予選Bブロック1/5

時を同じくして、予選Bブロック


「やれやれ、他のブロックは恐ろしい奴がいたものだ」


Bブロックでは極大魔法を使うものはいなかった。だがその代わり人数は多く、右を見ても左を見ても敵、激戦区になっている。


「この中でも、あいつは恐ろしいな」


そう語る男が見つめる先には、真紅の鎧に真紅の大剣、顔の中央に一文字の傷がある大男が大剣を振り回し暴れている。

その大剣に触れた参加者たちの体は上下に斬り裂かれ、剣の腹で叩きつけられた者は体を平らにし、血を撒き散らしている。


その血は真紅の鎧をさらに赤く、そしてその鎧は魔法を弾くのか、様々な魔法使いが様々な魔法を使い、その大男を攻撃しているが、まるで効いていない。それどころか自分の位置を知らせ、真っ先に殺されている。


そしてそんな大男の大剣の腹を手の平で受け止める猛者が現れる。

その2人の周りには他とは違う壁のようなものができているようで、誰も近づけそうにないようだ。いや、近づいたら殺されてしまう。


それを見ているこの男も思っている。


「あちらの方にはしばらく近づかないほうがいいな」


冷静にBブロックを見渡しているこの男だが、この男も当然戦っている。辺りを見回しながらも、近くにいる者を、攻撃を仕掛けてくる者を的確に狙い、殺していく。


「これは……殺しではないよな……」


他の参加者を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していると、その男を背後から襲うものが現れる。初めてのことではなかったが、男はそれを受け止め振り返る。

すぐには殺さなかった。男は懐かしいものを感じたからだ。


「くそっ!気付かれたか!」


背後から攻撃を繰り出した男がそう声を上げる。手には骨、その骨でこの男を殴ったようだ。


「その骨、どこで手に入れた?」


「は?そんなことっ!お前にっ!関係っ!ねぇ!」


男は骨を振り回す。容易に避けられるほどの太刀筋である。


「我が名はティング、あなたの名は?」


「関係ねぇっ!と言いたいとこだが……俺の名はダン、いざ、尋常に勝負!」


ダンは、体をすっぽりと覆うほどのローブを着て、顔には太陽が描かれた仮面の大男、ティングと名乗った男と戦うこととなった。




「お主、名は?」


「コルキン、拳者コルキンだ」


「ほう。私はジュウベエ。紅鬼ジュウベエだ」


「いざ……」「尋常に……」


「「勝負!!!」」


ジュウベエの大剣を手の平のみで受け止めたコルキンという男、ジュウベエの剣を止める者はいないわけではない。だがそれは剣や魔法を使ってのことだ。素手で攻撃を塞がれたことなどジュウベエの人生の中で初めてのことだった。


「相手にとって不足なし!!」


ジュウベエは大剣を振り回す。刃で、腹で攻撃を仕掛けるが、コルキンはそれの全てを打ち返す。

達人と達人、その間合いは保たれている。


「な、なに突っ立ってるんだ!両方倒せるチャンスだ!!」


誰かが言った。2人の圧倒的なまでの空気に飲まれていた周りの参加者だったが、その掛け声とともに皆が戦意を取り戻す。魔法の使えるものは魔力を練りより強い魔法を、武器を使う者たちは戦う2人を囲み、逃げ道をなくす。


そんなもの気にもならないかのように、ジュウベエとコルキンは互いの命を奪い合う。


そこへたくさんの魔法が放たれる。

様々な音が、衝撃が、色が、匂いが溢れる。

フィールドが割れ、破片が飛び散り、土煙が舞う。ジュウベエとコルキンが出していた争いの音は止んでいた。


「やったか……?」


周りの参加者は口々にそう言っていたが、誰も油断はしていない。武器を持っている者たちはそれを構え、次に備える。

土煙が晴れると、そこにはジュウベエとコルキンが立っている。

確実にダメージは入っているようだが、その威圧感は消えていない。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


2人の猛者は雄叫びをあげながら、互いに飛び込んでいく。2人が交差し、また周りを無視しながら死闘を繰り広げるかに思えた。


「死合の」


「邪魔を」


「「するなああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」


2人はそのまま互いにすれ違いながら、後方へと飛んでいく、ジュウベエの飛び込んだ側にいた参加者は肉片を撒き散らし、コルキンの飛び込んだ側の者たちは皆、首が明後日の方向を向かされている。


「死合は一旦お預けだな」


「まずは邪魔者を掃除しよう」


ジュウベエとコルキンは視線を合わせ、まずは自分たち以外のBブロック参加者を脱落させることに決めた。


ジュウベエが大剣を振り回せば血肉が飛び散り、コルキンが拳を突き出せば、体に穴が空く。

Bブロックの参加者たちはパニック状態だった。皆が敵のこの予選に、確かに2つの巨大な敵ができ、皆は団結し、この2人を倒そうとするのだが、太刀打ちできるものはあまりいなかった。

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