骸骨は調べる

俺は数日間、ギルドで依頼を受けては、一日中森に篭り、陽が落ちる頃には宿に戻り、月を見ながら魔力循環をし、時間を潰す。ということをしていた。


この間にわかったことがいくつかあった。


まず、この魔都の周りには基本的に強いモンスターしかおらず、俺の冒険者ランク(E)より下の依頼はなかった。最低でもランクCしかなく、本来なら受けることのできない俺だったが、モンスター討伐依頼の履歴が、冒険者カードに残っていて、そのモンスターを倒せるならば、ということでC依頼を受けることができていた。


俺は1日に一回の上限数の依頼3つを受け、そのまま森にこもる。

次に、俺の使える魔法についてだ。

炎魔法、これは火魔法をさらに強化し、魔法の幅が広がっていた。風魔法は出力的には火魔法と同じほどだが、使い方次第で色々なことができた


そして、何気なくやっていた魔力循環だが、これを身体の中ではなく、身体の表面で循環させ、それを定着することで、身体強化ができることに気づいた。これは、冒険者ギルドに入る者たちが常に纏っていたものだった。あの場で身体強化を常にしているものは、隙のない、手練れだということがわかる。


そして一番の問題、暗黒魔法だ。

何もしていないのに既にLv3になっていた。

簡単に表すのであれば、真っ黒な魔力を使って魔法を使う。ということだったが、これが恐ろしく強力だった。

ファイヤーボールを打つ要領でダークボールなるものを使ったのだが、目の前の木を軽々と破壊した。

ファイヤーボールであれば、木の表面が焦げる程度の威力なのに対して、ダークボールはそれを塵も残さず真ん中からぱっくりと消し去ったのだ。


戦略の幅は確かに広がったが、使い所や使い道を間違えれば、それはたくさんのものを消すことになる。要注意だ。


その日も大熊犬グリズリードッグを討伐し、ギルドに戻っていた。


「はい。それでは、素材と依頼報酬合わせて銀貨15枚になります」


「あぁ。感謝する」


「いえいえ!こちらこそ!大熊犬は繁殖力が高いのでこうして間引いてもらえるのは助かるんですよ!素材も活用できますしね!」


俺はこの数日で大熊犬を10頭以上狩っていた。Bランクのモンスターだったが、2匹までは同時に相手どることができたが、3匹を相手にした時は正直肝を冷やした。肝はないのだが……


俺は宿に戻り、タダで泊まれる期間を過ぎたので、追加で10日分の金を払った。

いつまでも無料と言われたが、さすがにそれは気がひけたのだ。

部屋に入り、有り金の確認をしておいた。


中々稼いだので、これでしばらくは安泰だろう。食事は不要な身なので食費がかからないのが強みだろう。

剣も変えないし、ワイバーンの外套も丈夫で長持ち。買ったのは大熊犬を入れるようの袋ぐらいだろうか


そしてステータスだ


名前:ムルト

種族:月下の青骸骨アーク・ルナ・デスボーン


ランク:C

レベル:39/50

HP1800/1800

MP810/810


固有スキル

月読

凶骨

下位召喚

下位使役

魔力操作

憤怒の罪




スキル

剣術Lv3

炎魔法Lv6

風魔法Lv3

暗黒魔法Lv3

危険察知Lv6

隠密Lv10

身体強化Lv4

不意打ちLv6


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター、挑戦者、嫌われ者、人狼族のアイドル、暗殺者



Bランクのモンスターを常に狩っていたので、レベルの伸びは好調であった。

新たに身体強化と不意打ちというスキルが増え、称号にも暗殺者、というものがついている。

補正はすごくいいのだが、見た目的にこれは悪い。と思う。





そして翌日、俺は陽が程よく上がり、街に活気が満ちる頃、いつものように依頼を受けるためギルドに来ていた。


(ふむ。今日も大熊犬でいいな。オルトロスやバジリスクというのは見たことも聞いたこともない。今日は早めに戻り書庫にでも行くか)


