骸骨は避ける

「ぐへへ、どこに逃げるっていうんだい?お嬢ちゃんたちぃ?」


「お頭!この剣士の女は食っちゃってもいいんですよねぇ?」


「あぁ、お前らの好きにしていいぞ」


「よっしゃ!お頭優しいー!」


「だが。そこのお嬢ちゃんに傷はつけるなよ?売り物なんだからなぁ」


「わかってますよぉ〜」


下卑た笑みを浮かべる男5人を前に、一歩も引くことのない女性の剣士。その後ろには13歳ほどの女の子が震えながら立っていた。


「お嬢様!早くお逃げになってください!」


「嫌よ!リカを置いてはいけないわ!」


「大丈夫です!私は後から追いつきます!」


「嘘!そんなの嘘よ!」


「お嬢様!早く!」


「逃すわけねぇだろうがよぉ!」


男が女性に斬りかかる。女性は右腕を切られ、動きが悪くなっていた。男は油断することなく力を加え、女性の腹を蹴飛ばす。


「リカ!」


「お嬢様……早く。早く逃げてください……」


「嫌よ……私、リカを失ったら……リカ、私を、私を1人にしないで!!!」


少女の絶叫が静かな森へ響く。その声を聞きつけたのか、静かな森の中からはなんとも恐ろしく、だが優しい、青い恐怖が迫ってきた。





気づけば体が動いていた。


森から飛び出し、目の前の男を上段から斬り捨てる。


「な、なん」


すぐさま隣の男の足を下段から切る


「ぎゃっ」


体勢が崩れ顔が地面に近づく、その先は剣をそっと置き、その落下とは逆に高く切り上げ、その男も殺す


「な、何が起きてる……!」


「お、お頭ぁ」


「何を怯んでる!相手はスケルトン1匹だぞ!いけ!」


「は、はいぃ!」


残り3人のうち2人が真っ直ぐ突っ込んでくる。それに合わせ俺も走り出し、2人の男の横を通り過ぎる。

後ろから、どちゃ、という音を聞き、何が起こったかを確認する


「なっ!……ま、待て、お前、な、なにが目的なんだ!いきなり襲ってきて!なんのつもりなんだ!」


目的か……俺にもわからなかった。体が勝手に動いた。のだろうか、少女の1人になりたくないという願いに自分を重ねてしまったのだろうか……何かを失うのは怖く、悲しいものだと、俺は知っている。

なら、まだそれを失っていない少女に、俺と同じ気持ちを知ってほしくなかった。のかもしれない


俺はその男の問いに答えることはなく、首をはねる。剣についた血を払い、鞘に収めると、俺へ声が飛んでくる


「あ、あなたは……」


「いけません!スケルトンです!しかも相当の手練れです」


「で、でも彼は私たちを助けてくれたわ!」


「次は、私たちです……」


「……っ!」


(あぁ……またこの目か)


恐怖して俺を敵視する目。

1度目はスコルピオンから助けた少女

2度目は、殺せなかったエルフ

そして3度目、悪漢から助けた少女


女性の剣士はしゃがみながらも剣を構え、少女の盾になろうとしている。

少女は庇われながらも恐怖した目で俺を見ている……


俺はしばらく睨み合っていたが、はっと我に返る。


(逃げよう)


俺は、悪漢の身につけていた外套を拾い、それに身を包み森へ向かって走った。


「あ!待って!!」


また、逃げた


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