第189話 Pー14 救出作戦①
少し前に時間は
アリス達はアルクが連れ込まれたであろうビルの500メートル圏内にある駐車場に移動した。駐車場には大型トラック停まっていて、アリスは鏡花に誘われてトラックの荷台へと入った。
一見どこにでもある大型トラックの荷台は改造されていて、モニターや電子機器、機械類、人が入れるほどの金属のカプセルが置かれていた。その荷台にはアリスの知らない女性がいた。
「この人は風祭莉緒。誰か分かるかい?」
その質問はつまりゲームプレイヤーということだろう。
「ええーと……ううーん」
解放されたもしくは消滅されたプレイヤーを思い出そうとするも、元々アリスは他のプレイヤーとは交流がなかった。
──ケイティーはまだゲーム内にいそうだし。
「ヒント、アヴァロンプレイヤーだ」
「知りませんよ!」
ただでさえタイタンプレイヤーを知らないのにライバル作品ならなおのこと知らない。
「残念。有名なプレイヤーなんだが」
「スゥイーリアとか?」
アヴァロンで有名と言えばスゥイーリアだ。
「正解!」
「おっ、正解。やったー。……ええ!? スゥイーリア!? あなたが!?」
アリスは目を丸くしてスゥイーリアを見る。
スゥイーリアといえば最強のアヴァロプレイヤーだ。
「は、はい。スゥイーリアこと風祭莉緒です」
アリスは信じられないと風祭を上から下まで見る。
「すごい人物にオファーしたんですね」
アリスは鏡花に言う。
「まあね」
「そちらは本当にユウさんではないので?」
「うむ。前に話した通り、本当に中身が違うのだよ。ね?」
「うん。私は井上風花。ゲーム名はアリス。タイタンプレイヤーよ。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さて、挨拶はそのくらいに救出作戦と行こうか。胡桃、モニターに地図を」
「はい」
胡桃はタブレットを操作するとモニターに地図が表示される。
「川を挟んで東側三つが警察。そして西側のビルを私達が調べ、そして救出する」
「救出ってどうやって?」
相手は軍の特殊工作部隊。対してこっちは素人で、ただのゲームプレイヤー。ゲーム内では強くても現実ではそうではない。
「調べて、当たりだった場合は……」
鏡花は金属カプセルのパネルを操作すると空気が抜ける音とともに蓋がゆっくり開く。
そこには人が──いや人形が収められていた。
「これを使う」
「なんですか?」
アリスは聞いた。
「アンドロイドだよ。これを風祭莉緒君が操り敵を倒すんだよ」
「大丈夫なんですか?」
「機械だからね。壊れても問題はない」
「操るって遠隔操作? 遠隔と言えば。遠隔かな」
「ん?」
「風祭莉緒とリンクさせるんだよ」
と鏡花はアンドロイドの頭部を突っつく。
「ええ!?」
「VRMMOをやっていたのだから理論は分かるよね?」
「うん。でも大丈夫なの?」
アリス達はVRMMOで悲惨な目に遭っている。莉緒にはVRMMOに抵抗がないのだろうか。
「大丈夫です。すでにテストは何回か行っております」
「そう」
莉緒がそう言うなら問題はないだろうとアリスは飲み込んだ。
「救出作戦の詳細を説明する。まず二つのビル、北側をアルファ1とし、南側をアルファ2とする。アルファ1は葵とアリス君。いいね?」
「本当にやるんですか? 私、戦闘能力は……」
「そこは葵がいるか問題ない。それに闘うのではない。調査だ。当たりと判断したら連絡するだけ」
「……はあ」
「続いて、アルファ2を胡桃が」
「承りました」
胡桃が胸に手を当て、慇懃に返答する。
「ん? 胡桃さん1人なの? 大丈夫なの?」
「大丈夫。彼女はエキスパートだからね」
「はい。アリス様、ご心配ありがとうございます」
「それなら……いいけど」
◯
「ねえ、どうして裏手なの? それにこの格好は?」
アリスは台車を押しつつ聞く。
