第247話 Tー12 マリー①
「ぐわっ!」
「ぎゃあ!」
キョウカを追いかけて森の中を駆けていたタイタンプレイヤー達は突如として現れた銀髪の少女にことごとく倒されていった。
彼女はマリー。日本のAEAIの1体。
倒されたプレイヤーはアバターを消滅させられ首都カシドニアに返還されて。
──これなら全員を倒して強制送還……は難しいですね。
タイタンプレイヤーは1万近くいる。それに外からきた中国当局のAEAIもいる。
なら今は自分の出来ることをなそう。敵AEAIは葵達に任せ、自分はキョウカを古墳エリアに向かわせるため、ここでプレイヤーの足止め。
また新たなプレイヤーが現れた。数は男女混成の四名。
マリーは先程と同じ様にまず死角から相手を攻める。
上空から1人をまず銃撃で仕留める。そして隣のプレイヤーも。2人目は仕留め切れなかったが、あの傷だと問題はない。銃弾は特殊仕様で毒が付与されている。
3人目と4人目は反応良く各々左右に別れて回避した。
毒を与えられたプレイヤーを左へと蹴り、タタラを踏ませる。
そのプレイヤーを後ろからの攻撃に対して盾とし、右の男性プレイヤーを狙う。男性プレイヤーはナイフを取り出して袈裟懸けにマリーを切りにかかる。
マリーは相手のナイフを持つ手に向けて銃口を移動。そしてトリガーを引く。
ナイフが弾かれ、次にプレイヤーは拳銃をホルダーから引き抜く。
マリーは相手がトリガー引くまで3発打ち、そして上空へ飛び、広範囲の炎攻撃を繰り出した。
「なっ!? ほ、炎だ!?」
タイタンプレイヤーにも火炎放射器等で炎系の攻撃が存在する。
が、マリーはそういったもの無しで手の平から炎を生み出した。
それは相手からしたらまるで魔法のようである。
でも、それも仕方のないこと。
マリーはプレイヤーではない。AEAIであり、アヴァロン側の魔法攻撃を一つどころか全ての魔法攻撃が
次にマリーは悲鳴をあげたプレイヤー無視して、左側へと移動したプレイヤーに向かう。木々を蹴り、上空から残りのプレイヤーを襲撃。
左側のプレイヤーは庇護欲を与える小さい少女だった。
けれどマリーは彼女の正体を知っている。
決してその見た目に騙されはしない。
両手にダガーを手にする少女ことケイティーにマリーは全力で攻撃を開始する。
まず魔法でカマイタチを発生。並のプレイヤーならズタズタにされるが、さすがはハイランカー。ケイティーはダガーでカマイタチを切った。しかし、マリーもその程度のことは織り込み済み。ケイティー程のプレイヤーなら難しくもないだろう。
マリーはすぐに次の一手としてケイティーがカマイタチを切り終えたところを2丁拳銃で攻撃。計6発の弾丸がケイティーへと飛び交う。
「まだまだ!」
ケイティーは6発の弾丸をダガーで弾き返す。
そして一気に跳躍して上空のマリーへと迫る。
「くらえっ!」
ここだとケイティーはアーツ『チルチルミチル』を発動させた。それは防御力無視、無敵状態貫通、ダメージカット無視の高速15連撃。
「ならこちらも!」
マリーもまた『チルチルミチル』を発動させた。しかも武器は拳銃で。
「えっ!?」
ケイティーが驚くのも無理はない。『チルチルミチル』は高速の斬撃。それを刃のない拳銃で行うのだ。
それは自ら武器破壊を手助けする行為であり、もはやマリーがやった行為は馬鹿としか言いようがない。
けれどマリーは拳銃の銃口だけでケイティーの攻撃を弾き返した。しかもそれだけではない。マリーは反撃中に何発か銃弾を放っていた。
ケイティーは空中で回転して、地面へと降り立つ。
「どこに向かって──」
撃ったのかという続きの言葉は発せられなかった。
なぜなら銃弾がケイティーの体を撃ち抜いていたからだ。
「跳弾!」
「そうです。あなたがそこへ降り立つと計算してトリガーを引きました」
「ふざけるな!」
跳弾そのものは難しくはない。が、狙った場所へと当たるとなるとそれは別。しかも相手がどこに着地するかも計算済みとなると人間業を超えている。
ゆえにケイティーが怒るのも無理はない。
「人外ですみません」
マリーは右回し蹴りでケイティーを吹き飛ばす。
──これでしばらくは動けない。そのうちに。
マリーは別のプレイヤーに対して体を向ける。それは先程の魔法による火炎攻撃を与えた男性プレイヤーだ。
ケイティーは『チルチルミチル』の反動で動きが鈍っている。『チルチルミチル』は失敗するとスピードが減少してしまうのだ。対してマリーは銃撃が成功しているためデバフはない。いや、仮にデバフを受けたとしてもマリーはそれを無理に打ち消すことが出来る。
男性プレイヤーはすぐ近くにいて、もしマリーへと追撃をしていたなら、その隙に攻撃を受けていただろう。
男性プレイヤーの銃撃を避けつつ、カウンターでトリガー引く。
相手は木々を盾にしてマリーの銃撃を防ぐ。
──ああ! もう! この人もハイランカーなの?
マリーは心の中で毒づいたあと、体を動かす。
◯ ◯ ◯
最後にケイティーを倒して、マリーは膝に手を付く。
「きっつう」
マリーは披露を吐露した。
それだけケイティー達4人組の掃除は大変だった。
正確にはケイティーと名の知れぬ男性プレイヤーの2人。先に倒したプレイヤーはたぶん囮役か捨て駒だろう。
「少しは休めるかな?」
つい独りごちた。
「残念ですが、次は私がお相手しますよ」
なんと返事きた。
どこからか?
それは──マリーのお腹から。
マリーは自身のお腹を訝しむ。
「びっくりしました?」
小馬鹿にしたような声がまたお腹から発せられる。
そしてマリーのお腹が膨らみ始める。
マリーは膨らみを抑えようと両手で押さえる。
しかしお腹は膨らみ続けて、自販機ほどの大きさになった時、爆発するかのように弾けた。
お腹の内から何かが弾け飛ぶ。それは人ほどの大きさだった。
「ぎゃあ!」
マリーは弾けた衝撃で地面へと尻餅をつく。
体は生身の肉体ではないので血肉、臓物が飛び出すことはなかった。けれど割れたお腹の中は赤く、それだけでグロテスクであった。
そしてお腹から弾け出たものは女性だった。その女性は以前マリーが戦った中国AEAIの1体。
「お久しぶりです。おや? お姿が変わってますね。あっ、お名前はまだ名乗ってませんでしたね。わたくしアーミヤと申します」
女は不敵な笑みを向けて名乗った。
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