第254話 Aー15 ヘルプ
「さあ、ダメージを受けた人はHPを回復して」
ペリーヌが周囲のプレイヤー達に告げる。その言葉にプレイヤー達は回復アイテムを使用したり、端末から情報を得ようと動き始める。
「そうよ。早くユウを助けに行かないと!」
セシリアのその言葉にペリーヌと周囲のプレイヤー達の手が止まる。
「な、何?」
何かおかしなことを言っただろうかとセシリアはたじろぐ。
「あのね、相手はあのハイランカーよ」
眉を八の字にさせてペリーヌは言う。
「だから早く……」
「だからどうやって助けろっていうのよ」
「そりゃあ、皆で……」
「無理無理。全員やられのがオチよ」
確かにここにいる中堅クラスがハイランカーを攻めるなんて無茶な話。
「そもそも暴走しているタイタンプレイヤーが一人を狙うってのは、相当恨まれている証拠でしょ? 関わらない方が得よ」
話は以上と言わんばかりにペリーヌは背を向ける。
「…………こんなんじゃあ、助かるんじゃなかった」
「え?」
セシリアの呟き、ペリーヌは振り返る。
「あんた達を助けようと動いたのはユウなんだよ」
「っ!?」
「それなのに……」
「で、でも、助けに向かっても皆やられるよ」
「やられたらいいじゃない」
セシリアは即答した。
「私一人でも助けに行くわ!」
そう言ってセシリアは駆けた。
◯ ◯ ◯
セシリアはユウの走り去った方へ向かう。
するとすぐに道が二手に分かれた。
──どっち?
一つは道が太く、街の中心部へと続いている。
そしてもう一つは細く、街の外れに伸びている。
──ユウの性格なら!
セシリアは細く、街の外れに伸びた道を選んだ。
ユウはきっと被害を少なくするために人通りの少ない道を選んだはずとセシリアは考えた。
また別れ道が現れた。
「ううっ〜、こ、こっち!」
左を選んだ。
が、すぐに行き当たりに会う。
「もう!」
セシリアは急いで道を戻る。
──早く! 早くしないと!
セシリアは道を走る。
そうして何度も何股の別れ道に出会い、迷い、外れ、何度も元来た道に戻る。
「なんでこんなに迷路みたいになってんのよ!」
セシリアは吠えた。
早く助けに向かわないといけないのに。
そしてまた不幸が襲ってきた。
全身ライダースーツのタイタンプレイヤーと中華包丁を握るタイタンNPCだ。
一人でも厄介なのに。今回は二人。
セシリアは反転して路地へと向かう。
が、タイタンプレイヤーが先回りして、道を塞ぐ。
──速い!
ライダースーツのタイタンプレイヤーは拳銃をセシリアに向ける。
「この野郎!」
トリガーが引かれる前にセシリアはハンマーで拳銃を叩く。
拳銃が地面に落ち、その隙にセシリアは2度目の攻撃をとハンマーを振り上げる。
だが、背後からタイタンNPCの斬撃により、セシリアはバランスを崩した。
──どうする? 前? 後ろ?
そうこう考えていたらセシリアはライダースーツのタイタンプレイヤーから回し蹴りを腹に食らった。
背後のタイタンNPCは再度斬撃をと中華包丁を天へと掲げる。
──やばい!
やられる。そう思い、セシリアは目を瞑った。
が、タイタンNPCからの攻撃はなく、ライダースーツのタイタンプレイヤーからの動きもなかった。いや、気配が消えていた。
セシリアはうっすらと目を開ける。
そこにはタイタンNPCではなく青いドレスを着た女性プレイヤーがいた。キリッとしているがまだ幼さの残る顔立ち。それに似合わず手には刀が握られていた。
可愛らしさと危険性のアンバランスがセシリアの意識を射止める。
「大丈夫?」
女性プレイヤーがセシリアに聞く。
「はい。貴女は……スピカ?」
「ええ。それと後ろは私のパーティーメンバーです」
スピカの後ろには活発そうな少女然としたプレイヤーと黒を基調としたメイド服の女性がいた。
「私、リル。こっちはメイプル」
少女プレイヤーが告げる。
「助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ、それより、ここは危険ですので建物内か路地あたりに隠れた方がいいですよ」
メイプルが路地を指差して勧める。
「ま、狙われにくいだけで、どっちも危険だけどな」
とリルが言う。
「あの、ユウを見ませんでしたか?」
セシリアはスピカ達に聞く。
「ユウ?」
セシリアは先程の事の顛末を語った。
「……なるほど。ハイランカーですか。暴走しているとはいえ、それはいけませんね」
「こちらにはユウさんとそのタイタンプレイヤーも見ておりませんので、違う道でしょうね」
とメイプルが言う。
「行きましょう」
スピカがセシリアに向けて言う。
「助けてくれるんですか?」
「これも何かの縁ですし。それにユウはうちのパーティーに入る予定の子ですから」
「ありがとうございます」
セシリアは頭を下げた。
「さ、行きましょう」
「はい」
◯ ◯ ◯
「で、リーダーどうすんのさ?」
白魔法士がペリーヌに聞く。
「どうって何よ?」
「助けに行かないのかってことよ?」
「私達だけで何か出来るの?」
ペリーヌは白魔法士、いや仲間全体に向けて言う。
「別に無茶してもいいんじゃねえの?」
「俺もそう思うぜ。ゲームなんだからチャレンジしようぜ」
「私も助けてくれたんだし。恩を仇で返すのは……ちょっとね」
仲間達はユウを助けに向かうことに賛成だった。
ペリーヌは大きく溜め息を吐き、
「ああ! もう! 分かったわよ! なら助けに行くわよ! 文句はないわね?」
『おう!』
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