秘密の花園


「二人で銀貨8枚よ。毎度あり〜」


受付で会計を済ませ、鍵を受け取り中へと進む。鍵に書かれた番号と同じ箱を開け、その中に靴をしまう

食事処や休憩所には寄らず、女性二人はすぐさま目的の場所へと向かったのだ。


「ふぅ〜。湯浴みなんて国を出て以来ね」


「ご自宅にはお風呂があったんですか?」


「当たり前でしょ。これでも王様なのよ」


その二人の女性は、ここまで共に旅をしてきた二人だ。もう一人仲間がいるのだが、彼はここへは来ていない。来れたとしても、風呂に入ることはできない。


レヴィアとハルカ、二人は昼間、この街を案内してくれた男に勧められた通り、浴場へときていた。


「レヴィア様はすごい下着つけてますね……」


「敬語はやめてっていってるでしょ」


「でもなんか、慣れちゃって。えへへ」


「まぁ崩したくらいがちょうどいいかもね。

ハルカもかわいいの履いてるじゃない」


レヴィアの下着は黒のレースでできている下着だった。スケスケの下着は見せてはいけないところまでうっすらと見せている。


「でもレヴィア様のは、その、見えてませんか?」


「まぁ、見えてるか見えてないかで言うと見えてるけど、私の下着を見る男なんて、たかが知れてるわ」


「男の方に見られたことは?」


「クロムは私の入浴の準備だったり、一緒に入ることもあったわよ。それ以外は……生きていないわ」


「……」


レヴィアはそれ以上語らなかったが、ハルカも大体は予想はできていた。ちなみにハルカの下着はピンク色の質素なものだ。フロントについている小さなリボンが少し幼く見えるかもしれない。


「ここは大衆浴場ですが……いいんですか?」


「別にいいわよ。裸を見られても何も思わないし。男が覗いてても気にしないもの」


レヴィアは見た目に反して中々に肝が座っているようだ。


「それに、私だって最初から王様だったわけじゃないのよ。世間一般のマナーもあれば、弁えてるのよ。ここはお店だし、その点は大丈夫」


レヴィアは一糸まとわぬ姿をしていた。

褐色の肌の所々に、鱗のようなものが見えるが、それも風呂の中では目を凝らさなければ見えないだろう。レヴィアはタオルを肩にかけ、ハルカは体に巻き、風呂場への扉を開けた。


体を洗うスペースが手前に三列並び、奥には大きな浴場が二つ、外には露天風呂があるらしい。客は時間が時間なのか、ちらほらとしかいない。ほとんどが体を鍛え、健康な小麦色に肌を染め、傷が少しある女性が多かった。一日の仕事を終えた海の女や冒険者だろう。そのほとんどが風呂に浸かり、疲れをとっていた。


「……これって、どう使うの?」


レヴィアがシャワーの前に座り、そうハルカに問う。

ハルカもパッと見、使用方法はわからなかったが、あまりにも自分が元いた世界と同じ、銭湯のような形をしていたので、使用方法は自然とわかった。……実は脱衣所の壁に使用方法がデカデカと貼り出されていたのだが、二人はそれに気づいていなかった。


「多分、ここを……こうするんですかね」


ハルカは自分のつまみを捻る。すると、蛇口から温かい水がドバドバと出てくる。


「あっ、逆です」


逆に捻ると、頭上のシャワーから放射線状に水が出てくる。


「ふーん。きゃっ、冷たいっ」


レヴィアも同じようにつまみを捻り、水を出す。が、レヴィアの水はどうやら冷水になっていたようだ


「そこの青と赤のやつを赤にするんです!」


「これねっ!あっつい!!」


レヴィアは思い切り温度調整のつまみを赤の方へ捻ってしまい、熱湯がでる。


「あー!レヴィアさーん!」


ハルカは慌てて自分の水を冷水にし、レヴィアにかける。相殺しようとしたのだが、それは叶わなかった。


一悶着あったが、さすがというべきか、すぐに使い方をマスターしたレヴィアであった。


シャカシャカ


「お風呂があるっていっても、こういうところは初めてなんだから、わからないわよっ……」


シャカシャカ


「あはは。レヴィア様でもびっくりすることあるんですね」


シャカシャカ


「私も生きてるからねっ。びっくりすることもあるわよ」


シャカシャカ


「レヴィア様は怖いものとかあるんですか?」


シャー


「もちろんあるわよ。幽霊とかレイスね」


シャー


「えぇ!無敵だと思ってたレヴィア様にまさかの弱点っ」


シュワシュワ


「あいつらって物理攻撃が効かないのよ。光魔法か、属性特化の武器がないと倒せないの。私はどちらも持ってないから対処ができないのよね」


「つまり、物理が当たれば怖くないと」


「そういうこと。ハルカ、背中洗ってもらってもいい?」


「はい!もちろん!」


「それじゃあお願いね……あなた、ムルトのこと、好き?」


シャカシャカ


「好きですよ」


「……そう。私も、好き」


「一緒ですね」


「そうね。今度は私が洗ってあげるわよ」


「そんな、申し訳ないです」


「いいからいいから、私がやりたいだけだし」


二人は交代し、互いの体を洗い合う。

不意にレヴィアがハルカの胸を鷲掴みにした


「きゃっ」


「ハルカ!あんた私より大きいわね〜!」


胸を揉みしだかれるハルカ、14歳のハルカは、年に似合わず、まぁまぁの胸をしていた。Cといったところだろうか、対するレヴィアはAAだ。壁だ


「んっ!今嫌な感じした!」


「私は考えてないですよ!」


「くぅ〜悔しー!」


胸を揉みしだくのはもう少し続いたが、二人は平静を取り戻し、仲良く風呂に浸かった。

ただの風呂は二人とも経験があるので、迷わず露天風呂に向かったのだが、時間はまだ夕方ほどだ。夕焼けの空の赤みは見えるが、特にこれといって絶景はなかった。


「夜になったら、月が見えるのでしょうか」


「見えるかもね。赤いだけの空よりかは良さそ」


「ムルト様が見たら喜ぶでしょうか」


「こんな空でもあいつは喜ぶかもね。月ならもっと」


「ムルト様もこれたらよかったのですが……」


「私たちはもちろんだけど。周りは気にするかもね。でも、一番気にするのはあいつ自身よ」


「ムルト様と一緒に風呂に浸かりながら、月が見たいです」


「なにー?私とは嫌だってのー?」


「ち、違いますよー!でも、3人で見れたら、本当にいいですね」


「……そうね」


二人はもうしばらく風呂に浸かり、時間が経つのを待っていた。

そろそろ約束の時間かとレヴィアが言うと、そろそろ出ましょうか。とハルカも同意する。


「あっつ!!」


レヴィアは入った時と同じことをしていた。

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