嫉龍王等と堅龍王3/3
「こんの……小娘共がぁぁぁぁ!」
セバスが激昂し雄叫びをあげると、身体がさらに膨張していく。拳は家一軒ほど、背丈は城の半分。その巨躯は月明りを遮り、辺りに影を落とすほどで、見上げるだけで首が痛くなるだろう。
「的が大きくて助かるわね」
眼にも止まらぬ速さで、そんなセバスの周りを飛び続けるレヴィア。それを掴もうと、セバスも腕を振り回しているが、捕まえることはできていない。
(なぜだ……!)
レヴィアの動きは、完全に眼で追えている。攻撃をした瞬間もわかる。
ならば、その箇所で仕掛けてくるのを待ち伏せ、捕まえれば済むのだが、それすらもできない。
セバスは、身体をさらに巨大化したことにより、破壊力も防御力も上がっていることを体感している。機動力も、この巨体からは想像できないほどに素早いはずなのだが、それを活かしきれていない。
「あんたは強いわ」
目の前に現れたレヴィアが、そう言いながら拳をセバスへ叩き込む。
(まただ……)
セバスは、頬に走る激痛を感じながらも手を伸ばすが、その手は獲物を捕まえられず、空を切る。
「
レヴィアは巨大な翼を広げ、全身をその中に包むと、翼が開かないようその上から尻尾を巻き付け、高速回転を始めた。
風が吹き荒れ、それがレヴィアと一体になった瞬間、セバスの胸へ着弾していた。
「あら、街に倒れられても困るか、らっ!」
あまりの激痛で仰け反ってしまったセバスを、背中に回り込んで蹴り上げるレヴィア。セバスは激痛に耐えながら、なんとか両足で踏ん張っている。
(動きは見えた。見えている。なのに……!)
身体が追いつかない。
セバスは、自分の身に起きていることを、いつまで経っても理解できずにいた。
「これだけの攻撃でも、傷一つつかないのは、大したもんよ。正直悔しい」
レヴィアの言う通り、セバスの身体には今までの攻撃だけでなく、必殺技ですら鱗に傷をつけることができていない。
「でも、あんたを倒すのが私達の目的じゃない」
(攻撃がくる……!)
レヴィアはゆっくり羽ばたき、のんびりとした動きでキアラの側へ降り立つ。
「私たちが相手じゃなけりゃ、いや。キアラが相手じゃなけりゃ、あんた、無敵だったわね」
身体の文様を怪しく光らせるキアラが、微笑んだ。
「私の能力は先ほど言いましたように、強化。それは敵味方じゃなく、私が好意を持っているかどうか。これも先ほど言いましたが、私、とってもエッチなので、どんな人でもお相手シたいと思ってるんですよ?」
「キアラが私にした強化バフは、機動力と攻撃力と防御力。でも、その全てを素のあんたが上回っていた」
「次に強化させていただいたのは、セバスさん、あなたです」
(周りの風を巻き込み、鋭さを増し、捨て身で突っ込んでくるというわけか)
「私ができるのは弱体ではなく、強化ですから。堅さはそのままになってしまいますが、その代わり痛覚と知覚を強化させていただいてました」
(だが、私の最堅を誇る鱗を貫くことなど不可能)
「性物、いえ生物ですから。必ず痛覚はあるはずでしたが……まさか、それを何億倍にもしなければならないなんて……」
セバスは、両手をクロスさせ、防御の姿勢をとろうとしている。が、その動きはあまりにも遅い。
「おかげで、貧相な身体になってしまいましたが」
「これ、聞こえてるの?」
「はい?聞こえていますよ。ですが」
(全ての動きが見える……!レヴィルの突進に合わせ、両腕で身体を包めば……)
「それを、いつ理解できることやら、ですね」
キアラの色欲の大罪にも、いくつか欠点がある。
強化を行うための活力を、周り又は自分で補完しなければならない。その活力は、彼女に対して欲情をしている者からしか集めることは出来ない。
そして、強化は何人にも、何重にもかけられるが、1人に対してかける比率は、同率でなければならない。攻撃力と防御力を強化するのならば、共に倍か3倍。3:7のように細かく調整はできない。
つまり、今のセバスは痛覚と知覚が数億倍になっているということだ。どんな攻撃も通さない鎧の下には、どんなものにも過敏に反応する皮膚がある。
「大技じゃなくて、私の基本能力なんですけどね」
セバスは、両腕を胸の前で交差させると、沈黙した。
キアラは知覚を強化し続けなければいけないため、裸のままセバスの側に残り、レヴィアはムルト達の援護をするため、城に向かおうとしたが、瞬間。
城が爆ぜ、巨大な化け物が姿を現した。
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