最強の一角

「では、なぜ諸君をここへ呼び出したか説明しようではないか」


大きな円卓に座る人物は6名、それぞれが特異な装備をしており、誰が見てもその者達が相当の手練れであることがわかる。


「話を始めるのはいいけどよ?空席がまだあるようだぜ?」


発言したのは、煌びやかな緑色の鱗で覆われた装備を全身に纏っている男、その装備はエメラルドドラゴンという、ランクSに属する超希少なドラゴンである。発見難易度もさることながら、その戦闘力も凄まじい。その超希少素材を自分で発見し、討伐、そしてその素材で装備を整えた。

S1ランク冒険者『刺突戦車セルシアン』


ただ一人、行儀悪く机に足を乗せ、頭の後ろで手を組み、椅子を揺らしていた


「残り3名はここへこない」


「グランドマスターに呼び出されてもか?」


そう問いかけるのは、黒い革のようなコートを羽織り、鼻から下をマスクで隠した男

そのコートの下には無数の刃物や暗器が仕込まれており、この男が討伐したモンスターには無数の切り傷があり、素材としては使い物にならなくなる。だがその強さは圧倒的だ

S1ランク冒険者『千刃烏ジル』


「彼らは召喚された勇者だからな。この世界のために働いているのだ。無理もない」


グランドマスターの代わりに発言をしたのは、真紅の鎧に、真紅の大剣、顔の丁度中央に切り傷のある男。

その巨躯から繰り出される大剣は、相対したものを圧倒し、確殺する。巨大な体で強大なパワーを誇る姿は、まさに鬼そのものである。彼の強さは勇者に匹敵するほどだと言われている

S2ランク冒険者『紅鬼ジュウベエ』


「あらあら、私、勇者のお嬢ちゃんのことが大好きなのよねぇ……食べちゃいたいぐらいに」


頰を両手で押さえ、体をくねられせているのは、黒いボンテージに白い毛皮を羽織っている女

鞭の使いに長けており、その鞭は堅くしなやかで、鋭い。特殊な素材で作られており、扱いが難しいと言われているが、彼女はこの鞭を手足のように使っている

S1ランク冒険者『黒蝶ラマ』


そして一人、腕を組み目を閉じ、皆の会話を静聴している黒の衣服に身を包んでいるだけの得体の知れない男

魔族の中でも最強と名高い吸血鬼の一人である。

S2ランク冒険者『吸血鬼ロンド』


「とりあえず、話を元に戻そう。勇者達一行には別で連絡をとる。君たちに依頼することは大して難しいことではない。捜索と討伐だ」


そして、この場全員を仕切るこの男、ジュウベエに負けず劣らずの巨躯をしており、体に無数の傷を蓄えている。

拳だけで全てを砕くと言われている。闘拳に限ってはジュウベエのみならず、勇者達をも凌駕するとまで言われている。

冒険者ギルド、グランドマスター

S2ランク冒険者『拳神バリオ』


「して、その依頼というのは?」


「俺たちを呼んで、しかも勇者にまで声をかけるんだろ?邪神の討伐とかか?」


セルシアンがからかうようにバリオにそう言う


「邪神。間違っていないかもな。漆黒の悪夢を知っているだろう?」


「ランク未確定の昔のモンスターよね?まさか復活でもするの?」


「昔のSランク以上の冒険者が幾人も死したというモンスターか」


「そうだ。だが、復活、というよりは、次代、というべきだろう」


「それは、ユニークモンスターのスケルトンが出た、ということか?」


「そうだ」


「と言っても、異色のスケルトンは発見次第狩っているんだろう?そのどれもが知能を宿していないという。未然に防げているのではないのか?」


「実は、バルバルとボロガンで、異色のスケルトンを発見したという報告が届いている。その二つの街で見かけたスケルトンの色はどちらも青、しかもバルバルではそのスケルトンと接触し、交流したという報告もある」


「それならば特に危険とは思えないが?」


ずっと静聴していたロンドが口を開いた


「なんだ?同じモンスターとして同情しているのか?」


「セルシアン、差別のように聞こえる発言はよせ」


「魔族とモンスターは別物よ。それにロンドちゃんはイケメンだし……食べちゃいたぃわぁ…」


「魔族には骨人族という種族がいる。服の一環として自分の骨を多色に染めるという。その報告のスケルトンは骨人族ではないのか?」


ロンドは二人の発言を無視し、バリオだけを見て発言をした


「それはありえない。骨人族にあるはずの魔核がなかったからな。だが妙なのはボロガンでの報告だ。ボロガンでは、そのスケルトンを発見した時、近くにポイズンスコルピオンの死体があったという。そしてそのボロガンの冒険者がその現場へ駆けつけた時、そのスケルトンはすぐに武器をしまい、どこかへ行ってしまったらしい」


「人を襲わなかった。ということだろう?ならばなおさら危険ではないと言えるのではないか?それでも討伐か?」


「何がどう転ぶかは誰にもわからない。能ある鷹は爪を隠す、というだろう?今はまだ力を溜め、爪を磨いているかもしれない。被害がこちらへ及ぶ前に手を打っておく」


「そのために俺たちが呼ばれたってことかぁ?まだ脅威じゃないんだろ?こんなにいるか?」


「そのスケルトンの所在は判明していなくてな。諸君には今まで通り生活してもらい、この話は頭の片隅に入れてもらう。そのスケルトンと接触したら対話を試みてほしい」


「討伐ではないのか?」


「それは各々の判断に任せることとする」


「ふむ、会議はこれで終わりかの?」


「いや、実はこれ体が本題だ……」


異色のスケルトン、ムルトについての話はすぐに終わった。時間にして数十分といったところだろうか。バリオは異色のスケルトンの脅威を知っているが、報告はまだ二件、そのどちらもがロンドの言う通り、危険度の高いものだとは思えなかった。だからこそ対話をするようにと呼びかけたのだが。

バリオは話を終わらせ一息つくと、神妙な顔をして次の議題を話し始める。


「もう勇者召喚がされてから3ヶ月が立つが……実は、セルシアンが言った通り、邪神が復活しようとしている」

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