それぞれの道
「これを頼む」
「はい!ギルドカードをお預かりします!……どうぞ、いってらっしゃいませ!コットン様」
「あぁ」
その男はギルドカードを受け取り、男は大きな山へと向かった。その山は、この国の冒険者でもあまり近寄らない。人間より、魔法も身体能力も長けている魔族の彼らが近寄らない理由は実に簡単なことだ。
彼らでも歯が立たないモンスターばかりなのである。
コットンは、一人その山に向かって歩いていく。
(レッドドラゴンの活発化か……嫌な予感がするな)
レッドドラゴン。龍種の中で炎の魔法を得意とするドラゴンである。永く生きていると言葉を喋るようだが、そういった者はこちらから手を出さなければ敵対することはない。
コットンが討伐しようとしているのは、縄張りから離れ、商人たちを襲っているらしいレッドドラゴンだ。まだまだ若いことがわかる。
(若いといってもSランクのモンスターだ。油断せず行こう)
コットンは、懐から小さなハンマーを取り出した。
銀色で統一されているその小さなハンマーに、コットンは魔力を通し、巨大化させる。その大きさは、ダンジョンの前でムルトが戦ったゴーレムより少し大きいくらいだった。全身が骨でできている細身の彼が、そのあまりにも巨大なハンマーを持って戦う姿から、皆からはこう呼ばれている。
★
「ふう、大罪を持つ者が3人……か」
「レヴィア様、全てお伝えしなくてよろしかったのですか?」
「ムルトに?」
「はい」
「そう、ね。でも、あいつは世界を旅するのが目的なんでしょ?だったら世界を巡っていればいつか会う日もあるでしょうし、あいつは少なくとも世界を壊したりしないと思うわ」
王城の執務室でレヴィアとクロムが会話をしている。その声色からは、不安が感じられる。
「ま、どう転がっても、戦いに巻き込まれることにはなるわよ。『破滅の7人、罪を背負いし者達』……か」
「伝承の言葉ですか?」
「そうよ。全世界を敵に回すことになる。それまでは楽しく生きていてもいいんじゃないかしら?」
「……レヴィア様も楽しまれてはいかがですか?」
「私は、いいのよ」
レヴィアは悲しそうに顔を隠す。そしてペンを握りしめ、精一杯の笑顔をクロムに向けた。
「私はもういいの!来たるその日が来るまで、この呪いを私で止めておく。クロムには最期までついてきてもらうからね!」
「御心のままに」
クロムはそう言うと、顔を下げ、部屋の中が静かになるまで顔を伏せていた。
自分の主の泣き顔を見ないように。
★
王国イカロスの中にある、港町カリプソ
そこに3人組でパーティを組んでいる一行がいた。
金髪に金色の目をしていて、その装備までも金、というよりは黄色よりなのだが、豪華なものを着込み、短剣を4本腰に下げている男。
ジャック・ヤマモト
ピンクの髪に、困り眉が印象的な、胸の大きな女性。2匹の龍が絡みついたようなロッドを手に持ち、魔法を使っている。
サキ・ハナミチ
そして、黒髪に黒目、キリッとした目元からは冷たさを感じるが、その実、内面はとても熱く、優しい。腰には愛刀を下げている、お茶目な女性
ミナミ・フジヤマ
それぞれがS2ランクの冒険者だ。そして、召喚されし勇者だった。
「よしっ!これで終わりだ!」
ジャックがそう言って短剣に雷を纏わせ、モンスターへと攻撃を加える
「えいっ!」
サキはロッドを振り、魔法を発動させる。無詠唱の魔法だ。海には渦潮が生まれていたのだが、その渦潮を凍らせ、魔物の動きを止めた
「とどめは私がさすわ。吼えろ。ー秋雨ー」
ミナミは居合切りのような構えをとり、精神を集中させ、一瞬にして刀を抜き、鞘へ戻す。この一連の動作を1秒足らずでやったのだ。
モンスターは真っ二つに切られ、ジャックの電撃によって体を消滅させられる。
「素材はいらないよなぁ?」
「うん。装備もお金も困ってないし、いいんじゃない?」
「あわわ……黒焦げはかわいそうですぅ」
「何言ってるのサキ、大勢の人を苦しめてきたんだから、当然の報いよ」
「そうかもしれないですけどぉ……」
「いやぁ。でも久しぶりに食いたかったなぁ……イカのお寿司……」
「だったらヤマトの国までまた行く?」
「おぉ!いいねぇ!サキも行くだろ?」
「そ、そうですね。わ、私も行きたいですぅ……」
「じゃあ次の行き先は決まったわね!ヤマトの国へ行きましょう!」
「あわわ、ミナミちゃん、お仕事はどうするんですか?」
「モンスターの捜索でしょ?だったらヤマトの国にいるかもしれないし!そう!それを調べに行くの!」
「ひゅー!ミナミ!わかってるねー!」
「じゃ、明日出発しよっか!」
「おう!」「は、はい!」
勇者一行は目の前のモンスターを放置し街へと戻る。
モンスターの死体は、匂いにつられた他のモンスターが食べにくるので大丈夫だろう。
海の中にて既に命を散らしているモンスターは、クラーケン。Sランク指定のモンスターだが、このクラーケンは普通のクラーケンよりもふた回り大きかった。さらに、このクラーケンは勇者達に発見されてから、10分も持たずにやられてしまったのだ。
ドクン……
ミナミの胸の中で、何かが目を覚ます
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