第249話 Tー14 選択

 大きな轟音と地響きを受けてティナ達は少しばかり身を屈んだ。


「今のは何!?」

「おい! あれを見ろ!」

「なんだあれは?」

「炎の竜巻?」

「……嘘だろ」


 ティナ達が顔を向ける方角には炎の竜巻が空に向けて伸びている。


「あれってアヴァロンの魔法か?」


 1人のプレイヤーが呟いた。


「アヴァロンプレイヤーがいるのかよ?」

「んなわけねえだろ」

「でもあれってどう見ても魔法だろ?」


 確かに炎の竜巻など普通はない。

 そんな芸当が可能なのはアヴァロン側の魔法によるものであろう。


「どうするのですか?」

 ティナがレオに聞く。


 これからキョウカのもとへ向かうのか。それともあの炎の竜巻を調べに行くのか。


「ここは二手にわかれよう」


 レオの提案に皆は頷き、班を二つにけた。

 レオは炎の竜巻を調べに。そして残りはキョウカがいるというエリアに向かうことにした。


「1人で行くのですか?」

「問題ない。こう見えて俺はハイランカーだ。あの程度の魔法くらい怖くもない。お前達は気にせず、キョウカのところへ向かってくれ」

「……ええ。分かったわ」


  ◯ ◯ ◯


 ティナ達は走った。

 早く森を抜け、キョウカに会おう。


 でも少し先程の炎の竜巻が尾を引っ張っていた。


 ──やはり私も調べに行くべきでは?


 しかし、ティナにはパーティーリーダーのキョウカがロザリー達とグルなのかを調べないといけない。


 ここで「やはり気になるからレオのとこへ」と言えばティナも疑われるだろう。


「どうした?」


 一緒に行動するプレイヤーの1人に問われた。

 悩んでいるのが顔に出てたのだろう。


「いいえ。ただ、あの炎の竜巻について気になって」

「それはレオで問題ないだろう。それにああいうことがあるってことは戦闘があったということだろ? なら戦闘経験豊富なレオが適任だろ。俺達が行っても足を引っ張るだけさ」

 と言い、ティナの肩をポンポンと叩く。


「……ですね」


 それから走り続けて、ティナ達は森を抜けた。


「谷はあっちですね」


 西の方角に山脈があり、その山と山の間に隙間がある。


「あの谷でいいのか?」

「たぶん」

 ティナは頷く。


「あっちにも谷があるけど」


 プレイヤーが少し遠いところに谷間を見つける。


「どっちだ?」

「こっちでしょう」


 ティナは最初に見つけた谷を指差す。


「あっちかもしれないぞ」

「……それじゃあ、また二手に別れましょう」

「またか? 数が減ったらやばいんじゃないのか?」

「戦う気ですか?」

「場合によってはな」

「……私はこっちの方に向かうので。あっちだと思うならどうぞ」


 そう言ってティナは最初に見つけた谷へと歩き始める。


 そこでまたメッセージが届いた。今度はキョウカが古墳エリアに向かっているという情報と古墳エリアに向かうルート情報がメッセージに記載されていた。


「古墳エリアに何があるんだ?」

「知らないわ」

「お前んとこのリーダーだろ? 何か聞いてないのか? もしかしてキョウカもAIとかじゃねえよな?」


 ティナはわざとらしく大きく息を吐き、


「貴方、レオパーティーのメンバーよね」

「そうだが」

「レオが以前から公安と連絡を取ってたという噂はどうなの?」

「噂だろ」


 それは嘘だとティナは見抜いていた。なぜならキョウカからレオが公安と連絡を取り合っているという話を聞いていた。


「もしかしたらレオがAIなんじゃない?」


 少し苛立ちが伺える声音でティナは聞く。


「んなわけねえだろ」


 男性プレイヤーはムキになって言葉を返す。そして周りのプレイヤーにも問う。


「あ、ああ」、「まあ、たぶん……な、「今、そんな話をしても仕方ないでしょ」と、他のプレイヤー達は言う。


「結局、ここで考えても何も分からないんだから向かうしかないでしょ」


 ──そういえばクルミさんはどうなのだろう? 知ってるの? てか、今はどこに?


  ◯ ◯ ◯


「ふう」


 アーミヤは戦闘が終わり、一息ついた。

 辺りは焼き野原。さらに地面も大きく抉られ、緑豊かな森の面影がなかった。


「貴方が来てくれて助かりましたよ」

 アーミヤはレオに礼を言う。


 相手を舐めていたわけではなかった。それでも本気でいけばアーミヤはチェンと2人で、マリーとセブルスは倒せると踏んでいた。


 が、実際はかなり難航。レオが来てくれなれば最悪な結果を迎えていた可能性もあった。


「ねえ、私にはお礼ないの?」

「ああ、チェンも来てくれて助かりました」

「だろ? 私がいなけりゃあ、難しかっただろ?」

「ええ」


 それを聞いたチェンは得意げな顔をする。


 とは言え、一番の功労者はレオこと麒麟児。


「じゃあ、俺は古墳エリアに向かう。お前達はバックアップと残りの日本のAI達を潰せ」

「了解です。あとはお任せを」


 アーミヤの言葉を聞いたのち、レオは古墳エリアに向けて駆ける。


「チェンはエクシア達の元へ」

「まーた戦闘かよ。疲れるわ。アーミヤは?」

「私はタイタンプレイヤーを煽りますよ」

「あいよ。……というか、あいつらまだ戦ってんのかよ。だせえな」

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