骸骨は挟まれていた

『さぁぁぁぁ!!とうとうやってまいりました!!喧嘩祭り本選!!厳しい戦いを勝ち抜き、勝利を手に収めるのは誰だぁ!!

選手の皆様には既に個室の控え室にて待機をしてもらっています!それでは!さっそく!!本日行われる戦いの組み合わせを発表するぜぇぇぇ!!!』


巨大なスクリーンにロンド、ミチタカ、ティング、ジュウベエ、ハルカ、ブラド、ムルト、ティアの顔が映し出される。

それぞれカードのようになっており、それが混ざると、トーナメント表へとランダムに貼り付けられた。


『それじゃあ改めて!発表していこう!!

第1回戦!氷獄の姫、ハルナ!!VS!!骸骨嬢、ティア!!』


スクリーンの大画面に、次々と選手の写真が表示される。


『第2回戦!!流水拳、ミチタカ!!VS!!詳細不明、ブラド!!』


『第3回戦!!紅鬼、ジュウベエ!!VS!!月の仮面、メルト!!』


『第4回戦!吸血鬼、ロンド!!VS!!太陽の仮面、ティング!!』


『総勢8名による、激しい戦いが繰り広げられます!!誰が今日の激戦を勝ち抜き!準決勝へ駒を進めるのでしょうか!!それでは!30分後!第1回戦を始めたいと思います!!』


「「「うおおぉぉぉぉお!!!」」」


観客の歓声が響く。溢れた熱気が膨れ上がるように、会場は一気に熱くなる。





「1回戦はハルカとティア、か」


ムルトは運営によって与えられた個室で、会場の風景を眺めていた。

ソファや机などが部屋には置いてあり、選手が休めるよう、ウォーミングアップをするための広い部屋なども用意されている。


ムルトは中継で発表された対戦表を見ながら、自分の両腕にひっついている2人に問いかけた。


「……戦いの準備はしなくていいのか?」


「私はムルト様と一緒にいられるのが何よりのリラックスなので!」


右腕にしがみついているハルカは嬉しそうに頰を擦りながらそう言った。


「私も、リラックス」


左腕にしがみついているティアは眠たそうに目をこすりながらそう言った。


「ふむ……」


今現在、ムルトの控え室には第1回戦で戦うこととなるハルカとティアがいる。

ハルカは試合前にムルトから元気をもらうために。ティアはムルトともっと話しをしたいと言って。

2人が控え室に来たのはほぼ同時。

昨日は仲良くやっていたが、やはり互いをライバル視しているようで、対戦表が発表される前に、時間にもなっていないのにムルトの控え室で争いそうな空気だったが、ムルトが「ここで争うのはやめてくれ」と言ったところ、2人はムルトの両腕を分け合い、ソファで落ち着いている。


「もう10分前だぞ」


「いいんですっギリギリまでムルト様と一緒にいたいんですっ!」


「私も」


「……全く」


ムルトもどうしようもなく、これから戦うのだから、せめてもの、という思いで大人しくしていた。


そこへ、控え室のドアをノックする音が聞こえた。


「なんだ?」


「突然失礼致します!メルト様の控え室にハルナ様かティア様はいらっしゃいますか?」


ドア越しにそう聞かれる。


「あぁ。いるぞ、入って構わない」


ムルトは仮面を被り、スタッフを招き入れる。


「お2人ともここにいらっしゃったのですね……試合開始の10分前には入場口に集合してもらわないと……」


「だ、そうだ」


ムルトは尚も両腕にしがみつく美少女2人に言った。2人は静かに手を離し、離れていく。


「仕方ないですね……それでは私、頑張ってきますね!」


「私も、頑張る。応援、して」


「あぁ。2人とも応援してるさ」


2人は名残惜しそうにムルトを見つめながら去っていく。ふとムルトは、なぜスタッフがここにハルカとティアがいると訪ねてきたのかを聞いた。


「一部屋ずつ見て回っていたのですが、ティング様が、『ハルナとティアならム、メルトの部屋にでもいるのではないか?ハルナは確実にいると思うぞ』と教えてくれたのです」


「ははは、ティングのやつが、な。2人が手間をかけてすまないな」


「いえ、選手の方にリラックスしてもらうのは当然のことですし。こちらこそ突然お騒がせしました。それでは」


丁寧に礼をし、2人を連れて入場口とやらへと向かっていった。


ムルトは部屋に1人になり、仮面を外し、中継先を見る。


「ハルカとティアか。どちらにも頑張ってほしいが……さて、どうなる」


手を組みながら食い入るように中継を見た。





『さぁぁぁぁぁ!!時間となりました!!それでは登場していただきましょう!!』


ファンファーレが鳴り響き、片方の門が開き、煙や炎が飛び出る。


『東門から登場するのは!試合開始のゴングと共に、極大魔法を放ち、数多の参加者を葬り!見事Cブロックを勝ち抜いていきました!!氷獄の姫こと!ハルナァァァァア!!』


ハルカはいつもの装備に身を包み、観客に向かって手を振っている。

狐口面によって表情はわかりにくいが、確かに笑っているようだ。


『そして対する西門からはぁ!勇者の1人と一騎打ちをし!見事その力を見せつけた!!

骸骨嬢こと!!ティアァァア!!』


対してティアは、手を振ることも、会場を見渡すわけでもなく、ただ黙々とステージへと上がっていく。


『さぁ!美少女同士の戦いであります!!泣いても笑っても、負ければ即敗退!!

それでは気張ってもらいましょう!!皆様もご一緒にカウントダウンをよろしくお願いいたします!!

喧嘩祭り!!本選!第1回戦開始まで!!ごーー!』


「『よん!』」


「「『さん!』」」


「「「『にー!』」」」


「「「「『いち!!』」」」」


ハルカとティアが握る杖に力が入る。

2人はすでに互いを睨み合い、どう動き出すかを予想し始めている。


『始めぇぇぇぇぇぇ!!!』


「「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」」


はち切れんばかりの歓声が会場を埋め尽くす中、戦いは始まった。

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