骸骨と戯れる3/6
その後のだるまさんがころんだも、スキルや魔法による妨害と競争で盛り上がりを見せたが、ラマが執拗にムルトを攻撃したことにより、ハルカの怒りが爆発し、あろうことか王城の敷地内で極大魔法を発動。修練場だからよかったものの、ハルカとラマはムルト達によって叱られたが、飄々とするラマの態度にまたもや爆発寸前、ラマを追い回すうちに、何やら浮かんだようだ。
「そうだ!次はドロケイをしましょう!」
「「「ドロケイ?」」」
異世界組はその単語を知らなかったが、だるまさんがころんだに代わる遊びなのだろうと言うことは理解した。
「泥棒と警察……自警団に分かれて鬼ごっこをするんです!」
ハルカは先ほどのようにスラスラとルールの説明をし、ミナミやジャック達も所々補足をし、その場の誰もがルールを理解していく。
「なるほど。逃げるにしても、ここでは狭いだろう。範囲はここの十傑用宿舎内外、本城に入るのは無し。というのはどうだ?」
「庭に出てしまってもいいんですか?」
「大丈夫なのではないであるか?僕らもたまにお手合わせなどをしてるのである」
「ポルコの言う通りだが、あまり派手な魔法を使わないでくれよ?ハルカちゃん?」
「は、はい。ごめんなさい」
「俺の権限で、訓練だってことで宿舎の中でも魔法の使用は可能にするが、壁や家具なんかは絶対に壊さないように」
ジュウベエも中々乗り気なようで、ドロボウ側の逃走範囲や、使用可能魔法の種類を限定していく。
攻撃魔法は絶対的に使用不可能だということをハルカとラマ、ティアとコットンに入念に確認し、補助魔法、強化魔法、防御魔法などの使用を可能にする。
逃走範囲は、十傑宿舎、来賓者用東棟の内外、そしてその庭周り、王城内の東と南の範囲に限定された。部屋の中や食堂に逃げ込んでもよいが、鍵の施錠は禁止、建物内の壁や家具を傷つけることは禁止された。
「ジュウベエさん、さすがに建物の中を壁や家具を傷つけずに逃げたり捕まえるっていうのは……」
「いやまてミナミ、程よい縛りがあってこその遊びだ。我は大賛成だ」
「儂もガロウス殿に賛成じゃのぉ。儂が小さい頃は何もない空地でしか走り回れんかった。こんなに広い場所で隠れ鬼ができるのは嬉しいことじゃ」
「ミチタカさん……」
「そうだぜミナミ!異世界で遊びのために魔法を使うなんて今度はいつくるかわからないんだぜ?今遊ばなきゃ損だぜ損!」
「大丈夫ですよミナミちゃん……何かあったらジュウベエさんが責任をとってくれますぅ!」
「サキ……」
ミナミは皆が何かしでかさないか心配なようだが、この中に問題を起こすような人は誰一人いないことは知っている。ハルカはもちろんのこと、ラマもこの国の不利益になるようなことはしたことがない。ムルトに固執しているのは少々問題だが……。
「うぅむ。サキの言う通りだ!何かあれば俺とコットン、ラマ達で責任をとる!安心せい!」
「えー!私嫌よ!」
「ジュウベエさん、僕も嫌なのである……」
「よし!それではさっそくドロボウとジケイダンに分かれようではないか!」
ジュウベエはさらっと勇者以外の十傑を巻き込み、何かあった時にとらされる責任を少しでも軽くしようとした。ラマやポルコは嫌がったが、コットンもミナミのようにこの中に問題を起こすものなどいないと知っているので、安心して遊びに専念できる。ラマが少々心配のようだが……。
★
「よぉし!!我が全員捕まえてやるぞ!!」
「ガロウス、どっちが多く捕まえられるか勝負する?」
「ぬわっはっは!望むところだぞ!レヴィル嬢!」
「ふむ。皆どこに隠れるのだろうな……ムルトはどう思う?」
「俺は全然わからないな。だが、皆それぞれ得意な魔法を活かせる場所に潜むのではないか?すぐに逃げ出せるように」
「そうですかぁ?私は皆逃げ回って遊びたいと思うので、広いところにいると思います。ハルカちゃんとか、ムルトさんに追っかけてほしいんじゃないですか?」
「追っかけられたい?身を隠して逃れられるのならば、それが一番なのではないのか?」
「うふふ。色欲を理解しても、そっち方面はまだ鈍感なんですね」
「む?鈍感?何がだ?」
「うふふ。なんでもないでーす」
大空に浮かぶ太陽が、爛々とムルト達を照らしている。ムルト達の後ろには、サキが大きな木で作ったテントのようなもの。これがドロケイの檻なのだが、捕まったドロボウが逃げ出しやすいように柵のようなものはない。
「待て待て、お前らはわかるが、なぜ俺がこっち側なんだ?」
「む?何がおかしいのだコットン?」
腕を組みながら質問するコットンに、隣に立っていたムルトが答えた。
「いや、ドロケイの分け方だが……」
「コットン何言ってんの?チーム分けはモンスターVS人間でしょ?」
「いやいやレヴィア様、俺は骨人族という亜人で……」
「なぁにを言っている!貴様は立派なモンスターではないか!ぬわっはっはっは!!」
「い、いや」
「うふ。コットンさんもムルトさんやティングさんみたいに立派な不死族じゃないですか。仲良くし・ま・しょ♡」
キアラがそう言ってウィンクをし、コットンは諦めたように項垂れている。
そう、ドロケイのチーム分けはモンスターVS人間だ。
捕まえる側のモンスターチームはムルト、レヴィア、キアラ、ガロウス、ティング、コットンの五人。
逃げる側の人間チームはミナミ、サキ、ジャック、ハルカ、ダン、シシリー、ゴン、ティア、カグヤ、ハンゾウ、ミチタカ、ジュウベエ、ラマ、ポルコの十四人。
ムルト達は圧倒的に人数が少ないが、それを補うために十体までムルトとティングは召喚魔法を使用することが許さている。逆に、同じく召喚魔法の使えるティアは、逃げるとき以外に召喚魔法を使うことを禁止された。そして、仮に召喚したスケルトンが人間チームを捕まえたとしても、それは捕まえたとは認められず、召喚者本人か、モンスターチームの誰かがしっかりとタッチしなければならない。
「タッチの有効時間は五秒だったか」
「あぁ。そうだ」
「ふむ。簡単に逃げられては敵わんからな。骨の一、二本は我慢してもらうか」
「ガロウス、手加減しなさいよ」
「ぬわっはっはっは!冗談だ!」
「笑えないぞ……」
ムルト達は雑談をしながらも、目の前でサラサラと流れ落ちる砂時計を凝視している。
「三分というのは長いものなのだなぁ。滾って仕方がない」
「あんた、絶対に物とか壊さないでよ?」
「わかっておるわかっておる。このドロケイとやらで魔法は使わん」
「ならいいけど」
「お、あと少しだぞ」
ムルトが皆にそう声をかけると、砂時計の中の砂が完全に落ちきった。それを見たガロウスはパキパキと首や手を鳴らし、レヴィアも柔軟を止めて立ち上がる。
「ふははは!!人間狩りといこうではないか!!」
ガロウスが、諸手を上げながらそう言い放った瞬間、濃厚な殺気を辺りへ充満させた。
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