骸骨と食レポ
木々の隙間を抜けると、そこには巨大な城壁があった。
どれほどの高さがあるかはわからないが、巨人種であるサイクロプス10人分、それ以上はあるだろうか、30m以上はある。
「すごい大きい壁ですね」
「大きいだけではないな。魔力を感じる」
魔力に関してはハルカも気づいているだろう。大きく頑丈な上に、さらに魔法で強化をしているのだろう。
壁から見える建物のようなものもあいまって、要塞に見える。
「あれが入り口でしょうか?」
そこには、城壁に負けず劣らずの巨大な門があった。材質は鉄か鋼かわからないが、容易に突破はできないだろう。
「まるで砦だな」
そんなことを考えていると、馬車や冒険者が集まっている場所を見つける。
よく見ると、大きな門の下の方に、小さい門が設けられているようだ。
そこで受付をしているのだろう。
列に並び、先頭を見ていると、面白いものが見えた。
馬車を動かしている商人と思われる人物が道の上に乗ると、1人でに道が動き、それらを運んでいく、かと思えば、普通の冒険者のような男たちは、馬車が行った方向とは逆の方に道が動いていく。
「なんだあれは?」
「面白いですね」
魔法的な何か、それか魔術的なものなのだろうか、さっそく機械都市にやってきたという実感が湧く。
そして受付は俺たちの番になる。
「身分証を……Dランク冒険者ですね。入市税は2人で銀貨2枚になります。一般区画、鍛冶市などは右側の
俺たちは銀貨を払い、道路と呼ばれた場所へ行く。そこには看板が立っており、
商業区画←→一般区画
と書いてあった。俺たちは右の道路に立つ、すると、ガコン、という音が鳴り、道が1人でに動き出す
「なんだこれは……」
「すごいですね……私の前世でも空港などで見たことはありますが……」
「空港とは?」
「飛行機が出るところなんですけど、」
「飛行機とは?」
「ひ、飛行機っていうのは……」
俺は一般区画に向かう道の途中、短くはあったが、またハルカの世界の話を聞かせてもらった。
魔法を使うことなく飛ぶ鉄の塊があるらしい。ジェットがどうの、ファーストクラス、ビジネスクラスという言葉が出てきたが、よくわからなかった。
★
「わぁ〜すごいですね!!」
ハルカが目をキラキラさせながら驚いている。道路を抜け、恐らく一般区画に入ったのだろうが、そこがすごかった。
レンガ造りの建物が立ち並び、豪壮な雰囲気を醸し出し、様々な場所から、小気味のよい、カンカンと剣を叩いているような音が聞こえてくる。
「まずは宿を探して、それから街の探索をしよう。素材を売ってから街を見て回ろう」
「はい!」
宿は、街に入って大分奥の方にした。
この宿を選んだのには、理由がある。
宿を出て真っ直ぐ行くと、一般区画の中でも賑わっている酒場や道具屋などが多いこと、そして、宿を出て左に真っ直ぐ行き、少し行くと、鍛冶区画がある。近いのだ。
鍛冶区画とは、一般区画にある鍛冶屋とは違い、レベルの高い鍛冶師がいるという。一般区画にはドワーフの他に、人間の鍛冶師もいるが、鍛冶区画にはドワーフの鍛冶師しかいないという。大金を払って装備を整えるのなら、鍛冶区画に行くのが普通らしい。
「とは言っても、一般区画でも一級品の武具を売っているところはあるがな」
「そうなんですね!」
これらの話は、すべて入市の時、受付で聞いたことだ。この宿を紹介してくれた受付の男には感謝している。
俺たちは荷物を降ろし、とは言っても、カモフラージュの荷物を部屋に降ろしただけだが、次はギルドへと向かうことにした。
ギルドは宿をから少し遠かったが、それでも気にならない程度の距離だ。
ギルドには隣接されている酒場兼休憩所があり、そこにはたくさんの冒険者がいた。
装備を見る限り、初心者、と言われるレベルの人間はいないだろう。少なくとも、皆Dかそれ以上。この街で武具を揃えたのか、武器や防具はいいものを着ている人間が多い。
「買い取りを頼みたい」
「かしこまりました。素材をそちらのトレイに出してください」
俺たちは道中で狩りをしたモンスターの素材を出した。残念ながらブレードディアを見つけることはできなかった。依頼の有効期限はあと2週間あるので、近々また森へと向かいたいと思っている。
「合計で金貨1枚と銀貨2枚です」
「あぁ。感謝する。それと、これなのだが」
俺は、洞窟の入り口で知り合った職員から渡された推薦状を出す。
「昇格試験はいつ行われているのだ?」
