骸骨は歓迎される
言われるがままに、俺はエルフの女についていく。
どうやら、彼女達は人間とは違った種族らしい。亜人というものに分類されると言っていた
「先ほどは、すまなかったな」
俺は、横を歩く先ほど矢に射られた男に声をかける
「あぁ。こちらこそ。すまない」
「気にしてはいない」
淡々と歩いていると、程なくして目の前に大きな丸太でできた門を見つける
「モンタナ!戻ったか!……そのフードの男は、誰だ?」
門の上に立つエルフの男が、エルフの女に向かって声をかける。
(この女はモンタナというのか……)
「ハナを助けてくれた恩人だ!長老へ御目通り願いたい!」
「わかった!待て!今、門を開ける!」
大きな丸太で作られた門が、大きな音を立てながら開いていく。
「モンタナ、長老というのは?」
「長老というのは……一番偉い人のことだ」
一番偉い人を長老と呼ぶのか。覚えておこう
門の中に入ると、数人のエルフが出てきた。
「モンタナ、その男は何者だ?」
「あぁハンク、この男は、恩人であり客人だ」
「ふむ。フードをとってもらおうか」
「私が、人間をこの村にいれるとでも?」
「お前がそんなことするとは到底思えない。が、だったらこいつは何者だ?得体の知れない者をこの村へいれることはできない」
どうやら口論になってしまっているようだ。
どちらも譲らない。
「あの、ハンクさんって人はね、集落を守ってくれる人の偉い人でね、頑固な人なの。でも多分骸骨さんの顔を見ちゃったら村に入れてもらえなくなるかもしれないから……」
少女が俺にわかりやすいように説明をしてくれた。
集落を守る人たちの長老ということだ。ならば心配になる気持ちもわかるというものだ。
「モンタナ、俺の顔を見せよう」
このままでは話が終わらないと思い、俺は顔を見せに前に出ようとした。丁度そこに、壮年の男エルフが走ってくる。
「ハナ!!」
「お爺ちゃん!!」
少女も走り出し、お爺ちゃんと呼ばれたものと抱き合う。
「長老!」
(あの人も長老なのか。一体何の長老なのだろうか)
「ハンク、モンタナ、で、恩人というのは?」
「はい。あのフードを被った男が、ハナ様を狼から助けてくれた恩人でございます」
モンタナが、俺を指差して言う。
男エルフは俺に近づき、右手を差し出してくる。
「軽くだが、話は聞いたよ。うちの孫を助けてくれたこと、本当に感謝する」
俺は少し悩んだ。なぜならば、手が骨なのだから。これは握手というものなのだろう。すぐに返したほうがよいのだろうが、手を差し出せば、すぐに俺が人間じゃないことがバレてしまう。
悩んでいる間にも、男は微笑みながら手を差し出している。
「礼には、及ばない」
悩んだが、俺は骨の手を出し、握手をした。
長老と呼ばれた男は、俺の手を見て固まったが、手をしっかりと握った後離し、ハンク達に振り返り、言った。
「この恩人を私の家へ案内してくれ、そして食事の用意を。話は私の家で聞こう」
「ですが!得体の知れない者を!」
「ハンク、責任は私が待とう。この男は私の客人だ」
★
「初めまして、この集落で長老をやっているハルナという。改めて、孫を助けてくれたこと、お礼を言わせていただくよ。」
「礼には及ばない。俺は……」
「深くは聞かないよ。君のその姿も、生い立ちも」
長老、ハルナの家へ通され、俺はフードを外している。この青い頭蓋骨を晒しているのだ。
「とりあえず、モンタナが君をここへ連れてきた理由は聞かせてもらったよ」
「美しいものが見たいのだ」
「そう聞いたよ。モンタナが見せたいのは、この村にある木のことを言っているのだろう」
「木、か」
「そこらへんに生えているようなものではないよ?もの凄く大きい」
「大きい」
「あぁ。それは後で見にいくとして、孫のハナを助けてくれたお礼を是非ともしたい。何か欲しいものはあるかい?」
「礼には及ばないと先ほどから言っているだろう?欲しいものも特にはない」
「そうは言ってもなぁ。恩人に礼もせず、このまま帰すというのは……」
ハルナは腕を組み、唸った。
だが、欲しいものなど本当にない。
「美しいものを見れるならば、それで十分だ」
「ふむ……それでは、勝手ながらこちらで用意させてもらおう。よし!じゃあ、ご飯を食べようではないか!運んできてくれ!」
ハルナが手を叩くと、部屋の扉があき、エルフが色々な食事を運び込んでくる。青い骨のスケルトンを客人として迎え入れた。という話を集落中にしたようで、少し動揺はしていたが、身構える者はいなくなった。
「この村で育てた野菜と、森で狩ってきた獲物の料理だ。豪勢にさせてもらったよ。是非、食べてくれ」
「実にありがたいのだが……私は食事を不要とする身でな……」
「味もわからないのか?」
「食べようとしたこともないものでな……」
「まぁまぁ、ひとつ食べてみてはいかがか?」
「ふむ……それもそうか。それでは、失礼して」
俺自身、腹が空くことも、喉が渇くこともなかったのだ。それ故、食事もとろうと思ったことがなかった。
ダンやシシリーを見ていて、食事自体には興味があった。
(初めての食事だ……)
俺は、微かな期待を抱き、差し出された料理をゆっくり口へ運ぶ。
「はむっ……」
肉を口へ運び、咀嚼する。味はしない。
飲み込む。というよりは、滑り落ちる。
「……すまない」
「こちらこそ……」
喉を滑り落ちた料理は、そのまま足元に落ち、床を汚してしまったのだ。
ハルナは、すぐに拭くものを用意してくれ、それを受け取り体を拭く。
食事はハルナ、そして同席しているモンタナとハナが食べている。
「食事が終わったらお風呂にしましょうか」
「お風呂……?」
初めて聞く単語に、またもや期待をしてしまう
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