骸骨は再出発する

暗い森を走り続ける。

追いつかれないように。出会わないように。

天気は雨、俺は走り続け、疲れていた。HPは1しか残っていないのだ。

ボロボロの体が悲鳴を上げているように感じた。


(暗雲で月が隠れているな……)


月読のおかげで、敵を避けながら、光がなく真っ暗な森の中をかけていく。そして一つの洞窟を見つけた。


(懐かしい……俺のいた洞窟と似ているな)


疲れ果てた俺は、何気なくその洞窟の中に入っていった。雨風を凌げ、心休める場所、そんなところを探していたのだ。


月読にモンスターがうつる。それは、スケルトンだった。ランクGの、なんの害もないスケルトン。彼らは部外者の俺に攻撃してくることはなかった。同じスケルトンだからだろうか。


俺は洞窟の奥に行き、やっと一息つく。

俺がいた洞窟のように大穴は空いてなく、月を見ることは叶わなかったが、今日はあいにく月が出ていないので好都合だった。


(今日はたくさん、ありすぎた)


俺は今日の出来事を順番に思い出す。朝に月の女神と出会い、昼に自身の変化にびっくりし、夜には1人で逃げている。

最後に思い出すのは、あの少女の悲しそうな顔。


(怖がらせてしまった……な。反省だ)


俺はそんなことを考えながら、目をつぶった。

初めての、睡眠だった。





太陽の光が洞窟の入り口から差し込み、俺は目をあけた


「ん……眠って、いたのか?」


俺は自分が横になり意識を手放していたことを思い出す


「これが、睡眠か……ふむ、悪くはないのかもな」


俺は立ち上がり、現状の確認をする。


名前:ムルト

種族:月下の青骸骨アーク・ルナ・デスボーン

ランク:C

レベル:27/50

HP366/1240

MP600/600


固有スキル

月読

凶骨

下位召喚

下位使役

魔力操作




スキル

剣術Lv3

炎魔法Lv6

風魔法Lv1

暗黒魔法Lv1

危険察知Lv6

隠密Lv10


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター、挑戦者、嫌われ者


あの蠍を倒しただけで、レベルが半分ほども上がっていた。

それに対してステータスも向上しているが、HPは回復は不完全だった。


(ふむ……)


俺は自分の体を見て、原因に思い当たった。それは、このボロボロの骨である。

体の骨を数本砕かれ、その他の箇所にもひびの入っているものが多い。


幸い、自分の骨は替えが利くのを知っている。そしてここにはスケルトンがいっぱいいる。


(しかし……やはり同族に手をかけるのはやめておきたい)


俺はスケルトンを目の前にし、剣に手をかけていたがそれをやめた。

試しに手を前に突き出し、唱えてみる。


「使役」


目の前のスケルトンはカタカタ、と音を立てると、静かになった。


(これでよいのだろうか……右手をあげろ)


目の前のスケルトンは右手をあげたらしい。どうやら下位使役は成功したようだ。彼は召喚したスケルトンではないので、魔力がつきても消滅することはないだろう。


「成功。だな、よし、君の仲間の残骸があるところまで連れていってくれないか」


目の前のスケルトンは、またカタカタと音を出して歩き始める。歩いてすぐ、無数のスケルトンの残骸が無造作に転がっている場所につく。なぜスケルトンの残骸がここに集まっているのかはわからないが、好都合だった。


「ありがとう」


俺はここへ連れてきてくれた彼に軽くお礼を言う。また彼はカタカタと音を出すだけだった。

俺は目の前の残骸からアバラ、足の同じパーツを探し、自分の体に取り込んでいく。

ひびの入ったところも変えようと思ったのだが、どうやらひびが入っている骨は、他の骨を押し当てるとその骨を吸収してひび割れを治すらしい。

新しいことに気づけた。


俺はまた自分のステータスを確認し、HPが少しずつ回復していることを確認すると、予備の骨を5本ほど荷物に入れ、元の場所へ戻る。


(よし。これで体に関しては大丈夫だな)


次に荷物を確認した。

決して手放すことのない月光剣、エルフにもらった荷物入れと紹介状、銀貨などの入った袋、門兵にもらった大袋二枚に、先ほど回収した5本の骨

仮面と外套はスコルピオンとの一件でズタズタになったので、あの場へ置いてきてしまった。

ブーツは汚れているがまだ使える。

手袋はスコルピオンの毒のせいだろうか、溶けて穴が空き、骨を隠すことはできなくなっていた。


(ふむ、とりあえずしまっておこう)


俺は現状の確認を終えると、使役をかけていたスケルトンを解放し、お礼を言い、太陽が昇り始めた森へ向かって歩き出した。


向かう場所は決めていないが、これからの旅は明るいものだと思いたかった。

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