今、アリスと葵は運送業者風のユニフォームを着て、その下に防弾チョッキをそしてテーザーと実弾の拳銃、ナイフを装備し、アルファ1のビルの裏手へと向かっている。
「それは表には監視カメラも多いですし、人が入ったとなるとすぐに敵にバレてしまいます」
葵は地図の書かれた紙を見ながら言う。
「秘密の拠点って普通は裏手にも監視カメラもあるでしょ?」
ビルの裏手へと続く路地裏には入ってすぐに監視カメラがある。しかも通り方面と路地裏に向けて。さらにドア上と奥にも監視カメラが。
そこへビル裏のドアが開き、いかにも人相の悪い男が路地裏へ出てきた。
そしてアリス達を睨む。
たぶん中から路地裏にやって来たアリス達を警戒してのことだろう。
アリスは目を合わせないようキャップのつばを下げる。
すれ違い──脇を通ろとした時、
「なんやコラ!」
と怒鳴られる。
恐怖よりも驚きが増し、次に怒りが湧いて出た。
アリスは男を無視して台車を押しつつ横を通り、葵も地図を見つつ、横を通る。
「どうします?」
ドアを通り過ぎてからアリスは聞く。
もうすぐで端の非常階段に近づく。
どうにかしてドアを開けて中に
「止まってください」
「え? うん」
台車を止めると男が肩で風を切って向かってくる。
「おい! おめえら……」
続きの言葉は葵のテーザー銃で止められた。
男は倒れるというところで葵に抱き止められ、物陰に移動させられる。念のために口と手足をガムテープで巻かれる。
「え? いいの倒して?」
「はい。監視カメラはジャックしました」
と言いながら葵はドアを見つめる。
「この短期間で!?」
「いえいえ、この拠点を知った時から準備はしていましたよ。それに私は量子コンピュータの一体ですので。これくらいちゃちゃっと出来ますよ」
「へえ。でも、大丈夫なの? 相手も量子コンピュータでしょ? トラップとかあるんじゃない?」
「まあ、今のところ問題はありませんよ」
「ふうん。で、ドア開けないの?」
葵は先程からドアを睨んでばかりで動かない。ドアには3つの鍵穴が縦に並んでいた。
「少し待ってください。ドアを開けたら私が入りますのでアリスさんは非常階段二階のドア前で少し待っててくださいね」
「私は二階なの?」
「はい。私がこのドアから入ってしばらくしてからインカムで合図を送りますので、そしたら二階のドアから侵入してください」
そう言って、葵は二つ目の鍵穴をピッキングする。
「これで大丈夫です」
「なぜ二つ目だけを?」
「他はダミーです。本当に使われているなは二つ目です」
「よく分かったね」
「エコーや集音によるものです」
「でも、鍵は?」
「その時は拳銃で」
それならここも拳銃でよかったのではとアリスは考えた。それを察して葵は、
「ここは無理に開けると警報が鳴る仕組みとなっています」
「それなら二階もやばいんじゃない?」
「合図を出した頃には警報が鳴っても問題はありません」
「なるほど。……って、こんな時に話し込んでごめんね」
「大丈夫ですよ。胡桃さんもまだ到着していないようですし」
「あっ、同時にだっけ」
そして葵は台車の箱からライフルと弾薬、閃光弾、その他武器を取り出しては装備する。
「こんなものですかね」
「私は?」
「敵規模からアリスさんは拳銃のみで問題はないかと」
「敵規模? 分かるの?」
「はい。監視カメラのログから」
「……ん? 監視カメラのログってそれじゃあ、ここにアルクがいるかどうかも分かるんじゃないの?」
「敵が自分達の身元がバレるログを残しますか?」
「それもそうか。でもそれだと監視カメラのログも当てにならないのでは?」
「彼らも全てのログを消すと怪しまれるので消したログの上にはダミーで上書き。そして一部をそのままにしている……と、胡桃さんから準備完了の合図がきました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます