骸骨と醤油
そして次の日からエルフの国を観光していく。
ミカイルが俺の行きたいところや要望を聞き、そこへ連れて行ってくれる。
エルフの国の活気を全身に浴び、とても充実した。
そして1週間ほど滞在した。
「ムルトさん、今日はどこへ行きましょう?」
「そうだな……そういえば、前に人間との交流もあると言っていたな」
「はい。ありますよ」
「輸入や輸出をしている場所があるのか?」
「はい。本日はそこへ行きましょうか」
「あぁ。頼む」
そしてミカイルに案内され、その貿易の場へと向かう。
移動方法は、俺がエルフの国を歩いて見たいということで、基本的には徒歩だ。
帰りなどは乗り物に乗ったりするが、しょっちゅうというわけではない。
人間との交流場所というのは南の地区にあるのだとか、談笑やエルフの昔話などを聞き向かう。
「ムルトさん、ハルカさん、ここが人間と貿易を行なっている地区になります」
「ほぉ……壮観だな」
俺たちは今、国を抜けて出た。世界樹の根の上に立っている。そして眼下にはエルフと人間が商談をしているようなのだが、この眺めがすごい。
至る所に馬車がある。
世界樹の根は俺たちが乗っている場所以上はなく、人間との貿易はあくまで世界樹の外で行われている。
たくさんの人間やエルフが話をしながら積荷を馬車に運び入れたり、運び出したりしている。
「エルフの主な名産はなんなのだ?」
「やはり植物関連のものが多いですね。枝焼きの枝や、モンスターの毛皮、羽毛、あとは醤油などの調味料でしょうか」
「醤油?」
「はい。遥か昔の勇者が残したと言われているものです」
「醤油ということは、大豆ですか?」
「ハルカさん、よくご存知ですね。実は大豆はあまり輸出していないですし、人族にも情報をほとんど出していません」
「なぜ?」
エルフがその大豆というものを秘匿する理由があるのかわからない
「大豆はいろいろなものになるのですが、その特性を活かせるのは自然に理解のある私たちエルフの方が良いということで、独占のような形になっています。少量は輸出もしているのですが」
「教育をしているのか?」
「はい。大豆の育て方、土壌の作り方を教えていますが、なかなか成功する人はいませんね」
「そうなのか」
「はい。それではこちらを見てみましょうか」
次にミカイルが紹介してくれたのは、外からの商人が持ってきたという服などだ。
ミカイルは人間にも有名なようで、道行くエルフや人間が挨拶をしている。
「エルフでは人族の服などを身に付けるのがブームになりつつあります。布でできた服というのは、エルフには珍しいので。そしてエルフは人族から布を輸入し、自分たちの色を出した服を作っていますね。それが人族でブームになり、逆にエルフが作った服を輸出していたりしています」
「なるほど、エルフが作った服というのはどれなのだ?」
「これから輸出する分は……」
ミカイルが他のエルフに声をかけ、服がどこにあるかを確認している。
服が見つかったようで、そこに案内される。
とても煌びやかで、刺繍のようなものがされ、通気性もよく、何より軽い
「オシャレを楽しむためのものなので、実用性はありませんね。私の着ている服は魔力が通しやすくなったり、魔法を少しだけ軽減したりすることができます」
「それは便利だな……実は、エルフの国に寄った記念に、ハルカに服を買ってあげたいのだ」
「えっ?!大丈夫ですよムルト様!」
「いやいや、せっかくエルフの国に来れたんだ。思い出というものは大事だろう」
「パーティや観光など、思い出はたくさんですよ!ムルト様に負担はかけられません……」
「金にはまだまだ余裕がある。遠慮するな」
「えぇと……はい。それでは、お言葉に甘えまさせていただきますね」
「あぁ。任せてくれ」
「ムルトさんの胃袋を作ってくれる職人さんにも会いに行くので、国の商業エリアに戻りましょうか」
「あぁ。頼む」
そして俺たちはまた、エルフの国の中へと戻った。
エルフの国の観光は、まだまだ始まったばかりである。
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