骸骨は悩む

もうどれだけ歩いただろうか。何も考えず、あてもなく前へ、前へと歩き続けた


(俺は……)


何かを考えようとすれば、蘇るのはあの目、畏怖の篭ったあの眼差し。


(なぜあんな目を向けられねばならないのか!)


俺はモンスターなれども、人を助けた。

俺は別に人を憎んでもいないし、嫌いでもない。困っていれば助けるのは当然のことのはずだ。なのに


(スケルトンだということだけで)


なぜ人間は、ああも冷徹になれるのか。


「……もう、こんな時間か」


気づけば、あたりは真っ暗になっていた。とうに陽は沈み、月の光が辺りを優しく包み込んでいた。


「……月を、見よう」


俺の心の安らぎは、もはや月だけになってしまった。

いや、元々月だけが、俺の心の安らぎなのだ。


「開けた場所はないものか」


息の詰まるような暗い森。ただでさえ暗い気持ちになっているのだ。

しばらく歩き、木の少ない場所を目指す。

そして辿り着いた場所は、湖だった。

風の吹いていない湖は、波紋ひとつなく、空に浮かび上がる月をそのまま写していた。


「美しいな」


いつもは見上げるばかりだった月を、今日は自分より下で見ていた。

近くの大きな木へ腰を下ろし、悪漢から拝借した外套を身につける。


「やはり……月はいいな」


見上げれば青い月が、目線を下ろせば湖に映る青い月が、顔をまっすぐ向ければ、その両方を見ることができる。


「これが、一度で二度美味しいというものか」


1人でその絶景を楽しむ。

心の安らぎを生むのはいつだって月だった。

俺の心を癒すのはいつも月なのだ。


俺は何かに縋るように、月へ手を伸ばす


「アルテミス様……俺はいったいどうすれば……」


月は、アルテミス様は、俺に何も言ってはくれない。

俺は、胸のペンダントを固く握った。



★★★

名前:ムルト

種族:月下の青骸骨アーク・ルナ・デスボーン

ランク:C

レベル:27/50

HP1240/1240

MP600/600


固有スキル

月読

凶骨

下位召喚

下位使役

魔力操作

憤怒の罪




スキル

剣術Lv3

炎魔法Lv6

風魔法Lv1

暗黒魔法Lv3

危険察知Lv6

隠密Lv10


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター、挑戦者、嫌われ者

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