骸骨の期待
天の川はその日のうちに消えてしまい、もう一度見ることはできなかった。
俺たちは、頂上からそのまま反対側の山を下っていた。
行きと同じように、ワイバーンが襲ってきたが、それ以外のものは襲ってはこなかった。
龍の住む山ではなかったのか、とコットンに聞いたところ。
「私が頂上に近づいたら、次々と飛んで行ってたやつがいたわよ」
と、レヴィが答えた。俺とハルカは天の川に夢中で気づかなかった。コットンは気づいたという。
それから4日かけて、山を下っていた。ワイバーンの肉は消費し、素材などは残していた。合計で16体倒したので、換金のほうもなかなか期待できるだろう。
「ところで、このまま降っていっていいの?」
「あぁ。問題ない。俺はその街で別れるつもりだ」
「って言っても、この先は聖国にはいるわよ?」
聖国ことノースブランは、人族至上主義なのだ。俺たちモンスターや魔族が入ったら、即刻打ち首となるらしい。
「これから行く街は聖国の中ではあるが、この山が近いということもあり、冒険者たちが集まるところだ。あまり聖国の信者もいないし、魔族も多い」
「へぇ〜そうなの」
コットンとレヴィのそんな話を聞きながら、俺は今後どうするかを考えていた。
「コットンはそこでお別れなのね」
「?レヴィは戻らないのか?」
「言ったじゃない。あなたの旅について行くって」
「どこまで来るつもりだ?」
「どこ、までもよ」
レヴィは澄まし顔でそんなことを言った。しばらくすると、街の門が見えてきて、少しだけだが、列に並ぶ者たちがいた。
俺たちは仮面を被り、その列へと並んでいく。
「それでは、身分証を確認します」
俺とハルカ、コットンは冒険者カードを提示する。
「レヴィは冒険者カードはないのか?」
「あるわよ」
レヴィがそう言って兵士に渡したのは、黒い冒険者カードだった。
「え、え、S3様でしたか!!どうぞ!お通りください!」
周りにいた冒険者や商人、兵士、コットンまでもがレヴィを振り向き見ていた。
こんな子供が……という声も聞こえてきた
「昔に作ったものだけどね。こうなるから、あまり出したくないのよ……」
★
その後、冒険者ギルドで、今まで狩りをしたワイバーンを売り、金をわけあった。
ワイバーンを何体倒したかで報酬は山分けすることとなった。
レヴィ10体
コットン4体
俺2体
ハルカは0だ
俺たちの手元には、金貨が4枚入る。
「はい。これ、お小遣いよ」
レヴィはそう言って、ハルカに大金貨を1枚渡す。
「い、いいんですか?」
「いいから渡してるんでしょ、好きなものでも買いなさい」
ハルカは礼を言い、大金貨を受け取る。いつのまにか、二人は仲良くなっているようで、嬉しい限りだ。
その後宿を決め、部屋を取る。
俺とコットン、レヴィとハルカで2部屋だ。
遅めの昼食をとり、今後の日程について相談をする。
「さぁ、次はどこに行くの?」
「特に決めてはいないな」
「このまま真っ直ぐ進むと聖国に入ってしまう。東か西だろうな」
「聖国に行くのはオススメしないわ。私たちは当然罰せられるし、ハルカなんてその見た目で魔族だってバレたら、冒涜だーって言われて酷いことになるわよ」
「それは、嫌ですね……」
「ふむ。どこかいいところはないだろうか」
「ハルカって前世は日本人なんだっけ?」
「は、はい」
ハルカは、レヴィやコットンに、自分は転生者であることを既に話している。
コットンは、ユニークモンスターの俺と、転生者のハルカが一緒にいることに、「運命だ……」と言って感動していたのを覚えている。
「なら、東の方に、ヤマト、っていう、昔の転生者が作った国があるわよ」
「そうなんですかっ!」
「え、えぇ。あなたなら、あそこにあるものが懐かしく感じるんじゃないかしら……?私にはあまり合わなかったけど」
「例えば……?」
「そうね……藁でできた床に、紙でできた引き戸、あとは土でできた鍋の料理とか……あと、ししおどし?っていう、何に使うかわからないものがあったわ」
レヴィが話したその様々なものは、ハルカにしか伝わらなかったようだが、自然と俺も興味が湧いた。
「ふむ。俺も見てみたいな」
「じゃあ、決まりね。出発はいつにする?」
「早い方がいいのか?」
「別に遅くてもいいけど、海を越える必要があるから、海が荒れる日じゃなければ」
「海を越えるのか!」
「え、えぇ」
俺は思わず身を乗り出し、レヴィに聞き返してしまった。
「す、すまない」
「いきなりどうしたのよ」
「実は海を見たことがなくてな、ワクワクしてしまった。見渡す限りの水に、船が浮かび、大きな魚がいると聞く」
「えぇそうよ。じゃあ、決まりね。で、いつ出発にする?」
「明日だ!」
「早くない?」
「私は賛成です!」
「俺はここまでだからな」
「あぁ、明日だ!早ければ早いほどいい!胸が踊る!」
「踊る胸ないでしょうが……じゃあ、決まりね。次の行き先は、港町。カリプソ」
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