死を穿つ光達


「さすがに数が多すぎるんじゃねぇか?」


「知恵の美徳を持ってるのだから、何か作戦を考えなさい」


「つってもなぁ、この4人でヒット&アウェイで戦うのが今の最善策なんだよ」


「もっといい作戦はないのっ?!」


目の前に迫る死の軍団、スケルトン、レイス、リッチ、デュラハン、グールなど、多種多様のモンスターが入り乱れ、ミナミたちに向かって歩みを進めている。


「数が問題か?」


ハンゾウがジャックへ問いかける。


「ま、まぁそんなもんです。さすがに4人じゃつらいですね」


「よし、ならばこちらも数を用意しよう」


ハンゾウは素早く手で印を結び、その術を発動させた。


「多重影分身の術」


その言葉とともに、ハンゾウが2人に、4人に、8人に、次々と増殖を繰り返す。


「こ、これは」


「すごいですぅ……」


「すげぇ……」


驚きの言葉を3人が言う中、ハンゾウはさも当然のような顔で言った。


「とりあえず1000人だ。あやつらよりかは少ないが、作戦のたてようはあるだろう」


「はい……作戦はですね……」


ジャックが目をつぶり考える


「総力戦か?」


「間違ってはいません。けど、全員でぶつかるより、協力しながら戦ったほうがいい。でも俺たちは……」


ジャックが笑いながらミナミとサキを見た。

ミナミとサキは、ジャックが次になんと言うかわかっていた。ジャックが呟く言葉と同じ言葉を口から漏らした。


「「「個々のほうが強い」」」


当然、3人はいつもは協力して戦っている。

だが1人で戦う術も身につけており、それを伸ばす鍛錬も各々が積んでいる。

3対1でモンスターを討伐するのであれば、協力したほうが早く片がつく。

例えばそれが、3対1000ならば、1000体を3人で相手するのではなく、300ほどの敵を1人で相手したほうが早い。


「ふむ。ならばどうする?」


「はい。俺たち3人は別々で戦います。ですが、さすがに敵の数が多すぎる。必ず隙ができてしまうこともあります」


「ふむ。それを俺が、か」


「はい。サポートをお願いします。ハンゾウさんも1人で戦ったほうがいいですか?」


「あぁ。そのほうがいいだろう。負担が減る」


「はい。それではそれでよろしくお願いします」


「俺はリッチの多い右翼を」


「私はグールの多い左翼を」


「わ、私はホラーが苦手なのでデュラハンの多い場所をやりますぅ〜」


「スケルトンの多いど真ん中は任せろ!!」


4人が一斉に駆ける。その後ろを追うように、分身のハンゾウ達も駆けた。





「ミナミ、手助けだが」


「えっ?!分身喋れるんですか?!」


「当然だ。それより、手助けのことだが、間合いに入らない、離れていてほしいなど要望はあるか?」


「いえ、特には、強いていうなら背中を預けます」


「あいわかった」


何百人というハンゾウが散開する。ハンゾウの分身は3人1組でグールが集まっている外側へと散っていく


「外側から攻め、詰めていく」


「はい!それでお願いします!」


ミナミは納刀し、居合の姿勢をとる。

ハンゾウは何かをすることを察し、ミナミの後ろへと退避した。そして後ろから敵がくるのを警戒する。


(グールの弱点は、火)


ミナミは魔力と気、と呼ばれるものを練り上げ、刀に手をかけ、前傾姿勢になる。


(ほう……気も練れるのか、あの構え、昨日今日で身につけたものではないな)


スゥー、とミナミは息を吐き、微かに吸い込み、息を止める。


(居合の型、豪炎一閃……)


目を見開き、勢いよく刀を抜き放ち、大きく横に振り切った。


紫桜しおう炎斬えんざん!!」


ミナミが抜き放った刀は炎を纏っていた。

ミナミは居合の技を使い、抜刀した。だが、グール達はミナミとまだまだ距離がある。距離にして100mほどだろうか。グールの歩みは遅く、ミナミの抜刀術が当たるとは思えなかった。

しかし、グールの体が、横に割れる。炎に焼かれながら。


ミナミが繰り出した技は、飛ぶ・・斬撃


ミナミに一番近いグールだけではなく、それは中程にいたグールまでをも焼き始めていた。


「ハンゾウさん!行きます!」


「御意!」


ミナミは刀に炎を纏わせたまま突っ込んでいく。


「「「「「火遁!爆炎手裏剣」」」」」


グールを外側から詰めていたハンゾウ達が、同時に術を発動させる。大きな円卓ほどはある炎の手裏剣、たくさんの手裏剣が外側からグールを炙っていた。


ミナミたちは残ったグールを撃破していく。





「範囲魔法を打ち込みますので、ハンゾウさんは外側の敵からお願いします!」


「あいわかった」


ミナミの所と同じく、ハンゾウは外側から敵を追い詰めていく。

サキは先ほど廃城に魔法を放ったように、両手を広げ、魔力を練った。


「アイス・レイン!」


続けて


「メテオ・レイン!」


双頭の杖が輝き、上空に魔法陣が浮かび上がり、そこから魔法の雹と隕石が降り注ぐ


「ホーリー・レイ!!」


それを覆い尽くすほどの魔法陣、そこから光のビームのようなものも加わった。

灼熱魔法、氷雪魔法、聖天魔法の多重起動、並の魔法使いにはできないものを、創作魔法と組み合わせ、サキは発動させた。


サキが担当したデュラハンなどのモンスターは瞬く間に破壊されていく。そこへアンデッドモンスターが苦手とする聖天魔法のホーリー・レイ、ほとんどのモンスターが消滅していく。

それでも、その攻撃を耐え、避けきったものもいる。

サキは自分の杖へ魔力を纏わせ、杖の形を変えていく。


絡みつくように交わっていた双頭の龍は右と左に別れた。Tのような形になり、片方は氷で覆われ、もう片方は炎に包まれる。


炎氷龍の仕込み槌ダブルアクセント・カバー・ハンマー


サキの身の丈よりも少しばかり大きいそれを、サキは振り回す。華麗に可憐に舞いながら、デュラハン達を頭から潰していった。


「ハンゾウさん!」


「はっ!」


サキはデュラハンに囲まれていた。いや、囲まれるように動いていた。

サキの掛け声とともに、ハンゾウはサキから離れる。サキはハンマーをくるりと回し、炎に包まれた方を地面に思い切り叩きつける


「ボルケーノ・スピン!!」


そしてそれを振り回す。サキを囲んでいたデュラハンは溶かされていく。灼熱の温度まで達しているハンマーは、デュラハンの装備ごと駆逐をしていた。

デュラハンは瞬く間にその数を減らしていく。

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