骸骨は祝福される

「それでは、祈りが終わりましたら声をかけてください。目を開けますので」


ビビアンの声が聞こえた。どうやら礼拝堂に戻ってきたようだ。


「あぁ」


斜め後ろでは、ビビアンが膝をつき目を瞑り祈っている。

俺は傍に置いた仮面をつけ、フードをかぶる。


「もういいぞ」


「あら、お早いんですね」


「あぁ。祈りたいことは短かったからな」


「そうですか。それでは戻りましょうか。あら、スカルヘッドさん、その胸元の……」


「ん?」


そう言われ、胸元を指さされる。そこには銀のチェーンに、青い月のペンダント。

アルテミス様がつけていたものと同じものがいつの間にか首にかかっていた。


「いつのまに買ったんですか?ほら、私たちとお揃いですよ」


そう言うと、ビビアンは服の中から身につけていたと思われる、同じようなネックレスを取り出す。だが、月の部分が俺とは違い、暗い青だった。


「あぁ。そうかもな」


「?とりあえず、行きましょうか」


そのままビビアンに連れられ、エントランスへと戻る。アルテミス様と十分に話もしたし、この教会への用事はもうない。


(今日は依頼をこなして金でも稼ぐか……)


「ビビアン、世話になったな。実に有意義であった」


「いえ、そう言われると嬉しいです。またいらしてくださいね。スカルヘッドさん」


「あぁ。そういえば……私の本当の名前を教えていなかったな。スカルヘッドは通り名で、本当の名前は、ムルト。という」


俺はなんとも言えないような声で、自分の名前を初めて名乗った。

なんとも愛しく、良い響きなのだろうか……


「ムルト、さんですか。はい。それでは。また」


ビビアンも俺の名前を繰り返し呼び、微笑んでくれた。


「あぁ。また」


短く返事をし、教会を後にしようとした時


「お待ちになってください」


知らない人物の声が聞こえた。ビビアンのものではない。


「シスターヴァイオラ様、いかがなさいましたか?」


そこには、歳をとった女性が立っていた。歳をとったといっても、顔に少しシワがあるだけ。まだまだ若さを失ってはいない。


「そこのフードの男にお話があります」


「話……とは?」


「あなたの名前は?」


「ムルトというが」


「ムルトさん、別にあなたの不利益になる話ではありませんよ。どうぞこちらへ」


シスターヴァイオラに招かれ、後ろをついていく。ビビアンはヴァイオラに同行を止められていた。心配そうな顔でこちらを見つめるビビアンを安心させようと、俺は手を振った。


「それでは。お話の件ですが、神託が下っています」


ヴァイオラに連れてこられた部屋はしっかりとした作りの執務室。のようなものだった。


「神託……とは?」


初めて聞く単語だったので、俺は聞き返した。


「月の女神、アルテミス様からの言伝となります。あ、自己紹介を忘れていましたね。シスターヴァイオラ、この教会の責任者をやっています」


「改めて、ムルトという。冒険者だ」


「アルテミス様から話は聞いております。あなたが、モンスターだということを」


「なに?」


思わず睨みつけてしまう


「ご心配はありませんよ。私は人族至上主義でもなければ、モンスター撲滅過激派でもありませんから」


「ふむ。ならば……隠す必要はないな」


俺は仮面とフードを脱ぎ、骨の顔を見せた。


「で、私になんのようだ」


「そうでしたね。少々お待ちください」


ヴァイオラは俺の顔に怯みもせず、席を立ち本棚のほうへ歩いていくと、一つの本を引き抜き、違う場所に差し込む。すると、何かが噛み合うような音が聞こえ、本棚が横にずれると、中から金庫が出てくる


(ふむ、これが隠し金庫か……)


その金庫から青い液体の入った瓶を取り出す


「これは月の霊薬、と言われるものです。

アルテミス様の神託はこうです。『真の月のネックレスをしているムルトという男に、月の霊薬を差し上げなさい』とのことです」


「ほう。これが月の霊薬?」


「えぇ。これをあなたに。と、頭からかけてください。とのことです」


「むむ。なんだか知らぬが、わかった」


俺はその霊薬を受け取り頭からかぶる。

霊薬は俺の骨に吸い込まれるように染み渡り、体が光り始める


(これは……進化?!)


光はすぐに収まった。


「お話はこれで全てです。そしてそのネックレスは私たちのものとは違う、本物の月のカケラでできていますので、大事にしてください」


俺のネックレスは、どうやら本物の月のカケラでできているらしい。ちなみにシスターたちが身につけているものは月のカケラではないらしい。


その後、俺はそのまま教会を後にし、ギルドへと向かった。

休憩所で少し落ち着いてから依頼を受けることにしたのだ。


(さて、進化もした。ステータスの確認をしよう)


名前:ムルト

種族:月下の青骸骨アーク・ルナ・デスボーン

ランク:C

レベル:1/50

HP666/666

MP430/430


固有スキル

月読

凶骨

下位召喚

下位使役




スキル

剣術Lv3

炎魔法Lv5

風魔法Lv1

暗黒魔法Lv1

危険察知Lv5

隠密Lv10


称号

月を見る魔物、月の女神の寵愛、月の女神の祝福、月の使者、忍び寄る恐怖、心優しいモンスター

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