骸骨は閃いた
「その、体の一部というのは……骨。とかでもいいのだろうか……骨髄。とか……」
体の一部ならなんでもいいはずだ。それが骨粉でも……骨なのだから骨髄はあるはずだと思った。血液はないが。
「ひっ、え、えと、か、可能ではないですか?で、でもそういうのは、見たことないものでして」
受付嬢がすごく慌てている。目が全力で泳いでいる。体が震えている。どうやって骨髄を抽出するか考えてしまっているのだろうか。俺は恐ろしいことを言ってしまったようだ。だが、髪の毛も、血液も、皮膚もない俺が出せるのは、こんなところだろう。
(いや、まてよ?)
「は、はは、ははは、今のはほんの冗談だ。魔力……などでも大丈夫だろうか?」
俺は受付嬢の顔を伺いながら,そう尋ねた。
「そ、そうですよね〜!じょ、冗談ですよね!あはは……あ!魔力!魔力でも大丈夫ですよ!スカルヘッドさんは剣士だと思ったのですが、魔法剣士の方だったのですね!それでは、こちらのカードに魔力を流してください!」
(よかった。魔力でもできるようだ。あてが外れたら、本当に髄液を提供しようかと思ったぞ)
手渡されたカードに魔力を流す。するとカードが淡く光り、カードニ情報が浮き出てくる。
名前:スカルヘッド
Gランク冒険者
どうやらは登録は完了したみたいだ。
(ふむ、Gランクからの開始、ということか)
「それでは、ランクや、昇格などの説明に移りますが、よろしいですか?」
「あぁ。頼む」
「はい。それでは、まずカードの見方からご説明しますね。そこに書かれているように、名前と今のランクが表示されます。
Gランクというのは、仮登録のようなものでして、討伐系の依頼を一つクリアいたしますと、Fランクへと上がり、本登録となります。
冒険者ランクは、一番下のGから、一番上のS3までがあります。
DからC、BからA、AからSはランクが一つ上がるごとに昇格試験が行われます。ここまでは大丈夫ですか?」
「あぁ」
すんなりと理解ができる。モンスターだというのに、俺は知能が高いんだな。
我ながら笑ってしまう。
「それでは、次に約束事の確認になります。冒険者なるもの、世界の未知を探す!というのが基本となっていきます。冒険者は政治に巻き込まれることを良しとせず、また、巻き込むことも良しとしません。
そして、ここが大事なことなのですが、絶対にやってはいけないことがあります。
略奪や、犯罪行為をしないということです。
まぁ、常識の範囲内でやってはいけないことはダメ。ということです。そして気をつけてほしいのですが、ギルドは冒険者同士のいざこざに直接介入することは滅多にありませんので、揉め事などはくれぐれもお気をつけください」
「ふむ。命がとられそうになったとき、ギルドは助けてくれるのか?」
「互いの合意がない場合、犯罪が起きるなど、目の届く範囲ではお助けしますが、それ相応の処分を両方に受けてもらいます。さて、説明は以上になりますが、わからないことがあれば、定期的に講習が開かれているので、是非ご参加ください。簡単な質問であれば、窓口でも対応しております」
「わかった。あそこにある掲示板から依頼をとってくればいいのだな?」
「はい。その通りです」
「わかった」
俺は受付嬢にそう返事をし、依頼の貼ってある掲示板の下へといく。
(討伐系の依頼か……)
簡単なものではゴブリンや狼、パワフルボアといったところか。
俺は以前にも倒したことのあるパワフルボア3匹の討伐をとり、窓口へ向かう。
「スカルヘッドさん、さっそく決めたんですね。それでは……って、これパワフルボアじゃないですか」
「む?その通りだが?」
「パワフルボアはEランクの魔物ですので、Gランクのスカルヘッドさんが受けるのは危ないと思うのですが……」
「いや、以前にも戦ったことがあるのでな。別段難しくはないと思う」
「えっ!そうなんですか!スカルヘッドさんは見た目に似合わずお強いんですね」
「強そうな見た目ではないか?」
「私としたことが……口が滑ってしまいましたね……申し訳ありません!」
受付嬢は勢いよく腰を曲げ、謝罪をする。
「いやいや、気にはしていない。それで、この依頼は受けられるのか?」
「スカルヘッドさんが難なくこなせるのであれば……危なくなったら、逃げるんですよ?」
「あぁ。覚えておこう」
俺は受付嬢に依頼書を渡し、それをカードが記憶する。
これでパワフルボアを討伐すれば、数が明記される。ということらしい。
「あ!スカルヘッドさん!討伐したモンスターの素材は買取いたしますので、余裕があれば持ってきてください!」
前にダンがやっていたことだな。解体した肉や牙を売るといっていたな。
俺は軽く手を振り、返事をした。
俺は、パワフルボアが生息しているという森の近くの門をくぐる。依頼を受けたギルドカードを見せれば、出入りに税は発生しない。
