第253話 Aー14 ピンチ
ユウとセシリアは路地を適当にジグザグに進むと噴水広場へと出てしまった。
「ここでも戦闘か」
「どうしよう? 無視する?」
今はアヴァロンプレイヤー数名が暴走したタイタンプレイヤーと戦っている。
「どうする参戦する?」
「無視……あっ!」
「どうしたの?」
「えっと、知り合いが……」
セシリアの視線の先に白魔法使いのペリーヌがいた。
ペリーヌもまたセシリアに気づいたらしく目が合う。
「それじゃあ、助けに……」
「ユウ、待って!」
路地が出ようとしたユウの肩をセシリアは掴む。
「あのタイタンプレイヤー、強いよ」
「でもピンチだよ。助けなきゃあ」
ペリーヌ達は押され気味で前衛が崩れて、今にも後衛のペリーヌへと近づいている。
「もう仕方ないわね」
セシリアとユウは広場に出て、助太刀を始める。
「ペリーヌ、もっと下がって。ユウ、私が魔法をぶっ放すまで時間を稼いで」
「分かった」
ユウは敵の前に出た。そして敵の攻撃を躱しつつ、カウンターを与える。ただしダメージを与えるのではなく、敵の注意を惹きつけるのを中心とする。
◯ ◯ ◯
「助かったわ」
戦闘が終わって、ペリーヌが代表してユウ達に謝辞を送る。
「大物に手を出すから」
やれやれとセシリアが言うと、ペリーヌが腹を立て、
「あんたは大物タイタンプレイヤーの名前を知ってるの?」
「知らないけど、強いのは見て分かるじゃん」
「あんたみたいに着飾ってるやつかもしれないでしょ?」
「はあ? いつ着飾った?」
「ジョブが魔法使いの時よ!」
「キラキラのオーブやペンデュラムを着けてたのはあんたでしょうが!?」
「魔法の時、厨二病全開の呪文を唱えてたのは誰よ!?」
「へっ!? はあぁ!? してないし!?」
「しーてーたー!」
「もう! 二人とも喧嘩はよしなって」
ユウが二人の間に割って入り、口喧嘩を止める。
「「ふん!」」
二人は同時に鼻を鳴らして、明後日を向く。
「てか、あんたはユウだっけ?」
「はい。初めまして」
本当は初めましてでない。以前に喫茶店にて会っていた。さらにペリーヌがセシリアとパーティーを組まないかというオファーをしたのをユウは聞いていた。
「こんなのと一緒にいて大変でしょ?」
「いえいえそんな」
「こんなって何よ!」
「あの、そろそろ体勢を整えては?」
ペリーヌパーティーの男性プレイヤーが発言する。彼は大きな盾にランスを装備している。
「そうね。HPは全回復しとくようにね。あと、他のプレイヤーとの連絡はどうなってる?」
「HPはリーダー以外、回復済みです」
「……そう」
「他のプレイヤーとは連絡が取れません。メッセージも掲示板も上手く機能しないんです」
「ん?」
「なんていうか……重いっていうのかな? メッセージは送れないし。掲示板はこちらがコメントを残すにも時間がかかりますし」
「何かエラーが発生しているのね」
「なにカッコきめて言ってるのよ。それくらいは誰でも分かるでしょ」
セシリアが横からケチをつける。
「うるさい」
「リーダー! 敵です! 向こうから敵が!?」
周囲を索敵していた格闘家が急いでやってきてペリーヌに報告する。そして奥の道を指し示す。
それに盾を持った男性プレイヤーが急いで敵の元へと駆ける。
「ええ!? まだHPも回復してないのよ」
「早くしなさいよ」
「黙ってなさいよ」
「リーダー!?」
戦闘中の格闘家が叫ぶ。
「今度は何よ!?」
「ジャニファーが……やられました」
先程の盾を持った男性プレイヤーだろう。
「え?」
ペリーヌパーティーにとって最も屈強なタンクだった。
それが瞬殺されてペリーヌは驚いた。
「早く……きゃあ!?」
「ロニー!?」
「あ、あいつは!?」
女弓兵が敵を見て声を上げる。
「知ってるの?」
「はい。タイタンのハイランカーです!」
敵がゆっくりと近づいてくる。
ユウもその顔を見て、息を呑む。
現れたタイタンプレイヤーはユウにとって因縁のあるプレイヤーだったのだ。
「名前はケイティーです」
女弓兵が叫んだ。
それと同時にケイティーが襲いかかってくる。
「きゃあ!」
女弓兵が弓でガードするも弓を壊れ、相手のナイフで胸を切られる。
「後衛は下がって体勢整えて! 前衛!」
前衛のプレイヤー達がケイティーを囲み、攻撃をする。
しかし、さすがはハイランカー。見事全方位の攻撃を捌く。
「魔法撃ちます」
後衛の魔法使いの二人が叫ぶ。
それに前衛はすぐ距離を取る。
魔法使いは横向きのトルネードをケイティーに向けて放つ。
「「吹き飛べー!」」
しかし、ケイティーはナイフ2本を地面に突き刺して耐える。
「なら私からも! メガフレアー!」
セシリアが巨大な火球をハンマの先からぶっ放す。
巨大な火球がケイティーを襲う。
「どうよ!」
セシリアが自信ありげに問う。
「まだよ!? 気をつけて!?」
ペリーヌが注意する。
ケイティーは巨大な火球を食らっても平然としていた。
そして身近にいた前衛のプレイヤーを瞬殺する。
「直撃したのになんでよ!?」
「デカいだけで威力がないからよ!」
「はあ? だったらバフをかけなさいよ!」
「こっちは体勢を整えるのに大変なのよ。さっきの戦いで武器破壊されたり、デバフやらでさ!」
その間にも次々と前衛のプレイヤーがやられる。
「こっちにもハイランカークラスが必要じゃない?」
「なら、俺が時間を稼ぐ」
ユウは広場の奥へと駆ける。
「こっちだ!」
ケイティーはユウの声を聞いて、立ち止まる。そしてユウへと振り返ると、何かを思い出してのか、無表情だったのが急に怒りの色を見せ、ユウへと猛追する。
「え!? 何!?」
「とにかく今のうちに体勢を整えて。それと誰かハイランカーを呼んできて!」
セシリアは周囲に向け、叫ぶ。
「一瞬、あいつが逃げたのかと思ったわ」
「ユウがそんなことするわけないでしょ!」
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