「はい。昇格試験は明後日に実施されます。エントリーは前日までですので、今日エントリーしますか?」
「あぁ。頼む」
「それでは、お二人で、受験料金貨2枚になります」
「高いな」
「ははは、腕の足りてない冒険者さんが何回も挑めないように料金設定を高くしているんですよ……高ランクの方達はギルドの財産なので。
お二人は推薦状を持っているので、2時の実戦試験から参加となります。当日はこの受験票を持ってお越しください」
「あぁ。感謝する」
俺たちは今もらった金貨と、懐からもう1枚金貨を取り出し、受付へと支払う。
受け取った受験票には、7番と8番と書いてある。少なくともあと6人は受験者がいるということだ。
俺たちは受付にオススメの食事処を教えてもらった。
鍛冶区画の近くに、ほっぺが落ちるほど美味しい場所があるらしい。俺に落ちるほっぺはないが、俺達はその場所に行き、少し遅めの昼食をとることにした。
「デミグラスオークハンバーグひとつください!」
「はいよ。あんたは?」
「私は……そうだな、ハルカ、何を食べたい?」
「そ、そうですね……じゃ、じゃあコカトリスのチキンステーキ〜彩り野菜盛り合わせ〜を……」
「私はそれで頼む」
「はいよ。デミオークとコカステ入りました〜!!」
「「ありがとうございま〜す!!」」
活気溢れる店内には、様々な者たちがいた。
俺たちのような冒険者の他に、ドワーフや獣人族、1人だけだがエルフもいる。
「ありがとうございます……」
「俺だけ何も食べないとそれはそれで怪しいからな。ハルカには美食があるのだ。それを伸ばそう」
「ムルト様の分までしっかり食べます!」
「あぁ。それにしても……この店は女がいないな」
店員はすべて筋骨隆々の男ばかり。
厨房はわからないが、目に入る中に、ハルカ以外に女はいない。
「ほっぺが落ちるほど、と言っていたので、女性が多いと思っていましたが」
「あぁ。どうやらここにいる女性は、ハルカだけなようだな」
店内には、喧騒が絶えない。だが、各々のテーブルに置かれている肉料理はとても美味しそうだ。
少しすると、注文した料理が運ばれてくる。
「お待たせしましたぁ!コカトリスのチキンステーキと、デミグラスオークハンバーグです!」
目の前に置かれた料理は、湯気が立っており、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。
チキンステーキは、皮に良い焦げ目が付いており、未だパチパチと油が音を鳴らしている。デミグラスハンバーグは、デミグラスソースというものが、なんとも濃厚な味をしており、ボリュームがある。匂いだけでそれがとてつもなく美味しいと思えるものだと、ハルカが言う。
「それでは、いただきます……!」
ゴクリ、とハルカが喉を鳴らし、ナイフとフォークを手に取る。
デミグラスハンバーグは、ふわり、と音がしたかと思うぐらいナイフがするりと入っていき、簡単に切れる。
それを白米とともに口の中へ運び、ハルカは今日一番の笑顔をした。
「お、美味しいです!!ナイフで柔らかく切れたお肉は、口の中では弾力のある、噛み甲斐のあるお肉で、なによりその濃厚な肉汁が、口の中で暴れます!!その肉汁を宥めるのは白米!!白米が肉汁とハンバーグをまとめて仲良くさせ、その味をさらに際立たせてます!ほっぺが落ちるというよりは、舌がとろけますぅぅ」
ハルカはとても嬉しそうに食事をとる。
続いて口に運ぶのはチキンステーキ
「す、すごいです。パチパチと音を立てていた鶏皮は、弾力のあるお餅のよう。噛めば噛むほど旨味が出てきます。そして、お肉がその旨味を取り込み、さらなる旨味を引き出します。またまた白米がいい仕事をしてます。そしてこの野菜。新鮮でシャキシャキで美味しいのは当然で、口の中の感動を残しつつ、もう一度お肉たちを口に入れれば、変わらぬ美味しさが飛び込んできます!」
ハルカは俺にもわかるように、味の感想を述べてくる。匂いも味もわからないが、ハルカの笑顔と感動から、その美味しさが伝わってくる。
「ハルカが喜んでくれて俺も楽しいぞ」
「いえいえ!」
食事は金貨3枚と少々高めだったが、それを超えるほどの美味しさが確かにある。
メニューはまだまだあるので、この街に滞在しているうちは、ここに通おうと、ハルカと約束をした。
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