骸骨を蝕むモノ


「ヌンッ!!」


打撃、斬撃、打撃、斬撃、斬撃、斬撃、打撃。

先ほどから、首狩りの悪魔騎士がムルトに向かってしている攻撃だ。

だが、その全ては今のムルトに効いてはいなかった。


(仮面ガ変ワッタダケデ、ココマデ変ワルモノナノカッ!)


心のうちで、首狩りの悪魔騎士は焦っていた。

ムルトはその攻撃を左手の宵闇、右手のモブの戦斧、そして手足全てを使って防いでいる。砕けることもなければ、切り落とされることもない。


今のムルトは、憤怒の魔力、怠惰の魔力を使って体を強化していた。

自分の魔力で身体強化をし、憤怒の魔力で攻撃力の底上げ、怠惰の魔力で、防御力の底上げをする。部分的にその強化を行なっていたのだが、いつのまにかその2つが混じり合い、ムルトの体と仮面は紫色に染まっていた。


「はぁっ!」


モブの戦斧が首狩り騎士の側頭部を狙う。だが、それは右手に持っているフランベルジュで簡単に受け止められてしまう。


攻撃は先ほどから防がれていたし、防御も砕けたり仰け反ることがなくなっただけで、スピードが上がったわけではなく、攻撃の手数は少ない。


「ソレデワ、イツマデヤッテモ勝テナイゾ?」


内心焦ってはいるが、首狩りの悪魔騎士は、ムルトを煽る。


「そうかもしれないな。だが、俺は1人じゃない。やれ!!」


攻撃を受け止め、鍔迫り合いをしている中、ムルトが大きな声でそう叫ぶ。

首狩りの悪魔騎士の側頭部に、鞭が炸裂する

ラマの一撃だ。だが、その攻撃は頭蓋骨を粉砕することはできない。

首狩りの悪魔騎士の顔は、ムルトが繰り出した渾身の一撃で、鼻からしたを粉々に砕いており、見るもおぞましい顔つきとなっている。


「フハハハハ!!効カヌワ!!」


ムルトを壁としながら蹴り、距離を取る。

悪魔騎士は、辺りを見渡す。

戦況は、すこぶる悪い。


自分らのアンデッドが、次々と殺されている。

アンデッドにとって、光魔法は天敵とされている。聖なる力に、アンデッド達は太刀打ちできないからだ。その魔力を浴びただけでも動きが鈍るし、攻撃をもらってしまえば、容易に灰になってしまう。

そう考えると、この国はアンデッドが攻め込むには適さないといえよう。

だが、エルダーリッチが無限にアンデッドを召喚し、MPを削りながら、そういったもの達を殺そうとしていた。だが、そう上手くはいかなかった。


聖国の人間は、まずエルダーリッチを倒すことを優先した。光魔法を使えるもの達が、低ランクのアンデッドモンスターを食い止め、聖魔法を使えるものが、高ランクのモンスターを倒しながら進んでいく。

そして、その先頭に立つのはカグヤ

数少ない聖天魔法を使える者で、ムルトとラマが悪魔騎士を抑えている間に、エルダーリッチに挑んでいた者たちへと合流した。


エルダーリッチは、聖天魔法の前に無残にも敗れ、今、聖国の住民たちは協力をしながら残りのアンデッドを殺して回っている。


(クッ、残リ少シカ……)


「ラマ様!」


「ラマさん!」


2人の男女が、ラマの近くへと来て、戦況の報告をした。


「そう。そっちはもう大丈夫そうね。あの冒険者と協力して、あの親玉を倒すわよ!」


「「はい!!」」


4対1


悪魔騎士にとっては、不利とも言える人数差だろう。

このまま長く戦えば、確実に自分が負けることはわかっている


(ソロソロ、本気・・オ出スカ)


悪魔騎士は、自らの王より授かった剣と、それに纏わりつく魔力を見る。


「行くぞ!」


「はい!」


ラマに合流した、五防聖の2人は、見事な連携を使う双子の兄妹だ。2人で戦えば、ゴンより強い。その2人は、挟み込みように悪魔騎士へと向かっていく。


「っ!待て!!」


ムルトはその揺らめきに気づいた。

自分も同じ系統のものを扱っているからか、それとも、モンスターとしての本能が教えてくれたのかは、ムルトにもわからないが、悪魔騎士はそのチャンスを見逃さない。


「喰ラッテ糧ニシロー暴食魔剣マンイーターー」


悪魔騎士の動きがさらに早くなり、両側から迫り来る兄妹を、その一太刀で葬り去った。


「あ、あが」


「え、あ、ぇ」


兄妹は地面に激突する前に、血の一滴も残さず、その剣に喰われたように見えた。


「マダ、終ワラヌゾ」


血の一滴すらも剣の表面にはついていない。その一滴すらも、その剣は喰ったのだ。そしてわかる。あの兄妹を食ったぶん、剣も、悪魔騎士も強くなっている。


楽しく・・・、なってきたな」


ムルトの仮面に浮かび上がった口が、嬉しそうに釣り上がる。


ムルトは魔力を纏い直す。

赤と青だけではなく、薄っすらと紫と黄色が混じっていることに、ムルトは気づいていない。

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