骸骨と勉強会
今夜の食材を探していると、レヴィがハルカに魔法の注文をした。
「ハルカ、次のモンスターに思いっきりファイアボールを使ってみなさい」
「?はい。わかりました!」
しばらく歩くと、ジャイアントプラント、という、大きな四足歩行型の木のモンスターが襲ってきた。
火魔法は相性が良いので、俺が出る幕はないだろう。
「ハルカ、ファイアボールに目一杯MPを使ってね」
「はい!」
「ハルカ、万が一ではあるが、私もすぐに助けに入るからな」
「はい!ありがとうございますムルト様。『ファイアボール』!」
ハルカが木の杖を前に出し、魔法を唱える。ハルカの手から魔力が溢れ、木の杖という触媒を通し、目の前に大きな火の玉が現れる。
火の玉、というには、やや語弊がある。
小さな太陽。といったほうがわかりやすいかもしれない。
その太陽は、ジャイアントプラントを包み込み、消し炭にするだけではなく、周りの木々をも巻き込み、大きな火炎となった。
レヴィはそれをすぐに暴風魔法を使い空へと逃した。危うく山火事になるところだった。
「はわわっ」
「ハルカ……私の思った通りね。とりあえず、今日はここで野宿の準備をしましょうか……大事な話。いや、授業があるわ!」
レヴィは片手を額に当て、やれやれ、といった感じで首を振った。
★
野宿の準備、とはいうが、平地を探し、焚き火や食事、寝床の準備をするだけなのだが、目の前にはハルカがしでかした焼け野原が広がっていた。
焚き火をし、食事の準備をし、今日は早めの晩飯ということで、すぐにみんなで食事をとった。
「さぁ。じゃあ、授業を始めるわよ」
レヴィは俺とハルカの前に仁王立ちし、腕を組み、ない胸を逸らしていた。
「ムルト、その目は何よ」
「む、いや、なんでもない。それより、授業とは?」
俺とハルカはレヴィの前で正座をし、静かにレヴィの行動を見守っている。
「ふん。まぁいいわ。今からするのは魔法の授業よ。ムルト、魔法とはどういうものなのか説明してみなさい」
「魔法とは、自らの体内にある魔力、即ちMPを消費し、己の適性のある魔法を繰り出す……?」
「間違ってはないけど、不十分ね。ハルカは?わかる?」
「えー……自らの適性魔法だけではなく、スクロールや媒介を通せば、他の魔法も使える。そして、触媒などを通せばさらに強い魔法が使える……ですかね?」
「んー……ハルカも間違ってはいないけど、完璧ではないわ」
「ふむ。それではレヴィ、魔法とはどういったものか教えてくれないか?」
「うん。それが目的だしね。まず、魔法というのは、自然の力を繰り出すものよ。使用方法は概ねあっているとして、基本的に魔法が使えるのは、火、水、土、風の四元素、そして光と闇の力、それぞれ使う魔法は似ていても、効果は違ったり、上級魔法が存在するわ。次に、魔術、これは魔法と違って、自然に存在しないもの、例えば、空間や時間、まぁ、自然にないわけではないけど、いわゆる例外ってやつね。魔術も体内のMPを使うけど、それとは別に、魔法陣を使用するわ」
「魔法陣は魔法の部類ではないのか?」
「名前だけ聞けばそう思えるけど、魔法と魔術は密接に関係しているの。例えば、私やハルカ、ムルトなんかは、無詠唱で魔法を発動してるわよね?でもこれは本来高度なことでね、一般の人は詠唱をしないと使えないことが多いわ。そして魔術ってのはね、MPを使って魔法陣を宙に描くの。それを媒介にして魔術として発動ができるわ」
「ふむ。よくはわからないが、私たちが授業で学ぶこととは?」
「これらの知識はいわゆる基礎よ。知っておいて損はないわ。今回の授業はね、ハルカの魔法のことよ」
「私の?」
「そう。ハルカ、あなたの使ったファイアボール、どれくらいのMPを消費した?」
「2000ほど……」
「本来、強めのファイアボールでも100消費すれば十分なのよ。でもハルカはそのファイアボールにほとんどMPを持っていかれたわね」
「はい」
「前にもすごく巨大なフレイムウォールを出してわね」
「モンスターを燃やし尽きたやつですよね」
「そう。そして私のたどり着いた答えはこれよ。ハルカ、あなたの魔法は、2段階上の、最上級の魔法として発動される。と」
「……よくわからないですね」
「そうね。火魔法の最上級魔法は灼熱魔法なのだけれど、それにプロミネンスインパクトってのがあったはずよ。」
「私が昼間に放ったのはそれということですか?」
「そうよ。ハルカ、試しに、生活魔法のリトルファイアを使ってみなさい」
「生活魔法の……最上級……」
ハルカは人差し指を出し、魔法を唱える。すると、指先から勢いよく、炎が飛び出してくる
「まるでバーナーね……」
「あ、あはは……」
リトルファイアは、本来小さな火種を指先からだし、それを着火剤として、焚き火などに使用するのだが、いまのハルカの指から出ているのは、まさにバーナーなのだ。先の方が青白く燃えていた。
「それで消費MPはどれくらい?」
「100ですね」
「本来は10よ。これで、MPが多いのに、ハルカがなぜレベルを上げるまで魔法を使えなかったかわかった?」
「二段階上の魔法が出てしまって、MPが足りない。と」
「そういうこと。今回の授業はね、自分の魔法の特性とかを知ってもらうことに要点を置くわよ。例えば、魔法だけじゃなくて、固有魔法とか、自分が出来ること、出来ないことを見つけるのよ」
「それを実際に試してみて、欠点を埋めていく。と」
「そ。ムルトは、何か実験してみたいものとかないの?」
「うむ……思いつかないな」
「例えば、あなたの魔眼、出来ること、出来ないことはない?」
「魔眼については把握をしている。が、下位使役や下位召喚が……な」
俺の固有魔法、なのだろうか、使役については一度だけ使ってみたが、召喚をあまり使ったことがなかったのだ。あまり多く出しても、騒ぎになってしまうからな。
「じゃあその下位召喚について調べたら?」
「うむ。レヴィがいれば暴走の心配もないだろう」
「え、なにそれ、暴走するの?」
「いや、あまり使ったことがなくてな。もしも。だ」
「そう。私に任せておきなさい!」
レヴィはトン、と胸を打ち、ドヤ顔をしている。
さて、俺は下位召喚の能力を確認していた。自分のランク、Cより下の俺と同じスケルトンを呼び出すことができるのだ。
試しに一体、Gランクのただのスケルトンを出してみる。
「普通のスケルトンね。ステータスは?」
「ほう。ステータスか」
俺は早速、目の前に召喚したスケルトンのステータスを月読で見た
名前:
種族:スケルトン
ランク:G
レベル:1/1
HP2300/2300
MP0/0
固有スキル
骨
スキル
称号
使役魔
スケルトンにしてはHPがものすごく高い。が、そのほかのことに関しては特に目立った点は見当たらない
「そう。確か、2300って、今のムルトのHPじゃなかった?」
「あぁ。そうだが」
「……次はメイジを出して見ましょう」
「わかった。じゃあこいつは」
「その子は消さなくていいわ。ついでに、どれくらいの時間で消えるのか確かめましょう」
俺は続いてスケルトンメイジを召喚してみることにした。スケルトンにはMP10を使って召喚したので、次は一桁増やして100で召喚することにした
名前:
種族:スケルトンメイジ
ランク:F
レベル:1/1
HP230/230
MP940/940
固有スキル
骨
魔力操作
スキル
火魔法Lv10
称号
使役魔
赤い木の杖を持ったスケルトンメイジが出てくる。
HPは低いが、MPは今の俺と同じ数値だった。
「MPは予想通りだとして、火魔法カンストって凄まじいわよ」
「そうなのか?」
「普通のスケルトンメイジはLv2いってればすごいのよ?多分、ムルトが灼熱魔法を使えるからだとは思うけど……どんどん出してみて」
そう言われ、俺はさらにスケルトンを出した。
スケルトンメイジをもう一体、そして新たにハイスケルトンも出した。
名前:
種族:スケルトンメイジ
ランク:F
レベル:1/1
HP230/230
MP940/940
固有スキル
骨
魔力操作
スキル
風魔法Lv1
称号
使役魔
名前:
種族:ハイスケルトン
ランク:E
レベル:1/1
HP2300/2300
MP0/0
固有スキル
堅骨
スキル
身体強化Lv1
称号
使役魔
それぞれMPを100注ぎ込んだが、ハイスケルトンのほうは10秒ほどで消えてしまう。
スケルトンメイジは1分ほど、最初に出したスケルトンは10分で消えた。
そして俺はレヴィと話をし、俺のこの能力を詳しく把握することができた。
出すことができるのは、下位のモンスターで、そのステータスは俺の劣化、召喚時間は込めたMPによるが、ランクが上がるほどMPを多く注ぎ込まねばならないことだ。
その後も他の魔法やハルカへの勉強をし、その日はそのまま眠ってしまった。
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