第106話 Aー5 分岐
「やあ!」
アルクは叫びつつ骸骨兵を叩き斬る。
「せい!」
ユウは近付いてくる骸骨兵を槍で頭蓋骨を弾く。
「スロウ」
ミリィが骸骨兵たちにデバフをかける。
「ユウどいて!」
ユウが横にどくとセシリアが魔法でつむじ風を出して骸骨兵たちを粉々にする。
◯ ◯ ◯
「ぜ、全部倒した?」
ユウは槍を杖代わりにしつつ腰を曲げ、誰ともなしに聞く。
「倒したわ」
答えたのはセシリア。
そのセシリアは地面に尻を着き、足を伸ばしている。
「いったいどんだけ湧いて出るのよ。百は超えてたはずよ」
「討伐履歴を確かめるとジャスト120ですね」
ミリィが端末から討伐履歴を確認して答える。
「きっつ! そりゃあ転移したらエンカウントは基本だけどいくらなんでも多すぎでしょ?」
「それだけ奥に何かあるのかもな」
アルクが周囲を警戒しつつ答える。
ユウ達は物置部屋の魔法陣から転移して今は石造りの通路にいる。後ろは壁で道は目の前の奥へとしかない。
「戻るときはどうする?」
ふとユウは気付いて聞く。
「そういえば魔法陣はないわね。飛ばしておいて帰りがないなんて嫌な一方通行ね」
セシリアが立ち上がって言った。
「帰りがないぶん奥に進まないといけないってことか」
「何があるのでしょうか?」
ミリィが思案顔で呟く、それをセシリアは、
「何ってお城だから吹き抜けのロビーやラウンジやら、どでかいリビングとか食堂。あっ! あと謁見の
「セシリアさんはここがお城の中と?」
『えっ!? 違うの!?』
そのミリィの発言にユウも一緒に驚いた。驚いてないのはアルクだけ。
「壁を見てください。クリスタルではないですし、それに辺りは薄暗くて出現モンスターが骸骨兵ですよ」
「でもでも全てがクリスタルってわけでもないんじゃない? 地下水路とかクリスタルではなかったんだし。それにゲームとかでは古城にはわんさか骸骨兵だって出るじゃん」
ここだって古城でしょと言わんばかりミリィは両腕を広げる。
「伝記があるということは古城の一つかもしれません……が、外から見た時は古城というほど
ミリィはちらりと奥を見る。
奥は暗く、何も見えない。
ただ生温い風がユウ達を撫でる。
ユウとセシリアは肩を震わせた。
「さ、行こう」
アルクは奥へと歩を進める。続いてセシリアとユウも。
「まっ、待ってよ〜」
セシリアが慌てて続く。
◯ ◯ ◯
旧地下水路。今はトンネルのように暗く不気味である。そんな中を軽快な足音が鳴り響く。そしてその足音は分岐点で止まる。
「あん? アルトのやつはどうしたよ?」
分岐点に戻ってきたソーマはベルに聞いた。並のパーティーは岐路に差し掛かると二手に別れたりはしなのだが単体で最強クラスのホワイトローズでは分岐路に差し掛かると分岐点に一人を残して二手に別れるのは普通のこと。
ソーマとアルトはここでパーティーと別れ、さらに進んだ所で新たな岐路に差し掛かり、二人は別れた。そしてソーマは自分が進んでいた道が壁に突き当たったのでベルのいる分岐点に戻ってきたところである。
ベルはマップ作成及び、いざという時のため分岐点にいるのだ。
「まだですね」
「んじゃあ、俺は先に行っとくか」
と、そこでソーマが来た道から駆け足の音が鳴る。
音は徐々に近付いてきて、暗闇からアルトが現れた。松明も付けずに現れたせいかぼんやりとしていてゴーストのようにも見える。
もちろん松明や灯りとなるものを使用せずに進むことは可能だがモンスターも見えにくくなるゆえ基本松明等を使用するのは普通である。だが、ハイランカーになるといちいち松明等を使用せずに進むのは普通となってくる。
「おいおい。遅いぞ!」
「あのな、こっちはさらに別れ道があって一つ一つ潰してたんだぞ」
「それを言ったらこっちもだ」
「まあまあ、お二人ともヴァイスさんの下へ行きましょう」
三人はヴァイスとサラが進んだ道を進む。
道中モンスターが暗闇から突如現れるが彼らは驚くこともなく、歩を止めずに撃退する。
「お! 別れ道。ベルどっちだ?」
ソーマが問いに、
「お二人は右に行ってますね。左は何もなかったようです」
三人は右へと曲がる。
