第244話 Aー11 異変

 ユウとセシリアが外に出ると、空がピンク色でオーロラが発光していた。


「なによこれ?」

「イベント中止が原因かな? セシ、やっぱり飯は中止にして中に戻ろう」

「うん」


 だが、そこへ空から何かが落ちてきた。

 大きな音と地響きでセシリアは反射で振り向いた。


「え? 何?」


 落ちてきたそれは人のかたちをした何かだった。


「NPC?」

「セシ、空が!?」


 上を見上げるとピンク色の空が割れていた。そしてちょうど違うところで空が割れて、何かがこぼれ落ちてきた。

 そして落ちてきたそれはゆっくりと起き上がった。


「あれ? こいつらって、タイタンプレイヤー?」


 アヴァロンとは違う近未来型のスーツを着込んだ姿。それはタイタンプレイヤーの姿だった。


「いや、違うよセシ。タイタンのNPCだよ。頭上にNPC表記がある!」

「でも、何でここに?」

「分からない」


 そしてタイタン側のNPCは急に銃を二人に向けた。


「セシ!」

「きゃあ!」


 ユウはセシリアを横に飛ばす。銃弾はセシリアがいた空間を突き抜ける。


 ユウはすぐにダガー・ウィンジコルでNPCに切りかかるが、NPCはユウの攻撃を避けて、カウンターで警棒をユウの背中に当てる。


「ぐっ!」

「ユウ!」


 セシリアは魔道具のハンマーを取り出して、NPCの頭めがけておもいっきり振り下ろす。


 NPCの頭は潰れ、体は地面に倒れる。

 そして光となり消える。


「大丈夫?」

「平気だよ。それよりどうしてこいつがここに?」

「まったく運営は一体何をしてるよ!」

「とりあへず家に戻ろう」


 ユウ達が家に戻ろうとした時、メッセージが届いた。


 端末を取り出してメッセージを確認すると、


『緊急! アヴァロンプレイヤーの皆様へ。暴走したタイタン側のNPCが侵入してきています。彼らは制御が効かない状態となっており、皆様に危害を与えようとしております。皆様方には誠に申し訳ないのですが、彼らの駆除及び殲滅を要求致します』


「何よこれ。新しいイベントって言いたいの?」

「たぶん、何らかの不具合だよ」

「それを何で私達が?」

「忙しいとか?」


 ロザリー達が外から攻撃を受けていて余裕がないとは言えなかった。


「どうする? 街のタイタンNPC狩りでもするの?」


 街ではあちこちで黒い煙が立ち昇っていた。それは戦闘もしくはタイタンNPCによる破壊によって発生して煙だろう。


「煩わしいからやっちゃおう」

「仕方ないわね」


 二人はまず近くの煙が立ち昇る場所へと移動した。


  ◯ ◯ ◯


 一方その頃、スピカ達ホワイトローズの屋敷の外では。


「やあ!」


 スピカは刀でタイタンNPCの胴を斬った。

 真っ二つにされたNPCは倒れ、光となって消えた。


「スピカさん! 林からも!」


 屋敷の窓からメイプルが林の方角を指差す。


 そこから亡霊のようにタイタンNPC達がゆらりゆらりと林から現れた。


「いったい何なんですか? わんさかわんさかと」


 スピカは苛立ち気に呟き、タイタンNPC達に足を向ける。


 ──ランクで言えば50くらいですか。


 ランク150でカンストしているスピカにとって彼らは赤子の手をひねる程度。


 ゆえに悠々と敵を屠る。

 相手が自身に銃口を向ける前に斬る。

 相手が間合いに入れば斬る。


「終わりと」

 刀を鞘に収めてスピカは言う。


「お疲れ様です」

 後ろからメイプルに労われる。


「下に降りてたなら、メイプルも手伝ってよ」

「すみません。情報収集に手間取ってしまい」


 メイプルは頭を下げる。


「で、何か分かったの? てかリルは?」

「リルはお部屋で他のプレイヤーと情報交換を。現在では有益な情報は何も。判明したのはイベントの中止。そして謎のタイタンNPCがアヴァロン内で出現。出現は空からの降ってくるか、モンスターのように出現するかの二つです」

「強さは?」

「掲示板の情報によればノーマルがランク50程度かと」


 やはり敵はスピカの予想通りのレベル。だけど一つ引っかかるのが。


「ノーマル?」

「時折強力なタイタンNPCが出現するとか」

「へえ。どんな奴?」

「ランク100クラスのプレイヤー2、3名で倒せるほどの。体格が2、3メートル程の巨体です」

「2、3メートル!? それ人なの?」

「NPCです」

「いや、そうじゃなくて。NPCでも普通は人型でしょ?」

「あっ、噂をすれば」

「ん?」


 大きな足音がするので林の方を振り向くと何かが木々を押し倒してこちらに進んでいた。


  ◯ ◯ ◯


 スピカ達が巨大なタイタンNPCと遭遇しようとしてた頃、ユウ達もまた巨大なタイタンNPCと遭遇した。


「ユウ、あれは無理なんじゃない?」

 セシリアは両耳を押さえて言う。


「でも、相当ダメージを食らっているからいけるかもしれないよ?」

 同じく両耳を押さえたユウが答える。


「私には負ける未来しか見えないわ」


 前方の敵は全身をカチカチのプロテクターで覆われ、手にする武器は巨大なマシンガンと思われる銃火器。


 現在は先客のアヴァロンプレイヤーと戦っていて、先程からマシンガンから鳴り響く、銃撃音がうるさくて二人は耳を押さえていた。


「そこ! 手伝いなさいよ!」


 巨大タイタンNPCと戦ってたアヴァロンプレイヤーから叱責を受ける。


「ほら、呼ばれてるから行こう!」

「仕方ないわねー」



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