予選Dブロック2/5

「綺麗な頭蓋骨……」


「な、なんだいきなり」


「それに、反魂術が効かない、本物のモンスター?」


「……」


「言わなくていい。わかってる」


少女は頰を少し赤らめながらムルトを見つめた後、極大魔法を繰り出した女性を見る。


「あなたは私を攻撃しない?」


「あ、あぁ」


「ならあの子は私がやる。あなたは他の2人をどうにかして」


聖騎士の男は変わらぬ姿で、初老の男性は少しにやけながらムルト達を見ていた。


「後で、また話そ」


少女はそう言いながら歩いていく。


「わかった。その前に聞きたいことがある」


「なに?」


「俺の名はムルト、お前の名は、なんという?」


「ムルト、そう、ムルト、いい響き」


少女は年相応にモジモジしながら赤くなる。

そして控えめの笑顔をし、手を後ろに回し少し腰を折って言った。


「私の名前はティア、よろしくね。骸骨スケルトンのムルト」


そう言ってティアは振り返らずに向かっていった。ムルトはなぜか恥ずかしくなりつつも、武器を手に取り構え直す。


初老の男性は、ティアを見送った後に笑みを浮かべながらムルトに近寄ってくる。


「ひゅー。お熱いね〜」


「そ、そういうのではない。……む?お前は」


ムルトはその男性に見覚えがあった。

赤い髪に混じる白髪、串のような武器、そしてBブロックに見えた巨大な髑髏


「まさか聖国で出会った?」


「おぉ!覚えてるのか!そうだ。ゴンだ。いやぁ、久しぶりだな」


「言うほど久しぶりというわけではないと思うが……さっき見えた髑髏はワイトか?」


「ん?あ〜そうだ。ワイト、ワイトキングのワイトだ。今は名前がついてる」


「何?ネームドモンスターになったのか」


「そうだ。今は、っと!」


「ぬっ!」


ムルトは後ろから伸びてくる剣の先を間一髪で避ける。ゴンはその剣を4本の串で受け止めた。


「感動の再会をしているところ悪いけど、ここは戦場だ」


聖騎士の男が2人を襲う。


「ふっ!」


ゴンはその串をそのまま聖騎士に向かって投げる。聖騎士はそれを避け、後ろに下がる。


「中々やるようだね。しかし……君はモンスターだって?しかもアンデッド」


「……」


「いやぁ、答えなくたっていい。僕がここで君を倒すのは決まっているんだから、ね!」


聖騎士はムルトに向かって飛び出す。ムルトは全身に憤怒の魔力を帯び、それを半月で受け止める。


「アンデッドのくせに、中々やるじゃない、か!」


聖騎士は剣を弾き距離を離した。


「ゴン、相手は中々やるようだ。ここは一旦手を組もう」


「ほう?手を組む?」


「あぁ。ワイトについて話したいこともあるしな、結局は戦わなくてはいけないがな」


「だったらっ!」


横にいたゴンが串でムルトを襲った。横から迫りくる串をムルトは半月で弾いた。


「な、何をするっ!」


ゴンは串を構えなおし、腕をまっすぐにムルトに伸ばして言った。


「確かにあんたは俺の友の大切な友人で恩もある。だがここはあいつの言う通り戦場だ。友達とか恩とかはないんだ。そして何より……」


ゴンはムルトに肉薄し、両手でムルトを襲う。ムルトは剣を横にしそれを受け止める。

ゴンはそれを見ながらさらに言う。


「俺があんたと戦いたい」


「ぐぅっ」


ムルトはそのまま弾かれ、地面を滑りながら後ろへ飛ばされていく。そしてそこへ聖騎士が横から畳み掛ける。


「はっはっは!アンデッドの分際で何を言ってるんだ!これで2対1!お前の勝てる可能性は万が一にもなくなった!」


激しく剣を交わせながら聖騎士はそう叫ぶ。すると横から数本の串が飛んでくる。


「だからって獲物を横取りするような奴には譲らんがな!」


聖騎士とムルトが剣を交えてるところにさらにゴンが参戦する。右を見ても左を見ても敵、3人は激しく入り乱れながらDブロックを戦っていく。





「はぁ、はぁ、はぁ」


「どうしたの?疲れたの?」


極大魔法を放った女性に対してティアがそう言った。


「あの威力と範囲、確かに疲れはするけど、まだ戦いは、終わってない。よ?」


「……わかってますっ」


女性は杖を構えなおした。杖には双頭の龍が象られている。


「あなたを倒して、あそこの3人も倒します!」


「ふふ、予選突破できるのは2人、だよ?」


「はっ!た、確かに」


「うふふ、おバカなんだね」


「ち、違いますよっ!」


ティアはそんな女性を見ながら、杖を構える。


「でも、予選突破する人は決まってる。私とムルト」


「ムルト……さん?」


その女性は激しく打ち合う3人の男を見る。そこには見覚えのある仮面を被り、これまた見覚えのある剣を振るっている。


「まさか、ムルトさんっ?」


「知り合い?」


その女性はティアに向き直り、杖を構える。


「知り合いも何もお友達ですっまさか同じ大会に出場してるだなんて……じゃあハルカちゃんも?」


「むぅ……」


ティアは頰を膨らませ怒っているように見える。


「私はまだお友達じゃないのに……ずるい」


「はい?何か言いました?」


「なんでもない」


その言葉を最後に、2人の空気は変わる。2人とも互いを注視しながら魔力を練り上げていく。魔法使い同士の、力のぶつかり合いだ。


「負けません」


「こっちの、セリフ」


双頭の龍と、怪しい髑髏が向かい合う。


「行きます!ー鳥籠ー!」


「ー走者ランナーー3、回者スピナーー2」


2人を中心とし、風が吹き荒れる。

風が形を持ち、数匹の鳥がその女性の周りを飛び始める。

そして、ティアの足元からは数体の骸骨が現れた。1つは普通の骸骨、もう1つは体が車輪のような形をしている骸骨だ。


「行って」


「ー風身鶏かざみどりーさん、啄んで!」


普通の骸骨は走り出し、車輪の骸骨は回りだす。風の鳥は鳴き、その骸骨達へ向かっていく。


死霊術師ティアと、勇者サキ。

魔法使いの一騎打ちが、ここに始まった。

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