第97話 Rー2 混乱と転換期

 日本政府は電磁パルスの攻撃があった日の夜、本日2度目の緊急会見を行った。


 マスコミは電磁パルスの被害について、そして北朝鮮に対しての報復発表と考えていた。


 しかし、官房長官が発表したのは中国軍が電磁パルス後に陸上自衛隊基地を攻撃し、それを陸上自衛隊が撃退。さらに中国軍がJ・シェヘラザード社と共に人工補助脳及び、インプラント型通信デバイスにより国民を操作していたことも発表。


 日本政府がこれ等を発表するきっかけは中国海軍の日本近海へ接近したことであった。日本政府はその行為を第二次攻撃準備と勘違いしたのだ。本当はただの圧力であったのに。プリテンドのことは発表するなというメッセージである。しかし、日本政府はそれを見誤った。


 日本政府のプリテンド発表のあと、すぐに中国報道局長は事実無根の出鱈目、国民の怒りを中国に向けようとしたプロパカンダと記者会見で告げた。


 それに対して日本政府は戦闘時の動画を流した。そこには体を乗っ取られた日本国民、そして中国製のファイヤービー、改造クモ。さらには目黒のデモや今まで発生した事件についても公表した。


 しかしこれもまた、中国国内では改造クモが指摘されて、日本政府のでっち上げと報じられる。


 翌朝、日本政府は十数名の亡くなった中国軍人の顔写真を発表。これには中国国内では一時騒然となった。名前の判明しない軍人はネット住民により特定された。中国政府はすぐに対応してマスコミには報道規制を引いて亡くなった軍人の顔写真、名前を隠蔽した。ネットにも監視が向けられ軍人の顔写真は出回らなくなった。その行為が逆に真実性を押してしまった。


 日本政府は中国政府が遺体を中国軍人と認めない場合、日本国内で合祀されると告げた。

 それに亡くなった軍人たちの家族が中国政府に遺体が戻るように頼んだ。けれど、その家族が忽然と消えた。そしてそれを報道したテレビ局員が捕まった。ここから国民の不安が徐々に募り始めた。


 そこへ日本政府がプリテンドの存在について科学的に説明。危険なプログラムやAIが脳機能を奪うための神経接続などが説明された。


 そしてアメリカやヨーロッパの研究者たちがプリテンドの件を危惧し、各国の大統領、首相もプリテンドの存在を認めた。


 この頃、海外で中国では軍人や国家転覆罪に当たる人物には特殊なデバイスが埋め込まれることが話題になった。


 中国政府はすぐにデマだと反論。

 しかし、丁度その時、香港では香港人全員がそのデバイスを強制的にインプラントする案が可決されようとしていた。反対派の香港議員はすぐに待ったをかけた。けれど待ったをかけた議員たちは強制的に手術を受けさせられ戻ってきた。彼等は人格が変わり、共産主義の人間となってしまった。


 それには香港のみならず世界中で話題になった。今までプリテンドの件は信じていない者が多数であったがこれにより、大きく傾いてしまった。


 香港で大規模なデモが起こった。そしてデモに関わった活動家は捕まり、デバイスを埋め込まれた。政府はすぐに解放することによってプリテンドというものは存在しないことを証明した。さらに脳内にインプラントするデバイスは人体に安全であると発表。


 しかし、テレビ局のニュース番組スタッフが活動家たちを取材した時に、一人の活動家が急変して亡くなり、すぐ甦ったことが生放送で報じられた。警察はスタッフと活動家家族、周囲を封じ、処理をした。どのような処理をしたのかは不明であるが発砲音、さらに警察側に負傷者が出たことに香港国民の不安が強まった。


 さらにアメリカに亡命した活動家はアメリカで手術を受け、デバイスを抜き取った。

 そのデバイスは身分不明の遺体に埋め込まれた。すると遺体は動き、暴れまわった。これを全世界に報道され、アメリカ大統領は中国製の人工補助脳、デバイスは危険であると発表。


 中国政府はすぐに反論。アメリカが中国を陥れようとするフェイク動画でありプリテンドではないと。

 だがそれはあながち間違いではなかった。アメリカの件は本当にAIによるプリテンドではなく、デバイスのバグであった。


   ○ ○ ○


 この頃、日本ではJ・シェヘラザード社の人工補助脳とデバイスを手術により抜き取ることが盛んに行われた。ただ人工補助脳だけはなかなか抜き取ることができずにいた。


 日本国民はプリテンドの不安と北朝鮮への対応について不満が貯まり内閣支持率は低下。 国会でも野党が対応について首相、大臣に詰問を投げていた。しかし、内心では野党も政権交代で与党になったところで対応について二の足を踏むことしかできない。


 そんな中、思わぬ人物いや存在から人権保証の訴えの声明が為された。当初、日本政府は悪戯と考えていたが彼女等が証明としてある情報を流した。それは日本政府も知らない中国軍の日本国内の活動記録と様々な証拠、そしてアイリス社事件の首謀者は自分達であると。


 日本政府は彼女等の存在、真実性の有無については語らなかったがアイリス社事件の容疑者として認めた。


   ○ ○ ○


 彼女等は自分達はプリテンドではないと告げ、自我を持つAIであると宣言した。そして日本政府に人権保証を求めた。


 この声明は日本政府のみならず全世界に発信された。

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