第246話 Tー11 迷い
外から来たという公安の者からの情報はタイタンプレイヤー達を混乱させた。
ある者は信じ、ある者は懐疑的で、またある者は、「とりあへず、キョウカを捕まえよう」と言う。
そして今、大勢のタイタンプレイヤーに詰め寄られているのがキョウカのパーティーメンバーであるティナ達だった。
「なんでお前んのとこのリーダーを?」
「どうなってんだ?」
「キョウカはどこだ?」
「あれって本物なのか? なあ、何か聞いてる?」
「お前達もグルなのか?」
「何か言えよ」
幾つもの質問がティナへと投げかけられる。
「待って下さい。私達も何も知らないんです。キョウカさんも見つからなくて……」
「知らないって……何か聞いてないのかよ」
「ロザリーとグルってわけではないよな?」
質問から愚痴へと変わる。
ティナに向けられるその目と言葉がティナ自身を縮こませる。
すぐにその場を去りたくてティナは拳を握りしめる。
そこへレオがやってきた。
「皆、待て。ここはまずキョウカを探そう。外から来たという奴らが言うには谷にいるらしい。迎えに行こうと思うが付いてくる者はいるか?」
タイタンプレイヤー達は互いに顔色を伺いつつ、
「……ま、まあ、一応行ってみるかな?」
「だな。何もすることないし」
「そうか。……で、お前はどうする?」
レオはティナに聞く。
「い、行きます」
そしてレオとティナ、あとは10数名のタイタンプレイヤーが谷へと向かう。
◯ ◯ ◯
情報の後このフィールドのマップデータとキョウカがいるとされるポイントがタイタンプレイヤーに送られた。
プレイヤー達は端末からマップを見ながら、歩き進めていた。
「他にもポイントに向かっているプレイヤーがいるな」
一時的にレオと共に行動する男性プレイヤーが誰ともなしに言う。
「そりゃあ、真偽はともかくキョウカと接触しようとするプレイヤーはいるんじゃない」
隣を歩く女性プレイヤーが返す。
そこへ端末にメッセージが届いた。
「なんだ?」
プレイヤー達はメッセージを開いた。
『私はヤイアと言います。ここに全てのプレイヤーに真実を語ります』
そこからは衝撃的な情報が載っていた。
まずヤイア達が日本製の量子コンピューターであること、そして今回の件は先に捕らえた中国製AEAIのクルエールを使ってAEAIの麒麟児を捕縛すること。さらにそれによって中国プリテンド計画を阻止すること、それにより日本政府に危機感を知ってもらうため今回の計画が成されたと告げられていた。
デスゲームは嘘で、イベントで解放された者、イベントによって消滅処分となった者は等しく解放となっている。そしてプレイヤー達を閉じ込めた原因はプリテンドであること。
その後に補足としてAEAI、プリテンド、アイリス社の説明が書かれていた。
そして今、外から来た公安を名乗る者達の正体は中国当局のAEAIであり敵であること。そして現在、戦闘中であり、カナタの正体は麒麟児であり、レオは中国当局のAEAIと繋がっているとメッセージに書かれている。
「待て待て待て」
男性プレイヤーが急いでレオの前に立ち塞がる。
「レオ? これは本当なのか?」
「こんな出鱈目をお前は信じるのか?」
「嘘なのか?」
「嘘だ」
レオは即答した。
けれど周りは動揺していた。
「信じられないか?」
レオは問う。
「信じたいさ。でも、お前、噂だとちょっと前から外から来た者と連絡を取り合ってるというじゃないか」
「噂だろ」
「おい。本当か?」
男性プレイヤーはレアだはなく、共に行動する女性プレイヤーに問う。その女性はプレイヤーはレオパーティーの者だ。
「えっ、あっ、う、うん」
問われた女性プレイヤーは目を逸らして答える。
「なんで目を逸らすんだよ!」
すると他のプレイヤーも、
「やましいことがあるのか?」
「まじなのか?」
「もう! どっちが本当なの?」
レオは大きく息を吐き、
「落ち着け。よく考えてみろ? 仮にこのメッセージが本当なら俺が中国当局のAEAIと手を組んだなんのメリットがあるんだ?」
そしてレオは目の前の男性プレイヤーを横に押しやって前へ進む。
「キョウカに会いに行けば真実は分かるだろ。信じられないなら戻れ。真実を知りたいならついてこい」
プレイヤー達はどうするべきか逡巡する。
先にティナがレオの後を追い、徐々にプレイヤー達も迷いつつも焦りからか後を追い始める。
彼らは皆、キョウカの下へと向かう。
何はともあれ、今はキョウカと会って話を聞くこと。それが最善なのだと信じて。
けれど迷いはある。どちらが本当のことなのか。
レオは嘘だと言う。
でも、それも怪しい。
グレーな部分がある。
レオは中国当局と手を組むメリットはと聞いた。
なら、キョウカは?
キョウカはあの深山家の令嬢。本名は深山鏡花。
財閥とも言える深山家は日本を裏で牛耳るとかフィクサーであるという噂もある。
その噂はともかく、日本政府に影響力のある家柄というのは事実である。
ならば敵対する中国当局と繋がりがあるのだろうか?
レオとキョウカ。
どちらが正しいのか。
もしかしたら……どちらも裏切っているのかもしれない。
何度考えども疑問の答えは訪れなかった。
彼らは黙々と歩き続ける。
疑問を胸に抱えて。
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