骸骨は会食する

俺たちは食事の並ぶテーブルにつく。


「この度は屋敷に招待していただき、感謝する」


「驚いた。そんな丁寧な言葉も使えるのね」


「知識だけはあるのでな」


「知識ね。その知識があなたの強さに繋がるかもしれないのね」


レヴィアは並べなれた食事を自分の皿へとよそいはじめる。


「さぁ、あなた達も食べて。まぁ、そこのムルトはたべれないとして、あなたは食べられるわよね?ところで、名前は?」


「……ハルカ。といいます」


「そう。ハルカね。さぁ食べてちょうだい。毒は入ってないから安心しなさい。なんなら、私が全て一口食べてもいいわよ」


「だ、大丈夫です。いただきます」


ハルカも同じように皿へと料理を盛る。

俺は今後、人間と会食する時に同じ動きができるように二人の姿を眺める。


「ムルト、観察は趣味なのかしら?」


「趣味、というわけではないが、今後に役立つと思ってな」


「そう。勉強するのはけっこうだけれど、人の食事をジーッと見るのはマナー違反よ。料理をよそう練習でもしたら?」


「だが、私は食べるわけでもないからな。食材に申し訳ない」


「そんなのハルカに食べさせればいいじゃない。なんならクロムに食べさせてもいいわよ。クロム、席を」


「はっ」


クロムはどこからかイスを引っ張り出してきて、俺とレヴィアのちょうど真ん中らへんに座った。俺はレヴィアに言われた通り、料理を皿に盛る。別に何を考えることもなくよそうだけなので、苦労はしなかった。


「クロム殿、すまないが食べてくれ」


「かしこまりました」


「あっはっは!ムルト!あんた、盛りすぎよ!」


クロムの手に持っている料理は、溢れることはないが、山のように高く料理が積まれている。これだけの料理を無駄にしてはいけないと思い、なみなみと盛ってしまった


「だがレヴィアもこれくらい盛っているではないか」


「私はこの会食の主だし、龍人族だからよ。ハルカぐらいの量が人間や魔族の適量よ」


俺は少し恥ずかしくなったが、その照れをなくすかのように話を切り出した。


「ふん。とりあえずだ、なぜ俺たちをここへ招待した?食事だけが目的ではないだろう?」


「ふふ、いきなりそんな喧嘩腰になっちゃって。別に。話をしたいだけよ」


「話、とは?」


「あなた、漆黒の悪夢って知ってる?」


「国を消したというスケルトンか」


「消した。というよりは壊滅させた。だけどね。そのスケルトンは、あなたと同じ、異色のスケルトンなの」


「俺はそいつと違って破壊願望もなければ、人族を別に恨み……もしていない」


「そう。でもね。異色のスケルトンは別にあなたと漆黒の悪夢だけじゃないわよ。ただ、あなたと漆黒の悪夢には共通点があるの」


「共通点?」


「そう。あなたと漆黒の悪夢は……大罪というスキルを持っているわ。あなたのあの赤いオーラ、そのスキルのせいでしょう?」


俺は思い出す。レヴィアと戦った時のことを。体から赤いオーラが溢れ、体、剣が紫色に変色をしていた。あの時の力は怒り……憤怒の罪というスキルのせいだったのだろう。


「あぁ。恐らくな」


「あなたがなんの罪を持っているか知らないけれど、漆黒の悪夢はね、強欲の罪、というスキルを持っていたわ」


「……俺は、憤怒の罪だ」


「あら、教えてくれるのね。なら、あと4人ね。」


「4人?」


「あなたも知っているでしょう?七つの大罪。傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲。生物の罪、と言っても過言ではないでしょうね。あなたは憤怒、漆黒の悪夢は強欲。そして、私が。嫉妬よ」


レヴィアはそう言って自分のスキルを俺へ教える。あの時の戦いでは嫉妬の罪のスキルを使わなかったが、あれよりさらに強いということだ。


「いい。ムルト、このスキルはとても強力だけれど、それだけリスクも高いわ。諸刃の剣なの。恐らくあなたのスキルは大罪になっているはずよ。力に飲み込まれれば、それは亀裂を生み、いつしか全てを破壊するわ」


「レヴィア、お前も大罪に?」


「ええ。私も嫉妬の大罪よ。」


「そう。か」


「とても危険な力なの、これからも平和に生きていこうと思うなら、あまり使わないことをオススメするわ」


「あぁ。感謝する」


「話を戻すわね。大罪が暴走した結果、国を壊滅させたのが漆黒の悪夢なの。でもね、大罪のスキルを持っている者はあと4人出現するはずよ。巻き込まれないように気をつけなさい」


「あぁ」


レヴィアはそう言い話を終わらせた。

まだ話していないことがあるかもしれないが、レヴィアがそれを話したくないのであれば、無理矢理聞く必要もないと思った。


俺の旅とはきっと無縁だろう。

レヴィアは俺がモンスターということはとっくに見抜いており、なぜ俺がここまでの知恵を持っているかを聞いてきた。

俺はここへ来るまでの旅の話をした。アルテミス様に会ったことは言わなかったが、月をずっと見ていたら、自我を持つようになったことを話した。


「また嫌な話になっちゃうけど、漆黒の悪夢もモンスターだったのよね。でも、私はモンスターじゃないし、大罪の発動条件はわからないのよね。でも、大罪を背負いし者は世界を破滅へ導くと言われているの」


「私は、ムルト様が世界を破滅させるのであれば、止めはしません!」


「いや、そこは止めなさいよ」


「私は破滅させる気はないがな」


その後も会食は続いた。最初の出会いは最悪ではあったが、今回の会食ではよい情報交換ができたと思う。

ハルカの恐怖心も少しは緩和し、レヴィアもあの時のことを謝った。


「私は……構いません。それのおかげでムルト様と出会うことができました。」


「ムルトは?」


「許す許さないの話ならば、私は決して許さない。が、ハルカが良いというのであればこれ以上恨むこともない」


「……そう」


俺たちはレヴィアに門まで見送ってもらい。会食に来たお礼にと大金貨を一枚もらってしまった。


「ハルカ、本当にごめんなさいね」


レヴィアは反省しているようで、ハルカにまた謝っていた。

宿へはクロムがまた送ってくれるそうだ。


俺とハルカは馬車の中で楽しく話し、今後どこに向かうかを話し合っていた。

そして目標が決まる。

次の目標は、天の川を見ることだ

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