そしてまた先程と同じ様に出現したモンスターを撃破し続ける。
「ごちゃごちゃとうざいわ!」
アルトは拳を前へと突き出す。すると横向きの竜巻が発生して前方の敵を全て撃退する。
「よし行くぞ」
「行くぞってお前もう少しスマートのいけよ」
「うるせえ。狭いのにわんさか湧いたらうざいだろ」
地下水路は水が流れてないぶん広いが脇の人が歩く道は狭い。
もちろん狭いと感じるなら水路を歩けば良いのだが、水路は脇道より深く下にありそれだと壁際の扉を見失う可能性があるのだ。
ゆえに彼らは脇の歩道を歩いている。
そしてモンスターを倒しつつ道を進み、時には分岐点に出くわしてベルが次の道を指し示す。
すると進行方向の暗闇が青さを持ち始める。それはプレイヤーの光。進むと二人の姿が現れる。
「おう、幽霊かと思ったぜ」
アルトは二人に笑いながら声をかける。
「ヴァイスが止めなかったらボロ布を着た幽霊にナイフを投げてたわ」
「ダメージジーンズって言うんだよ」
アルトは自身のジーンズ指してセラに抗議する。
「それより当たりですか?」
「ベル! それよりって何だよ!」
「はい。道の奥にこれが」
とヴァイスは体をどけて三人に道の奥にある階段を見せる。
「今までどおりの階段じゃねえのか?」
アルトが階段を見て言った。するとセラが、
「ここまでのは全部見て回ったわよ」
「てことはここがラストと」
ホワイトローズの面々は階段を
「そういえばあの子達には会った?」
「あの子?」
「もしかしてアルクさん達ですか?」
ヴァイスが聞く。
「先進んでるんじゃねえか?」
「そうかしら? あの子達がサクサク進めるとは思えないのよね。会ってない?」
「いや、会ってねえよ。なあ?」
アルトはソーマに振る。
「ああ。見てないぜ」
セラは首を傾げ、
「本当に先に進んでいるのかしら?」
◯ ◯ ◯
一方その頃ユウ達は。
「なんかでかいドラゴンの骨があるんですけど!?」
初めに声を出したのはセシリアだった。
通路を進んだ先は大きな広間。
大きな庭付きの一軒家が立ってもまだ余裕のある広間であった。だが、その広間の半分ほどをドラゴンの骨が占めている。
ユウ達は広間には入らず通路から相談をする。
「近付いたらあのドラゴンの骨が骸骨兵のように襲ってきたり?」
「あるかもね」
セシリアの問いにアルクが答える。
「
「断言はできないけど。その可能性は高いかも」
「嘘でしょ! なんでここに中ボスがいるのよ!? まだ城にも入ってないのに!」
ユウ達は排水路に入って最初に見つけた階段で物置部屋に辿り着き、そこから隠されてた魔法陣で見つけてここまで来たのだ。
まさか中ボスが待ち構えていたとは考え難い。
「でも、もしかしたら本当に中ボスで城にはラスボスの黒騎士グラムディアがいるのでは?」
ミリィが考えた意見を述べる。
「いや、あいつは山の上でしょ?」
セシリアがすぐに反論する。
確かに黒騎士グラムディアは山頂に陣取っているという。それにグラムディアはドラゴンを使役していた。ここは麓の洞窟奥。大きなドラゴンが入ることはできないはず。しかし、それを言ったら城の前で出くわしたクリスタルドラゴン、目の前のドラゴンの骨の説明はつかない。
「もしかしたら宝玉と聖剣かな? 確か物語ではそれで結界を張ったとか?」
ユウが先程聞いた物語から意見を述べた。
「だとしたはあのドラゴンは竜王? 竜王は山の上で殺られたんじゃ?」
「そっか。……ん!? でもここは城でもないらしいし……どういうことだ?」
ユウは眉間に皺を寄せ、唸る。
「物語全てが真実ではないのでは? やはりどこか脚色されてるのでは?」
セシリアが疑問を投じる。
「脚色ねえ。まあ、そうだとしてもどうするこれ?」
「ここまで来たんだからやってやろう!」
アルクは剣を鞘から抜いて構える。
「アンデッド系ですから属性は闇かと。優位属性は光属性。大きいですけど骨しかないので当たるのは難しいかと」
「範囲系ってことね。それなら任せなさい!」
セシリアはぎゅっと杖を握る。
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