」
「……あぁ」
それは、本心からの言葉、本心からの笑顔だろう。思わず、笑みが溢れてしまう。溢れたな違いない。
(……俺は微笑んでいれてるだろうか)
俺は、皮膚のない顔をさする。
俺もハルカと同じく、そう思っている。
お前と共に歩んで見ているこの世界は、この旅は、本当に楽しく、良いものだ。
だが、俺はそれを言葉にすることができず、表情に出すこともできない。
その時、家のドアをノックする音が聞こえた。
「私出ますね」
ハルカがドアを開けに行き、俺はローブと仮面を被る。すると、すぐに俺の名が呼ばれる
「ムルト様、ジル様です」
「む?」
「よっ、ムルトくん、ちょいとよいかの?」
この国の王が、とぼけた顔で立っていた
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