骸骨と泉探し

翌日、俺たちは冒険者ギルドに来ていた。

無論、依頼を受けるため、そして、黄金の泉のことを調べるためだ。


昨夜、イメルテと話をしたところ、有力な話を聞くことができた。


『黄金の泉は、マキナにあるいずれかのダンジョンから行けるらしいです。どこのダンジョンかはわかりませんが、Bランク冒険者以上という制限がかかっているダンジョン、と冒険者達の噂話で聞きました。Bランクダンジョンは5つ、Aランクは3つ、Sランクもあるのですが、一般には公開しておりません』


この話を聞き、とりあえず俺たちは、Bランクダンジョンから順に調べていくことにしたのだ。


「イメルテ、頼む」


受付をしてくれるのは、イメルテ。昨日の打ち合わせ通り、事前にダンジョン行きの通行証を作ってくれていた。

本来、Cランク以上のダンジョンに立ち入るには、同ランクの冒険者であること、ダンジョン立ち入り許可証を発行してもらうこと、この2つのことが必要になる。

イメルテにこのことも聞いたので、さっそく行くことを話、急ぎで許可証を発行してもらった。


「こちらがBランクダンジョンへの立ち入り許可証、そして、こちらがAランクダンジョンへの立ち入り許可証です」


「Aランク?」


「はい。ギャバンギルドマスターに話をしたところ、『Aランク相当の実力があるんだ。無理しなけりゃ行けるだろ。それと、黄金の泉、夢を追い求めるたぁ、冒険者として良い志だ!』とのことで、特別に許可をいただきました」


「そうか、それはありがたいな。礼を言っておいてくれ」


「かしこまりました。そして、こちらが依頼ですね。ゴーレム5体の討伐を2枚」


「あぁ。時間によっては、減ったり増えたりする」


「増える分には構いませんよ。討伐0というのは困りものですが」


イメルテはそう言って苦笑する。俺たちが討伐0というのはありえない、と言っているように聞こえる。イメルテなりの冗談というものだろう。


ゴーレムは、この都市でとても需要がある。全身が鉱物でできているからだ。その鉱石を砕き、加工することで武器や武具が作れているのだ。ゴーレムにも種類があり、カッパーゴーレム、シルバーゴーレム、メタリックゴーレム、ミスリルゴーレムと、体を構成している鉱物で名前が変わる。ユニークモンスターで、ルビーゴーレムや、ダイヤモンドゴーレムがいらしい。


「それでは、お気をつけていってらっしゃいませ!」


俺はイメルテに頼んでおいたダンジョンの地図をもらい、金を払う。地図1枚銀貨1枚だ。それをBランクダンジョン分、5枚購入した。


「それでは、行こうか」


「はい!」


主なモンスターはゴーレムとなるだろう。有効攻撃は打撃。ハルカの力が、必要不可欠となる。


(ハルカには、働いてもらうことになるな)


自分は他のモンスターやサポートを徹底しようと改めて思い、ダンジョン攻略へと向かった



まず、俺たちが来たダンジョンは、機械都市マキナより、歩いて30分の場所にある、【銅鉱脈】というダンジョンだ。名前の通り、カッパーゴーレムが多いらしい。階層は地下3階までと、階数は少ないが、中はまぁまぁに広いらしい。俺たちは黄金の泉を探しながら下っていくので、時間がかかると思う。


始めにこのダンジョンを選んだのには、訳がある。ここからさらに30分ほど歩いたところに、【銀鉱脈】というダンジョンがあるからだ。これも、ここと同じで、名前通り、シルバーゴーレムが多い。今日はこの2つのダンジョンを攻略しようと思う。


俺たちはダンジョンの前にある小屋の職員に、許可証を見せて、ダンジョンの中へと入っていく。


ダンジョンの中は暗く、ジメジメしていた。

俺は元々の夜目、今は月読だが、そのスキルのおかげで、昼も夜も当たり前のように見ることができるが、ハルカはそうではなかった。俺はハルカのために、生活魔法である、光ライトを使い、ダンジョン内を照らした。

