骸骨は拾う

俺の種族はスケルトン。武器はまだない


俺の住んでいるこの洞窟。

ごくごく稀に人間が来る。

見たことのある人間が、定期的に来ては仲間やゴブリンたちを倒し、初めて見る人間は、適当に仲間やゴブリンたちを倒している。

今日も、定期的に来る人間が来ていた

仲間たちは、わらわらとその人間を襲っていたが、俺は、その人間を遠くから観察してみることにした



「それにしても先輩、この間はすごかったですね〜」


「この間?あぁ、勇者様のことか」


「こんな辺境の、バルバルの街に来るなんてびっくりしちゃいましたよ!」


「最近召喚されたばかりと聞いたからな。ここらへんは低ランクモンスターが多いからレベル上げをしやすいんだろう」


「あぁ〜バルバル洞窟じゃなくてバルバル鍾乳洞だったら、勇者様とご一緒できたかもしれないのにな〜」


「俺たちの担当はここだろ?別に命の危険がないだけいいだろう。さっさと上位モンスターがポップしてないか見て、適当に間引きして帰ろう」


「それにしても勇者様は美しかったなぁ〜見目麗しい〜」


「…たく」


何者かの話をしながら洞窟の奥へと進んでいく


(美しい、勇者……か、月よりも美しいのだろうか)


それにしても、あの人間が言っていた上位モンスターとは、時々見る剣や杖をもったスケルトンのことだろうか。俺たちよりも強いスケルトンを倒しているということだろう


あの後も俺は人間たちの後をつけ、ゴブリンやスケルトンを軽くあしらうのを見ながら、最下層の5階へ到着していた


「お、ポップしているな。スケルトンメイジとスケルトンウォーリアか」


「FとEランクですね。ウォーリアがポップするのは珍しいですね」


「さっさと倒して、帰ろう」


杖を持ったスケルトンメイジ

剣と盾を持ったスケルトンウォーリア

どちらも時々見かける。上位モンスターというものらしい。

そんな上位スケルトンも、為す術もなく、人間にやられてしまった。

不思議と、怒りや怨みなどは一切感じなかった。ただただモンスターがやられていく。そんなものだろう


スケルトンの頭蓋骨を砕くと、人間たちは来た道を引き返していく。

俺は物陰に隠れ自分の頭蓋骨を外し近くへ隠し死んだスケルトンのフリをし、やり過ごす。


「今日も終わりましたね」


「よし。また一ヶ月後だ。何があるかわからない。気は抜くなよ」


「はいは〜い」


「まったく…」


俺は、その人間を見送り、先ほど倒された上位スケルトンの下へ向かう。


「剣と木の盾か」


ボロボロのローブと杖をもったスケルトン

ボロボロの鉄の剣とボロボロの盾を持ったスケルトン

直感的に、俺は剣の方が扱いやすいと思い剣を取る


「木の盾でも、ないよりはマシか」


盾も一緒にもらい、また上層へと戻る。

手短なラットを、剣で殺してみる

スケルトンが襲ってくると思っていなかったラットは、逃げることもせず、ただ俺の剣に貫かれた。 赤黒い血が剣につき、ぬめりと光る


「レベル上げがどうとか言っていたな……殺せば良いのだろうか」


俺は、黙々とラットを殺していく

スケルトンには仲間意識があり、殺すのには抵抗があった。ゴブリン達は集団で行動しているため、危害を加えれば、返り討ちになってしまいそうだと思ったからだ。ゴブリン達はこちらから手を出さない限り、こちらにも手を出さない。はずだ。

俺はラットと昆虫型モンスターのブラックローチを倒していく


気づけば、あたりは真っ暗になっていた。


「もう太陽が落ちたのか。月を見に行かねば」


俺は、いつもの穴から空を見上げる。いつも見ている月は、より一層美しく見えた


「勇者というのは、この月よりも美しいのだろうか」


昼間に来た人間の話を思い出し、俺は密かに願った


「一眼、見てみたいものだ」




★★★

ステータス

名前:

種族:スケルトン

ランク:G

レベル:2/5

HP5/5

MP1/1


固有スキル

夜目


スキル


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛

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