ただ、そのまま他の街へ行くときには発生してしまう。
★
森に入り、5分ほどが経つ。一頭目のパワフルボアを発見する。周りに他のモンスターの気配はしない。
称号、忍び寄る恐怖と、スキルの隠密、そして、エルフの外套のおかげで気づかれることなく、背後を取ることに成功する。
「
手を前に出し、魔法を詠唱する。燃え盛る槍が形成され、パワフルボアへ突き刺さり燃えていく。動かなくなったのを確認し、周りを確認してから冒険者カードを見る。
対象モンスター討伐数:1
と、増えていた。
(ほう。おもしろいな)
俺は、力尽きたパワフルボアの素材を剥ぎ取ろうと近づいた。
「……しまったな。火で毛皮をダメにしてしまった……」
自分の失敗を反省しつつ、残った牙、燃えた毛皮は使えないと思ったが、とりあえず剥ぎ取っておく。
肉は量が量なので、3頭分持ち運ぶことは諦めた。
(最後の一頭のみ、肉を持ち帰ろう)
改めてパワフルボアを探し、次々と倒していく
剥ぎ取った素材は
牙6本
毛皮3枚
肉1頭分
といったところだ。
帰り道を歩いていると、先ほど倒したパワフルボアを見つける。
「ふむ……真っ直ぐ帰るのだから、両手に抱えれば二頭は持ち帰れるか」
右手には三頭目のパワフルボアを、左手には二頭目のパワフルボアを担ぎ、街へと帰っていく。側から見れば無防備なのだが、街の門はもう目の前、衛兵もこちらを確認しているようだ。
★
「え、えぇとスカルヘッドさん……持ち帰るのでしたら、袋か何かにお入れしていただければ……」
「む?そのまま持ち帰るのはダメだったか?」
「ダメ、ではないのですが……やはり、皮を剥ぎ取った後のものをそのまま運ぶのは、目に毒といいますか……」
そう言われれば、ここに来るまでにすれ違った人間たちは、パワフルボアを見て口を覆ったり、道端にしゃがみこむものがたくさんいた気がする。
門のところにいた衛兵も苦笑いだった気が……
「考えてみればその通りだな。すまなかった。次回からは気をつけよう」
「は、はい。依頼は達成ですね。報酬は買取金額と合わせてお渡ししますので買取窓口のほうへお願いします」
「わかった」
買取窓口のほうへ進むと、他のギルド職員が買取の対応をしてくれた。
「それでは、素材買取の内訳を報告しますね
パワフルボアの肉100kgで、銀貨2枚、二頭で銀貨4枚になります。
パワフルボアの毛皮1枚で、銀貨1枚、一枚焦げてはいましたが、初の依頼達成を祝いまして、勝手ながらオマケさせていただきました。毛皮3枚で銀貨3枚になります。
パワフルボアの牙二本で銀貨1枚、六本で銀貨3枚になります。
そして、依頼達成報酬が銀貨3枚、締めて
金貨1枚と銀貨3枚となりますが、よろしいですか?」
「あぁ。それで頼む」
俺は報酬を職員と一緒に数え、それを受け取る。これで手持ちのお金はダンからもらった金と、エルフからもらったお金で、金2枚、銀53枚ということになった。
「そしてこちらが、冒険者カードになります。スカルヘッドさんはEランク相当の腕ということでFを飛んでEランクへの昇格となりました」
Gランクカードは木の板だったが、渡されたEランクカードは鉄の板に変わっていた。こういうところでランクの差異というものがでるのだろうか……
「ところで、聞きたいのだが……金貨などは銀貨何枚で金になるのだ?田舎から出てきたものでな。相場がよくわからないのだ」
「えーっと、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚、大金貨10枚で白金貨1枚ということになりますね」
「おぉ、細く教えてもらって助かる。もう一つ質問なのだが、オススメの宿はこの近くにあるか?」
「ギルドを出てもらって、右にまっすぐ行きますと、左手のほうに【金色の鳥】という宿がありますよ。朝晩のご飯がついて銀貨5枚と、待遇的にお安くはなっておりますよ」
「素泊まりで安いところはないか?」
「そうですねぇ……確か金色の鳥をしばらく過ぎたところに、【月の微笑み】という場所があって、そこが安かった気がします。申し訳ありませんが金額までは覚えていませんね……」
「月か……いや、十分だ。ありがとう。これは感謝の気持ちとして受け取ってくれ」
俺はチップとして銀貨を職員の前にだす。
「……ありがたくもらっておきますね。またのご利用をお待ちしております」
深々と頭を下げられ、軽く返事をして、ギルドを後にした
★★★
名前:スカルヘッド(仮)
種族:
ランク:E
レベル:19/20
HP140/140
MP85/85
固有スキル
月ノ眼
堅骨
スキル
剣術Lv2
火魔法Lv3
索敵Lv2
隠密Lv6
称号
月を見る魔物、月の女神の寵愛、忍び寄る恐怖
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます