骸骨と勉強会

今夜の食材を探していると、レヴィがハルカに魔法の注文をした。


「ハルカ、次のモンスターに思いっきりファイアボールを使ってみなさい」


「?はい。わかりました!」


しばらく歩くと、ジャイアントプラント、という、大きな四足歩行型の木のモンスターが襲ってきた。

火魔法は相性が良いので、俺が出る幕はないだろう。


「ハルカ、ファイアボールに目一杯MPを使ってね」


「はい!」


「ハルカ、万が一ではあるが、私もすぐに助けに入るからな」


「はい!ありがとうございますムルト様。『ファイアボール』!」


ハルカが木の杖を前に出し、魔法を唱える。ハルカの手から魔力が溢れ、木の杖という触媒を通し、目の前に大きな火の玉が現れる。

火の玉、というには、やや語弊がある。

小さな太陽。といったほうがわかりやすいかもしれない。

その太陽は、ジャイアントプラントを包み込み、消し炭にするだけではなく、周りの木々をも巻き込み、大きな火炎となった。

レヴィはそれをすぐに暴風魔法を使い空へと逃した。危うく山火事になるところだった。


「はわわっ」


「ハルカ……私の思った通りね。とりあえず、今日はここで野宿の準備をしましょうか……大事な話。いや、授業があるわ!」


レヴィは片手を額に当て、やれやれ、といった感じで首を振った。





野宿の準備、とはいうが、平地を探し、焚き火や食事、寝床の準備をするだけなのだが、目の前にはハルカがしでかした焼け野原が広がっていた。


焚き火をし、食事の準備をし、今日は早めの晩飯ということで、すぐにみんなで食事をとった。


「さぁ。じゃあ、授業を始めるわよ」


レヴィは俺とハルカの前に仁王立ちし、腕を組み、ない胸を逸らしていた。


「ムルト、その目は何よ」


「む、いや、なんでもない。それより、授業とは?」


俺とハルカはレヴィの前で正座をし、静かにレヴィの行動を見守っている。


「ふん。まぁいいわ。今からするのは魔法の授業よ。ムルト、魔法とはどういうものなのか説明してみなさい」


「魔法とは、自らの体内にある魔力、即ちMPを消費し、己の適性のある魔法を繰り出す……?」


「間違ってはないけど、不十分ね。ハルカは?わかる?」


「えー……自らの適性魔法だけではなく、スクロールや媒介を通せば、他の魔法も使える。そして、触媒などを通せばさらに強い魔法が使える……ですかね?」


「んー……ハルカも間違ってはいないけど、完璧ではないわ」


「ふむ。それではレヴィ、魔法とはどういったものか教えてくれないか?」


「うん。それが目的だしね。まず、魔法というのは、自然の力を繰り出すものよ。使用方法は概ねあっているとして、基本的に魔法が使えるのは、火、水、土、風の四元素、そして光と闇の力、それぞれ使う魔法は似ていても、効果は違ったり、上級魔法が存在するわ。次に、魔術、これは魔法と違って、自然に存在しないもの、例えば、空間や時間、まぁ、自然にないわけではないけど、いわゆる例外ってやつね。魔術も体内のMPを使うけど、それとは別に、魔法陣を使用するわ」


「魔法陣は魔法の部類ではないのか?」


「名前だけ聞けばそう思えるけど、魔法と魔術は密接に関係しているの。例えば、私やハルカ、ムルトなんかは、無詠唱で魔法を発動してるわよね?でもこれは本来高度なことでね、一般の人は詠唱をしないと使えないことが多いわ。そして魔術ってのはね、MPを使って魔法陣を宙に描くの。それを媒介にして魔術として発動ができるわ」


「ふむ。よくはわからないが、私たちが授業で学ぶこととは?」


「これらの知識はいわゆる基礎よ。知っておいて損はないわ。今回の授業はね、ハルカの魔法のことよ」


「私の?」


「そう。ハルカ、あなたの使ったファイアボール、どれくらいのMPを消費した?」


「2000ほど……」


「本来、強めのファイアボールでも100消費すれば十分なのよ。でもハルカはそのファイアボールにほとんどMPを持っていかれたわね」


「はい」


「前にもすごく巨大なフレイムウォールを出してわね」


「モンスターを燃やし尽きたやつですよね」


「そう。そして私のたどり着いた答えはこれよ。ハルカ、あなたの魔法は、2段階上の、最上級の魔法として発動される。と」


「……よくわからないですね」


「そうね。火魔法の最上級魔法は灼熱魔法なのだけれど、それにプロミネンスインパクトってのがあったはずよ。」


「私が昼間に放ったのはそれということですか?」


「そうよ。ハルカ、試しに、生活魔法のリトルファイアを使ってみなさい」


「生活魔法の……最上級……」


ハルカは人差し指を出し、魔法を唱える。すると、指先から勢いよく、炎が飛び出してくる


「まるでバーナーね……」


「あ、あはは……」


リトルファイアは、本来小さな火種を指先からだし、それを着火剤として、焚き火などに使用するのだが、いまのハルカの指から出ているのは、まさにバーナーなのだ。先の方が青白く燃えていた。


「それで消費MPはどれくらい?」


「100ですね」


「本来は10よ。これで、MPが多いのに、ハルカがなぜレベルを上げるまで魔法を使えなかったかわかった?」


「二段階上の魔法が出てしまって、MPが足りない。と」


「そういうこと。今回の授業はね、自分の魔法の特性とかを知ってもらうことに要点を置くわよ。例えば、魔法だけじゃなくて、固有魔法とか、自分が出来ること、出来ないことを見つけるのよ」


「それを実際に試してみて、欠点を埋めていく。と」


「そ。ムルトは、何か実験してみたいものとかないの?」


「うむ……思いつかないな」


「例えば、あなたの魔眼、出来ること、出来ないことはない?」


「魔眼については把握をしている。が、下位使役や下位召喚が……な」


俺の固有魔法、なのだろうか、使役については一度だけ使ってみたが、召喚をあまり使ったことがなかったのだ。あまり多く出しても、騒ぎになってしまうからな。


「じゃあその下位召喚について調べたら?」


「うむ。レヴィがいれば暴走の心配もないだろう」


「え、なにそれ、暴走するの?」


「いや、あまり使ったことがなくてな。もしも。だ」


「そう。私に任せておきなさい!」


レヴィはトン、と胸を打ち、ドヤ顔をしている。


さて、俺は下位召喚の能力を確認していた。自分のランク、Cより下の俺と同じスケルトンを呼び出すことができるのだ。

試しに一体、Gランクのただのスケルトンを出してみる。


「普通のスケルトンね。ステータスは?」


「ほう。ステータスか」


俺は早速、目の前に召喚したスケルトンのステータスを月読で見た


名前:

種族:スケルトン


ランク:G

レベル:1/1

HP2300/2300

MP0/0


固有スキル


スキル


称号

使役魔



スケルトンにしてはHPがものすごく高い。が、そのほかのことに関しては特に目立った点は見当たらない


「そう。確か、2300って、今のムルトのHPじゃなかった?」


「あぁ。そうだが」


「……次はメイジを出して見ましょう」


「わかった。じゃあこいつは」


「その子は消さなくていいわ。ついでに、どれくらいの時間で消えるのか確かめましょう」


俺は続いてスケルトンメイジを召喚してみることにした。スケルトンにはMP10を使って召喚したので、次は一桁増やして100で召喚することにした


名前:

種族:スケルトンメイジ


ランク:F

レベル:1/1

HP230/230

MP940/940


固有スキル

魔力操作


スキル

火魔法Lv10


称号

使役魔


赤い木の杖を持ったスケルトンメイジが出てくる。

HPは低いが、MPは今の俺と同じ数値だった。


「MPは予想通りだとして、火魔法カンストって凄まじいわよ」


「そうなのか?」


「普通のスケルトンメイジはLv2いってればすごいのよ?多分、ムルトが灼熱魔法を使えるからだとは思うけど……どんどん出してみて」


そう言われ、俺はさらにスケルトンを出した。

スケルトンメイジをもう一体、そして新たにハイスケルトンも出した。


名前:

種族:スケルトンメイジ


ランク:F

レベル:1/1

HP230/230

MP940/940


固有スキル

魔力操作


スキル

風魔法Lv1


称号

使役魔


名前:

種族:ハイスケルトン


ランク:E

レベル:1/1

HP2300/2300

MP0/0


固有スキル

堅骨


スキル

身体強化Lv1


称号

使役魔


それぞれMPを100注ぎ込んだが、ハイスケルトンのほうは10秒ほどで消えてしまう。

スケルトンメイジは1分ほど、最初に出したスケルトンは10分で消えた。


そして俺はレヴィと話をし、俺のこの能力を詳しく把握することができた。

出すことができるのは、下位のモンスターで、そのステータスは俺の劣化、召喚時間は込めたMPによるが、ランクが上がるほどMPを多く注ぎ込まねばならないことだ。


その後も他の魔法やハルカへの勉強をし、その日はそのまま眠ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る