第175話 EXー2 臨時会合

 どこかお城の作戦会議室のような部屋。

 部屋中央の長テーブルの上には、おる映像が空中に投影されていた。


 それはアリスとクルエールの仮交渉。アリスには気の毒だがリアルタイムで隠し撮りされ、流されていたのだ。


 その隠し撮りされた映像を観ているのはロザリー達と人間のキョウカであった。

 投影された映像では仮交渉が終わり、アリスが消えて、次にクルエール、そしてハイペリオンが消えた。


「これまじで大丈夫なのか?」

 ベリーショートヘアーのセブルスが怪訝な声を出す。


「大丈夫と信じたいですわね」

 マルテが少し眉を八の字にさせて言う。


「大丈夫よ! ね、葵?」


 マジシャン風の服装のロザリーが毅然とした黒髪ヘアーの葵に聞く。


「ええ。

「では、先程のはなんでですの?」

 お姫様風のヤイアが聞く。


「あれはあくまでこれからユウさんをその気にさせるためのものです」

 ヤイアの問いに葵は答える。


「ふうん。で、そのユウはどうなんだい?」

 唯一この中で人間であるキョウカが聞く。


 まだ輪に馴染めてないのかキョウカが発言するとほんの少し空気がピリッと張り詰める。


「これからこの映像を使いユウさんに話を持ちかけます」

「アリス君も可哀想に。だしに使われるだけなんて」

「でも解放されるんだから良いだろ?」

 セブルスは頬杖をついて言う。


「そうだね」

「麒麟児はどうなんですか? 今回の件で何か影響は?」

 マルテが聞く。


 クルエールと麒麟児は会わせてはいけない。そして両方とも量子コンピュータのAEAIである。人間とは違い、ほんの少しでもフィールドで変化があった場合、こちらに気づく可能性がある。


「影響はありません。現在はプレイヤーと共にモンスター狩りをおこなっています」

 とクルミの姿をしたマリーが答える。


「本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。一切の影響ありません。ですよねセブルス?」

「え? ああ」

「で、次はユウというプレイヤーですよね。私、あんまり接点はないのですが、そのプレイヤーで大丈夫なんですか?」

「私はリゾートイベント時にメイド役を務めておりましたので彼……いえ、彼女で問題ないかと」

「あいつが女ってのがびっくりだよな」

「セブルスはベリショーなのに、やっぱ女だよねー」

 ロザリーがセブルスを揶揄からかう。


「うるせー」

「やっぱ内面でしょうか?」

 ヤイアは首を傾げる。


「でもセブルスの方が粗暴だよ?」

「ロザリー! お前なー!」


 セブルスの言葉を無視してロザリーは続ける。


「それで葵、ユウは交渉に乗るかな? てか、どういう風に交渉するの? 今のところアリスの方が交渉に乗り気だけど?」

「アリスが乗り気だからこそそれを上手く利用します」

「で、交渉と」

「でも、次で交渉が成立してクルエールをユウさんの中に入れるわけではありません」

「ええ!? 違うの? 何で?」


 それにキョウカが、

「元々ユウは乗り気ではないのだろ? 聞くところによると何回か話をしてもうんとも言わないらしいじゃないか?」

「ええ。キョウカさんの言う通りにユウさんはあまり乗り気ではありませんでした。ゆえに交渉も今まで上手く出来ませんでした。でも、アリスさんが乗り気となればユウさんも重い腰を上げるでしょう」

「なるほど。それで、これからどうやってそのユウを本交渉まで誘導させるのかな?」

「次の鬼ごっこイベントでユウさんを参加させます。そのイベントで勝った方が本交渉できると伝え、二人で競いあわせます」

「次のイベントはアヴァロン側はアンケートで選出されるのでしょ? ユウは頑張ってはいますが、まだ中級クラスですよ。タイタンの脅威対象ではないのでは?」

 マルテが疑問を述べる。


「いや、ユウはエイラを倒した。完全に直接というわけではないが、エイラは退場した。彼女は人気があったからタイタン内ではユウを恨んでいるプレイヤーは数多くいる。だろ?」

 キョウカは葵に聞く。


「はい。まだ中間前ですが、彼女も選ばれるでしょう。そして鬼ごっこに参加してもらい、アリスと勝負してもらいます」

「決闘かい?」

「いえ、より多くの敵を倒した方にいたします」

「アリス君がより多く倒したら?」

「結果を先に知ること、そしてプレイヤーに伝えるのは我々です」

「出来レースか」


 キョウカは肩を竦めた。

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