骸骨の散歩

数日後。魔都レヴィアへ無事に辿り着いた。

道中どう猛なモンスターと出くわしたが、バレルが思いの外とても強く、2人で協力して楽に倒すことができた。


「いやぁ。楽に狩れました。これも街で売れるので荷台に乗せさせていただきますね」


道中に駄賃のようなものを稼ぎながら3日後。


「見えました。あれが魔都レヴィアですよ」


目の前にはなんとも立派な城が見えていた。恐らく王城のようなものなのだろうか


「あと半刻ほどで着きます」


「あぁ」


そしてそのまま半刻後、無事にレヴィアへつく。門で入市税を払い、中へと入っていく。

バレルは仕入れや卸があるとのことで、ここでお別れになった


「ここまでありがとう。これは礼だ」


俺は懐から金貨を一枚バレルに差し出すが、バレルは首を横に振りそれを断った


「もうチップはもらっていますよ」


バレルは懐から銀貨の入った袋を取り出し、見せる。人狼族からもらっていたらしい。そして紙切れを俺に渡した


「それでは。確かに渡しましたので」


バレルはそのまま行ってしまった。

俺は渡された紙切れを読み、ビット達を思い出す


「親愛なるムルトへ

この手紙を読んでいるということは無事にレヴィアへつけたことと思う。なぜ出発前に渡さなかったかというと、これを渡そうとしたら、私までレヴィアへ行きたくなってしまうからだ。とりあえず、レヴィアへ着いて、知っておくと良いものをここへ記す。また何かあればいつでも村に寄ってくれ。

永遠の友ビット」


手紙にはレヴィアの街の宿や道具屋、ギルドのある場所が書かれていた。


(魔族にもギルドがあるのか……)


俺は心からビット達に感謝をし、ギルドへ向かって歩き始める。





ギルドへと無事につくことができた。

この国には奴隷制度があるらしく、道行く先々で首輪を着けたもの達を見た。体に鱗のようなものが生えているものや、蛇頭の者、中には人間種もいるようだった。

働いているのは犯罪奴隷がほとんどのようであった。


「ふむ。悲しいものだな」


同じ生ける者を物という身分に落とし、こき使う。命ある者同士もっと手を取り合えないのだろうか。犯罪奴隷は仕方ないにしても、きっと中には人攫いに捕まり売り飛ばされている者もいるのだろう。人族も魔族も嫌なところが似ている。


俺は、気を取り直してギルドの中へと入る。

作りはボロガンの街と似た作りだ。まず外観も似ている。細かい違いはあるが、ほとんど一緒で、色や間取りが多少違う程度だった


「冒険者登録をしたいのだが」


俺は受付へ行き声をかける。受付嬢は犬の耳を生やした獣人族のようだった


「はい!新規登録ですか?それとも登録変更ですか?」


「?新規登録か?」


「?冒険者カードはお持ちではありませんか?」


俺が首をかしげると、受付嬢も首をかしげた。首をかしげる時、揺れる犬耳が愛おしかった。


「人間の街で作った冒険者カードがあるが……」


「それでは変更手続きですか?」


「変更?」


「はい!ご存知ないようでしたらご説明致しますが?」


「あぁ。頼む」


人間の街で作った冒険者カードに魔族としての情報が記されるらしい。龍人族や獣人族、というような。変更しなくてもそのまま使えるらしい。この情報は人間のギルドとも共有され、どちらかが犯罪を犯せばその情報から魔族か人族かを知ることができるらしい。

変更をしなくてもいいという説明を受けた


「魔族は人族と不可侵と聞いたが?」


「それは戦争などを起こさない。という話ですよ。このギルドには人族の職員もいますし、街にも人族の冒険者がいます。魔人攫いや暴動、犯罪を犯さなければ罰せられません。これは人族も魔族も一緒です」


「ふむ。ならばまた人間の街へ行くと思うので変更はなしにしておこう」


「かしこまりました!」


「手間をかけさせた。依頼を見てくる」


「はい!ごゆっくり!」


俺は受付を後にし、とりあえず休憩所の椅子へと深く腰掛ける


見渡せばそこにはあらゆる種族がいる。角も何もない人間もいる。

魔都というのは俺が思ったよりオープンな感じらしい。人も拒まず迎え入れ、奴隷もそれほど辛いという顔をしていなかった。まぁまぁな待遇を受けているのであろう。

金にも余裕がある俺は、とりあえずギルドを後にし、宿を取ることにした。


向かった場所は、【狼の尻尾】という宿

人狼族が経営しているらしく、ビット一押し、と手紙には書いてあった。

狼が口を開けている看板がかけてあり、ドアは狼の絵が書いてあり、尻尾がドアノブになっていた


「いらっしゃい」


受付のようなところには若い男が帳簿をつけながら座っていた。


「とりあえず一泊泊まりたいのだが」


「一泊、朝食夕食つき銀貨7枚、素泊まり銀貨1枚……てあんた。人狼族の何かを持っているな……?」


「む?」


その男はカウンターから身を乗り出し俺の胸ぐらを掴み、引き寄せた。


「あんたから人狼族の体の匂いがする!まさかあんた、人狼族を殺してはいないだろうな!!」


若い男はすぐさま手を離すと、引き出しの中から丸いものを取り出し、すぐさま人狼へと変わる


「仇を俺がうつ!」


「こら!シン!」


厨房から母親と思われる女性が出てきて、フライパンで思いっきりシンと呼ばれた男を殴る。


「昼間から何してるんだい!すいません。お客さん、この子、短気で、すぐ勘違いしたり食ってかかったりしちゃうんですよぉ……話は聞いていましたが、人狼族の何かをお持ちなのですか?」


「あ、あぁ。これを」


俺は懐から牙で作られたナイフを取り出し、女性に手渡した。女性は目を丸くしてそのナイフを受け取りマジマジと見ると、驚いた様子で謝ってくる。


「誠に申し訳ありません!なんて立派な牙なんでしょう。これは友好の証ですよね。こんなもの持ってる方からお代はいただけません!どうぞ自由に泊まっていてください!」


思わぬ提案にびっくりしてしまう


「いや、そういうわけにはいかない。泊まらせていただくのだ。金は支払う」


「そ、それでは、このバカ息子の粗相と合わせて1週間タダにさせていただきます!」


1週間タダというのも大いにおかしいのだが、これ以上は一歩も引かぬよう、ここで俺が突っ張れば永遠にここで泊まることができるのではないか、というほどだ。


「うぅむ。それではそうしてもらおう。すまん。世話になる」


「たっく、最初からそう言えってんだよ」


「シン!」


また頭を殴られるシン。相当痛そうだ。

その後帳簿に記入をし、部屋を確認。少しボーッとしてから街へ散歩に行くことにした。


夕暮れの街はとても美しかった。

人間の街と似ているが、歩く人は多種多様

水球ウォーターボールに頭を突っ込みながら歩く魚面、オーガ、ゴブリンなどもいた。

それぞれがモンスターと違って魔核を持ち、思考をするらしい。

大鬼族オーガ小鬼族ゴブリン、そして骨人族こつじん、モンスターと似たような見た目をしているが、人間のように生きる者。この街は差別をせず、共に手を取り合って生きていくようにしているらしい。

どこにでも例外はあるものなのだが……


(そういえばまだ骨人族を見ていないな)


西はスラム街となっているようで、この国に住んでいるものはあまり近づかないようだ。

俺はとりあえず道具屋へ向かい、何か使えるものがないかを見る。

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