骸骨は惹かれる

俺は、不思議な声に導かれるように、顔をあげた。


一面の白い空間、ビビアンもおらず、先ほどの礼拝堂とは全く違う場所にいた。


「ここは……どこだ……」


思わず立ち上がり、辺りを見回す。が、何もない。


『ここは、私の心の中よ』


(またこの声だ)


不思議と心に響き、安心する声だ。


「姿を見せてはくれないか」


『ずっとあなたの目の前にいましたよ』


後ろから声が聞こえ、俺は振り返る。そこには、先ほどまではなかったはずの黒いテーブルと、黒い椅子が二脚、そのひとつには美女が座っていた。


飾り気のない黒いドレスに、ふわふわとした白い羽衣。首元には銀のチェーンに青い月のペンダント。そして、透き通るような白い肌。

その全ての装飾品も美しいが、美女その人には到底及ばなかった


「あなたは……」


『どうぞ、おかけになってください』


否応も言えぬような。吸い込まれるようなその瞳と美しさに、俺は静かに席につく。


『こうしてお会いするのは、初めてですね』


「……そうなのか?だが……不思議と初めて会う気はしないな」


自分でも、なぜそんな言葉が出てしまったのかはわからなった。


『うふふ、そうね。初めて、というわけではないわよね』


目の前の美女の笑顔は、とても蠱惑的だった。ひとつひとつの動作が美しく、不思議と見とれてしまっていた


「美しい……」


『いつものように褒めてくれるのね。本当に嬉しいわ。毎日ありがとう』


また、思わず言葉が漏れてしまった。

この美女の前では全てを吐き出してしまう。ありのままの自分でいてしまうような。俺はモンスターだというのに。


(はっ!そういえば!)


俺は自分の顔を触る。正確には頭蓋骨を。


(そうだ、先ほどの礼拝の時に仮面を外したんだ……なぜ気づかなかった。さっきからモンスターだということがバレている)


『気にすることはないと言ったではありませんか。私はあなたを知っています』


一瞬の沈黙、美女は俺を一心に見つめている。


「私も……あなたを、知っている?」


不意に溢れるその言葉。先ほどから止まらない。


『うふふ。改めまして、私の名前はアルテミス。月の女神にして、月そのもの。いつも私を慈しみ、優しい言葉をかけてくれて、ありがとう』

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