ギルドには書庫という場所があり、そこにはたくさんの書物や、モンスター図鑑、歴史書などが貯蔵してある。図書室、と呼ばれているらしい。


「今日もこれを頼む」


「はい。大熊犬の討伐ですね。冒険者カードをお預かりいたします。……今日は1頭なんですね」


顔馴染みになりつつある職員が、依頼の紙を受け取りつつ、そう言った。


「あぁ。早めに終わらして書庫にでも行こうかとな」


「書庫と呼ぶには小さいですが……勉学は良いことです。それでは気をつけていってらっしゃいませ!」


俺は手続きを終わらせ、森へ向かう。

いつものように隠密で気配を消しつつ、大熊犬を探す。

大熊犬を見つけると、背後に周り、剣を抜き、ゆっくりと後ろから近づいていく……

大熊犬の真横まで近づき、剣を喉元へ突き刺し、左手を首の後ろに回し、剣を貫通させ、腕の骨の間にいれ、ギロチンの要領で喉を切り裂く。大熊犬の頭は首の皮で繋がっている状態にし、その息の根を止める。

不意打ちというスキルのおかげで補正がつき、忍び寄り攻撃を仕掛ける時、どこへ攻撃をすれば効果的なのかが直感的にわかるようになるのだ。


「ふぅ。今日もこれで終わりだな」


俺は軽く血抜きをするために、地面に穴を掘り、大熊犬を持ち上げ、首元から血を流す。

あまり長いことやっていると、血の匂いを嗅ぎつけたモンスターがやってくるかもしれないので、すぐに袋に詰め帰路につく。


街に帰る時も隠密を使い、危険察知を極限に高め、迅速に帰る。


特に問題もなくギルドにつき、報酬をもらい、そのまま図書室へといった。

様々な本があるが、やはり今一番大事なのはモンスター図鑑だろう。

モンスター図鑑を手に席へ向かい、パラパラと捲る。

パワフルボアや、グリズリードッグ、ポイズンスコルピオンなど、俺が今まで戦ったモンスターの情報を見る。


(スコルピオンの弱点は関節じゃなくて腹だったか……腹の下に回り込むことができれば楽に勝てたのかもな…)


俺は頭の中で次出くわしたらどうすればよいかを、想像しながら、見続ける。


(自分を知ることは大事だな)


俺は何気なくスケルトンの項目を開き、読んでいく


スケルトン 不死族

ランク:G


動く白骨死体、生息域は世界全土に広がる。

白骨化したものが、魔素や地中の魔力によってモンスター化したもの。戦闘力はほぼ皆無で、1対1の戦闘なら苦戦することはないだろう。

基本的に群れで行動しており、ダンジョン内でポップしたスケルトンはダンジョン内を徘徊している。

上位種にスケルトンナイトやスケルトンライダーが存在する。


派生:スケルトンドラゴン、エルダーリッチ


特筆事項

漆黒の悪夢ブラックナイトメア

846年に突如、王都マルタに現れ、破壊の限りを尽くし、一つの国を消し去った。

被害者数は、国民30万〜、冒険者、推定2000〜

多数のSランク冒険者やAランク冒険者を犠牲にして討伐することに成功。

漆黒の悪夢はエルダーリッチと思われていたが、当時の冒険者達はスケルトンメイジと呼んでいたことがわかった。

漆黒の悪夢は黒色のスケルトンの姿をし、ユニークモンスター、あるいはネームドモンスターと推測される。

今まで発見されたユニークモンスターのスケルトンは、黄、紫、緑、黒など様々なものがある。そのどれもが強力な力を持っていたが、強くなる前に討伐することができた。

漆黒の悪夢を再び誕生させぬよう、異色のスケルトンは優先的に討伐される。


関連:骨人族



(異色のスケルトン……か)


ボロガンの街で受付嬢が俺を見てそう言っていた気がする。


「おい」


俺は異色のスケルトンということなのだろうか、だが、この関連の骨人族、多種多様の色をしているようだが……


「おい、聞いているのか」


読めば、この多種多様の色は、染料で骨を染めたものらしい。オシャレの一貫ということだろうか。


「話を聞け!」


「あの張り紙を見ろ、図書室では静かに。だそうだ」


俺の後ろにはフードを被った男が立っていた。フードの上からでもわかる。体は痩せ細り、なんとも弱々しく見える。俺も全身骨でできているから、痩せているというかなんというか……


「悪かったな、。それよりお前、同族か?」


「同族?とは?」


「お前は俺と同じ匂いがする。少し違うようだが、これでわかるか?」


その男はフードを少し外し、その暗闇の中の顔を見せてくる。

そこには恐ろしい髑髏があった。

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