骸骨は戒める

俺は洞窟の入り口に、肋骨を一本置いておく。


「何をしているんですか?」


「全身の骨は俺と感覚が繋がっていてな。戦闘力はないが、俺の持っているスキルが適用されるんだ。ここに骨を置いて、何かが入ってきて、危険察知のスキルが発動すれば、それにいち早く気づける」


「そうなんですか……」


実は、大熊犬と戦っていた時に気づいたことなのだ。

大熊犬と殴り合いをしていたときに、肋骨を折られ、後方に飛ばされてしまったことがある。

俺は後で拾えばいいと思い骨は放置していたのだが、危険察知の能力が後方から感じ取れたのだ。そのとき後ろを振り向くと、もう一頭の大熊犬が迫ってきていた。

俺はその後何度かその骨を使って確認をしてみると、案の定、ソナーのように使えた。

これを知ることができてよかったと思う。戦略の幅が広がるのだから。


「よし。二本置いておけば十分だろう。」


「一本でも十分じゃないのですか?」


「念には念を。というやつだ」


「そうなのですか…」


「よし、それでは奥へ行こう。気を引き締めるのだ」


「はい!」


ハルカは木の杖を固く握りしめ、魔力を纏わせる。魔力を操作することは、造作もないことらしい。魔力操作のスキルがあるのだから当たり前なのだろうが……


俺たちは少しダンジョンの奥へ入ると、1匹のスライムを発見した。

楕円の形をした青色の液体がぷるぷると動いていた。液体の中には、丸い核が存在している。そこがスライムの弱点だ


「スライム、だな。動きも遅いし、青色は攻撃性も酸性も低い。余裕で勝てると思うが、油断はするなよ」


「あ、あれが生スライム……!!」


ハルカは嬉々とした目、感動したような目をしている。月を見上げる俺はこんな顔をしているのだろうか……?皮膚も目玉もないが、表情はわかるものだろうか。


「ハルカ、聞いているか?」


「は、はい!油断せずに!ですよね!」


「あぁ、そうだ。弱点はわかるか?」


「あの液体の中に入ってる丸い石みたいなものですかね?大丈夫です。頑張ります」


「あぁ。俺は周りを警戒している。初めての戦闘相手だ。よく考えて、命に感謝をしながら仕留めるのだ」


「感謝……ですか、はい」


「ハルカの自由への第一歩だ。慌てなくていい。落ち着いて対処しろ」


「はい!」


ハルカはスライムに近づき、ロッドの端を持ち、高く構える

スライムはハルカに気づいているようだが、攻撃をしようとはしていなかった。今も苔を一生懸命食べているところだ。


「は、初めての……い、いただきます!」


ハルカは目をつぶりながら、思い切り振りかぶった。その一撃は、見事に核を捉え、その核を地面へと叩き潰し、壊した。核を失ったスライムはただの液体となり、地面に広がっている。


「ム、ムルト様!やりました!」


「あぁ。見事な一撃だったぞ。だが、攻撃の瞬間に目を瞑ってはいけない。次にどう動くか見えなくなってしまうし、他に敵がいるかもしれない」


「あ、ありがとうございます!気をつけます!」


ハルカは言われたことをしっかりと理解し、次は同じことを繰り返さないようにします。といった。ステータスを確認するように言ったのだが


「ステータスを確認する時間がもったいないです!宿に帰ったら一緒に見ましょう!」


と言われた。俺はそれを了承し、他のモンスターを探す。どうやら1階層にはスライムしかいないらしく、ひたすらにスライムを倒していた。8匹を倒した頃に下へ繋がる階段を見つけ、ダンジョンを降りていく。ここにはスライム以外にもラット(G)がいたが、小さく、ちょこまかと逃げることから、獲物にはしなかった。


そして、3階層へと俺たちは足を踏み入れた。そこで、本日23匹目となるスライムを倒したとき、新しいモンスターを見つけた。


「見ろ。ゴブリンだ」


通路の目の前には、小さい緑の体に、醜悪な顔に、なんとも状態の悪い剣や棍棒を持っているゴブリンが3匹いた。こちらにはまだ気づいていないようだ


「スライムと違って人型で、いろいろな動きをしてくる。いけそうか?」


「はい!任せてください!」


「初めてゴブリンと戦うのだ。2匹は俺が倒そう。1匹はハルカが倒してくれ」


「わかりました」


どのゴブリンを相手するか決めてから、俺は走りだす。

そのままの勢いでゴブリン2匹の間に入り、屠っていく。

そして、残ったゴブリンの後ろに移動し、退路を断つ。


「ギギッ」


どうやらゴブリンは驚いているようだ。手に持ったボロボロの棍棒を俺へと向けてくる。


「お前の相手は後ろだ」


「ギ?」


ゴブリンは振り返り、杖を構えるハルカを見つける。俺を倒すよりかは容易に見えたのだろう、ハルカへと襲い掛かった。

ハルカはゴブリンの動きしっかりと見て、攻撃を避けている。

戦いの訓練としてゴブリンを使っているようだった。


「はぁっ!」


ハルカは杖でゴブリンの横っ腹を殴りつけ、ゴブリンを転倒させた


「よし、これで終わりだ!」


ハルカは杖を大きく頭の上に構え、振り下ろそうとする


「グギッ!」


「ハルカ!油断するな!」


「へ?」


ハルカは杖を思い切りゴブリンの頭へと振りかぶったのだが、そのあまりの大振りに、ゴブリンは体を転がし、攻撃を避け、ハルカの腕へと棍棒を振り下ろした。


「うっ」


ハルカはその攻撃で腕を痛め、杖を落としてしまう。ゴブリンはその隙をつき、ハルカの頭めがけ、棍棒を振りかぶった


(まずいな)


俺はハルカとゴブリンの間に割って入り、ゴブリンの攻撃を腕で防ぎ、顔面に蹴りを入れて破裂させる。


「ハルカ、油断するなと言っただろ」


「申し訳、ありません……」


「ポーションを飲んで回復するのだ」


「はい」


ハルカはポーチからポーションを取り出し、殴られた箇所に振りかける。腕は少し腫れていたが、キラキラと光ると、その腫れがゆっくりと引いていく。


「ふむ。丁度いい。訓練はここまでにして帰るか。明日はギルドの修練場で軽く組手をしよう」


「はい」


傷は癒えたはずだが、ハルカの表情は暗い。


「失敗は誰にでもあることだ。その失敗を次どうすれば回避できるかを、考えるのだ」


「はい」


俺とハルカはその場を引き上げ、街に帰ることにした。入り口で肋骨を回収し、元の場所へはめ込む。帰り道も特に危険はなく、無事に帰ることができた。


街に帰る頃には日が落ち始めたので、そのまま晩飯をとり、明日の予定を共に組み、今日の成果のステータスを確認した



★★★


名前:ハルカ

種族:魔人族


レベル:32/100

HP2650/2650

MP2600/2600


固有スキル

鑑定眼

氷獄の姫アイス・プリンセス

魔力操作

アイテムボックス



スキル

杖術Lv3

経験値UPLv10

火魔法Lv1

光魔法Lv1

氷雪魔法Lv1

闇魔法Lv1

打撃耐性Lv1


称号

転生者、転生神の加護、忌子

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