ハルカもこの魔法は使えるのだが、例に違わず、威力がすごい。それはもう、小さな太陽のような輝きを放った。


ハルカの使う生活魔法などは、俺が代わりに発動させている。


「ゴーレムに出会わないな」


「そうですね。まだ見ませんね」


戦闘を避けて、黄金の泉探しできるのはいいのだが、依頼のこともあるので、無視はできない


俺たちは壁に隠し通路がないか、地面に落とし穴はないかなど、慎重にダンジョンの中を進んでいった。


そしてそれを地下1階までやっていたのだが、モンスターとは出会わなかった。ゴーレムはおろか、ゴブリンの1匹にも出会わない


「誰かが来ているのでしょうか?」


「あぁ。そうかもしれないな」


実はこのダンジョンにはもう2組、冒険者パーティが来ているらしかった。足跡も少し残っているし、何より、ダンジョン前の職員がそう言っていた。狩り尽くされた後なのかもしれない。


「探索がしやすくなるのはいいことだ。感謝しよう」


「そうですね!」


俺たちは着々と壁や天井、床を調べながら下へ、下へと降りていく。


そして地下3階へ降りる階段で、その階段を登ってくる冒険者達に会った


「お?あんたらも鉱石集めかい?」


「あぁ。まだゴーレムは1体も狩れていないがな」


「あんたらもか〜実は俺たちもなんだ。

下にいるパーティの奴らが軒並み狩ってるようでよ。俺たちはもう帰るかっつってな」


「そうか。気をつけて帰れよ」


「あぁ!あんたも、狩場を変えたほうがいいぜ。今日は下のやつらが独占するようだからな」


「あぁ。少ししたら戻るとする。貴重な情報、感謝する」


「いいってことよ!んじゃあな!」


気のいい男は、そのまま上の階への階段がある道へと進んでいった。

あくまで俺たちはゴーレムを狩ることが目的ではないので、すぐに帰るということはしなかった。


そして最下層にまでくる。例の冒険者達がいる。魔法使いに剣士、重戦士、そして拳闘士というパーティがいた。

重戦士がゴーレムの攻撃を受け止め、その隙に魔法使いが攻撃、拳闘士が剛撃をし、心臓となるコアを砕いているようだ


「バランスのいいパーティだな」


「そうですね、自分がやるべきことをしっかりやっているみたいですね」


「あぁ。お、カッパーゴーレムがいたぞ」


そのパーティの戦いぶりを見ていると、俺たちの後ろから1体のカッパーゴーレムが現れた


「ここは俺に任せてくれ」


俺は月欠を抜き、魔力を通す


(剣で傷をつけることができれば、牽制には使えそうだ)


俺はどのようにハルカをサポートするか考えるため、ゴーレムへ向かって斬撃を加える。

ゴーレムの体をよろめかせることができれば、牽制や殿として立ち回れるし、いいダメージが入れば、ハルカに頼らなくても狩れる


「すごいです!」


声をあげたのはハルカだ。

傷をつけられればよいと思っていた斬撃は、バターを切るようにゴーレムの体に吸い込まれ、ゴーレムの体を斜めに切ることができた


「ものすごい斬れ味だな」


「さすがムルト様ですね!」


「すごいのは月欠だ」


俺は確かめるように、斬り伏せたゴーレムの体を月欠でスライスする。コアを壊し、小さくした銅鉱石をハルカのアイテムボックスへと収納していく。


結局、【銅鉱脈】では、黄金の泉がありそうな場所はなかった。銅鉱脈は地図に書いてある通りの配置をしてあり、隠し通路もない、ただのダンジョンだった。


俺たちはダンジョンを出て、一息つく。

太陽は丁度真上。昼飯時だ


「飯にするか」


「はい!」


ハルカは買っておいた食材をアイテムボックスから取り出し、ダンジョンの前で調理し、それを食べた。


食事中のハルカの顔はとても幸せそうだ。こちらも同じような気分になる。


「ムルト様、どうしたんですか?」


「ははは、なんでもないさ」


俺はそうハルカに向かって言った。


(俺に顔があれば、微笑んで見えただろうか)


ハルカの食事が終わるのを待ち、俺たちは次のダンジョンへと向かう

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