骸骨達と前準備1/2

そして翌日、ムルトたちはいつものように食堂に集まり、食事をしながら談笑をしていた。


「がっはっは!まさか龍王である我が人間に叱られるとは!!」


「昨日のバリオさん本当に怖かったですね……」


「まさに圧巻、怒髪天を衝く、というものだろうか?」


「ほっほっほ。ムルト殿中々難しい言葉を知っておるのう」


「あれ?ダン、シシリーはまだ寝てるのか?」


「ん?いや、起きてはいるけど気分が悪いとかで部屋で休んでる」


豪華でバランスの良い食事をとりながら、昨日のことを思い出す。だるまさんがころんだや、ドロケイをしていたムルトたち、結果的にはモンスターチームが勝利したのだが、ドロケイの時にガロウスが発した殺気に、城内の何人かが反応してしまったのだ。

訓練中の兵士や仕事中の政務官が、次々と気分が優れないとバリオに訴えたらしいのだ。

原因は当然の如くガロウスの殺気で、バリオもそれには気づいていた。


「見たか?ジュウベエや黒い小娘の顔を!バリオの形相に恐怖しておったわ!」


「ったく、あんたのせいで私たちまで怒られたんだからね!殺気の調整間違えてるじゃない!」


「いいや、我の調整は完璧だ。我より弱い者は反応できず、我と同等かそれ以上の者しか反応できない。逆にだ、自分では気づけなかったが、本能が殺気にあてられたことに気づいた、そう考えれば体調を崩した者たちは潜在能力が高いということだ!がっはっは!!」


「あんた、本当……」


「まぁまぁ、怒られてしまったが、みんなで遊べて楽しかったじゃないか」


「儂もムルト殿と同じ気持ちじゃよ。儂が童のときよりもずっと楽しかったぞ」


「レヴィちゃん、みんなが楽しめてるならいいじゃないですか」


「キアラ、あんたまで……全く、あんたらは周りのことをちゃんと考えて行動しなさいよ?」


「わかっておる」


「任せてくれ」


「かしこまりました」


レヴィアは一国の王だったからこそ、民や周りの人物への気遣いは忘れない。ムルトやキアラはモンスター、ガロウスは自由気ままでミチタカとダンはわんぱくなところがある。しっかりと周りを見て行動をしているのは、年の功もあるゴン、物静かなティア、心優しいハルカ、意外と気遣いのできるティングなどである。


「それよりも大丈夫なのか?今日は出発の日だろう」


「そういえば、バリオの奴が叱り終わった後にいっておったな」


「今日の正午に広場に集合ですって。昨日の檻を作ったところね」


「なるほど……意外と時間があるのだな」


「そうですね、ムルト様、レヴィ様、ティングさん、キアラさん、武器や荷物の確認はしておきましょうね」


「俺の荷物はいつもハルカに持ってもらっているからな。後で確認しよう」


「それじゃ、みんなで荷物の確認でもしない?」


「いいかもな、必要なものを持っていなかったら、誰かから借りればいいし」


「ん、私も協力、する」


「それでは、娯楽室に集まろう、ものを広げやすい」


「私、ミナミちゃんたちも呼んでおきますね!」


「じゃ、俺はシシリー引きずってくるよ」


「俺たちは先に娯楽室に行こう」


「丁度いい時間だな、それでは行くか」


朝食を食べ終わり、今日の予定が決まった。ムルト、レヴィア、ティング、キアラの4人は、正午に吸血鬼の国へ向かうことになっている。携帯食料や通行証、路銀などをバリオは用意しているが、何が起こるかはわからない。荷物の準備だけではなく、武器や道具の準備も怠ることはできない。


ムルトたちは食器などを片付けた後、娯楽室へと向かった。色々な遊具や遊戯物が並ぶ中、自由空間として広い場所がある。そこにムルトたちだけではなく、ミナミやコットン、カグヤたち美徳持ちの皆が集まってくる。ちょっとした集会を開いているのではないかと思うほどに和気藹々としている。


「武器は全部もっていくんですか?」


「あぁ。人狼からもらった短剣、レヴィからもらった短剣、月光剣は絶対に手放しはしないが、何が起こるかわからないからな」


「吸血鬼の国に着く前に、他の国から攻撃されてしまうかもしれないからな!」


「ダガーの使い方なら、私教えられるけど……」


「シシリー、無理しない、横になってて」


「強そうな龍が背中に3人も乗せてたら、どこからか攻めてきたって思いますものね……」


「何ミナミ~、あたしが怖いってこと?」


「私たちは全然怖くありませんが、普通の人が見たらってことですよ」


「それはそれで傷つくな~」


「す、すいません」


「冗談よ、冗談」


武器の整備や、何かがあった時のための作戦を立てながらも、とても朗らかな空気を漂わせながら進んでいった。

レヴィアはまずないと言っていたが、野営のためのテント、キアラもティングも武器らしい武器はなく、ムルトも月光剣と短剣2本、レヴィアはムルトたちも初めて見る服を取り出した。


「その服はなんだ?」


身体に密着するように作られている、水色の服、前は隠れているが、背中側は首から腰にかけて大きく穴が開いている。少し激しく動けばお尻が見えてしまうほどだ。


「私も日々成長してるからね」


「がっはっは!どこを見て言っておるのだ!」


とても大きな音がした。レヴィアがガロウスの頭に拳を叩き込んだようだ。


「た、確かに成長しておるな……」


「ふん。どうしても、スピードを出しすぎると服が耐えきれなくなっちゃうのよ。そこまでスピードを出す敵もいないけど、用心はするものだからね」


その衣服は伸縮性のあるモンスターの皮から作ったものらしく、背中に空いた大きな穴は尻尾や翼を出すためにあけているらしい。


その後もわいわいと必要なもの、そうではないものを言い合い、アイテムボックスから取り出したり預かってもらっている。残念ながら、吸血鬼の国へ向かうムルトたちの中にアイテムボックスを使えるものはおらず、持っていく物量も考えなくてはいけない。

そうやってムルトたちが話していると、娯楽室のドアを叩く音がした。


「む?誰だ?入って大丈夫だ」


時間的にはまだまだ余裕がある。時間が前倒しになったのか、はたまたジュウベエたちだろうか、ムルトが入室を許可すると、ゆっくりとドアが開かれ、その姿を見せた。

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