骸骨と煌めきの森
「日蝕、綺麗ですね」
ハルカが、横にいる俺に向かってそう言った。
「日本にもあったのか?」
「はい。ありましたけど、何十年に一度、何百年に一度とか、あと、月蝕っていうのもありましたよ」
「ほう。月か」
「月、ですけど、月ではないらしいんですよ」
「ぬ?それはまたおかしな話だ」
「はい。おかしいんです」
屈託のない笑みをこぼしながら、ハルカが言った。
俺とハルカはクリスマスパーティを終え、宿へと戻ってきている。
時間はまだ深夜1時ほどだ。2人でベッドに入り、窓の外の月を眺めている。
「ムルト様の体は、冷たいですね」
「そうらしい。ハルカは、あたたかい」
俺は布の一枚も羽織っていないハルカの肩を触り、抱き寄せる。
「これが、人か」
ハルカの柔らかい体を感じ、温かさを感じ、人を感じる。
「はい……ずっと、こうしていたいです」
ハルカは嫌がることなく、俺の胸の中でそう呟いた。段々と、ハルカの顔が俺の体の中へと埋もれていく。
「終わり、か」
よくよく見れば、ハルカは俺の肋骨の中に入っている。肩を抱いている腕は、白く細い骨に変わり、頰のあった場所には穴が空いていた。
夢のひと時は、終わってしまった。
「私は、どんなムルト様でも好きですよ」
「俺も、ハルカが好きだ」
「えへへ、ありがとうございます」
俺とハルカは1つのベッドで、肌と骨を重ね、眠りについた。
★
いつものように、小鳥の声と、優しい朝日が部屋の中に入ってくる。俺は窓辺の椅子に座り、静かにハルカが起きるのを待っている。
ハルカは静かに目を覚まし、こう言った。
「何も……なかった」
「おはようハルカ、どうかしたか?」
「おはようございますムルト様。どうかしたかっといいますか、どうもしなかったといいますか……」
「む?おかしな話だな」
「はい……おかしな話です」
ハルカはゆっくりとベッドから起き出し、下着や衣服を身に纏い始める。
「ムルト様、何もしてませんよね?」
「む?何もしてないぞ」
「ですよねぇ〜……」
ハルカが何を求めているのかわからない。
そういえば昨日からおかしかった。
「同じベッドで寝ましょう」「裸で」
「抱き合いましょう」
と、いろいろなことを言っていたが、なんだったのだろうか。
今はすでに骨の姿に戻っている。
屋敷から去る時に見たリーナの姿を思い出してしまう。
なんと悲しそうな目だっただろうか。それでも俺は、ハルカを選んだ。
「さて、今日はどうするか」
「そうですねぇ。この街は特に見るものもないんですよね?」
「あぁ。だからもう出て行ってもいいと思ってな」
「それは私もそう思いますが、それでしたら次はどこへ行きましょうか?」
「ふむ。そこも合わせて、聞き込みと行こうではないか」
「そうですね」
時間もなかなかよく、聞き込みを行うには良い時間帯だ。早速着替え、仮面を装着し、外へと出る。
食料などを買い込みながら、話を聞いて回る。
近くに観光名所となっているところはないか、美しい景色が見えるところはどこか、といろんな人物に聞いていった。
「みなさん、同じことを言いますね」
「あぁ。だが、きっとそこが有名なのだろう。俺も行きたいと思っていたしな」
「でも、見れる人は全然いないって言ってましたね」
「幻惑魔法というものは初めて聞いた」
「きっと闇と光の複合魔法だと思います」
「そんなことができるものなのか?」
「
「モンタナもそんなことを言っていた気がする」
「それでは、決まりですね!」
「あぁ。次に向かうのは、エルフの森だ」
遠くの空を見ながら、かつて立ち寄ったエルフの集落でもらった木札を固く握り締めた。
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