第47話 Tー1 合併案
タイタン攻略の情報を生業とするプレイヤーは数多くいるがブラームスはその中で最古参のプレイヤーであり、そしてどのプレイヤーよりも迅速で正確な情報を提供していた。
そのブラームスが抜けたことはタイタンプレイヤーとしては大打撃であった。
ブラームスの秘書をしていたサラはブラームスの席に座り、机に肘を当て、額に手を当てていた。
「……私に務まるのでしょうか」
サラは弱々しく部屋にいるメンバーに尋ねた。
「今は君が適任だよ」
「そうよ。一番近くにいたんだし」
「なんかあったら助けるしさ」
「誰よりも一番ブラームスの近くにいたんだし」
「大丈夫です」
攻略班のメンバーが口々に声援をかける。
サラは諦め混じりの息を吐いた後、
「では、高ランカーの中で解放されたプレイヤーのリストと新しくなった街の情報、そして昼からのストーリーイベントの3つに班分けします」
ブラームスならこうするだろうと考え、サラは指示をする。
ノックの後、後輩のティアが入室する。
「班長、お客さまが班長に会いたいと来ています」
部屋が静かになる。そして皆が自分に
目を向けていることに気づき、
「誰ですか?」
「レオさんです」
「通してください。皆さん、すみませんが席を外してください」
部屋にサラは一人となり、少ししてからレオが部屋に入ってきた。
「やっぱ君が班長をやっているのか」
「ええ。仕方なく。それで今日はどのような用で?」
と、言ってサラはレオにソファーへと勧める。
そこでサラは自分が班長になったことでお茶を持ってくる者がいないことに気づいた。だが、後輩のティアが気を使ってか、代わりにお茶を持ってきてくれた。その行為に彼女を次の秘書にしようと内心決めた。
「今日、伺ったのは合併案についてだ」
「合併案ですか?」
サラは中指で額をかき、
「それはうちとそちらがですか?」
「それだけでなく前回イベント攻略に集まったパーティーを含めてだ」
「それだと大規模なパーティーになるのでは?」
「いや、今回の解放者に高ランカーや名だたるプレイヤーが含まれていた。俺の知人でブラームスを含めて6名が解放されている」
「それでも……多くても40人近くのパーティーになりますよ。それにそれぞれのパーティー方針とかありますし。私たち攻略班は全てのプレイヤーに平等に情報を提供するのがモットーですし」
レオはその言葉に強く頷き、
「そうだ。だが命が懸かっているんだ。まあ実際、本当に死んでいるのか分からないんだかな。それでもやはり方針とかは二の次でよくないか? うちのパーティーもそうだがそちらも元々のイベント参加メンバーは半分以下なんだろ?」
「ええ」
「合併すれば人員も増え情報収集も楽になるだろ」
「……そうですけど。でも」
サラは迷った。人員が増えることはいいことだ。しかし、
「情報収集の仕事ができるのでしょうか?」
攻略の情報収集は私たちの仕事である。レオたち、その他のパーティーは攻略をメインとしている。さらに自分たちが手に入れた情報を開示するのを快く思うだろうか。
「俺たちはイベント攻略を。そして得られた情報を君たちに提供する。君たちは情報収集ができ全プレイヤーに攻略情報を提供できるだろう」
「本当にうまくできるでしょうか?」
「今すぐ返事をってわけではない。時間を作って皆を集め、そして話し合いをして決めようと思う」
○ ○ ○
「合併案ですか」
レオが去った後、サラはメンバー全員を集めレオが提案した合併案についての話をした。
「ええ。皆さんはどう思いますか?」
ブラームスならこういう話はごく少数のメンバーにだけ話すだろうが。今日なったばかりのサラは全メンバーに聞くことにした。
「私は賛成! ブラームスがいない今は合併しておいた方が良いと思う」
それは暗にサラでは不安ということだろう。
「俺は反対かな。他の奴って戦うことしか頭にないだろ。結局いいように扱き使わかれだけだって」
すると隣の女性プレイヤーが、
「とか言って本当はティアが狙われるからでしょ」
ティアの部分は小さく言う。
「ち、ちげーし」
ティアは先程レオが来た際に、テーブルにお茶を出した子だ。ティアはパーティー内で一番かわいく。気配りもでき人気である。さらにアバターが現実と同じ似姿というペルソナ型であるのも人気の一つである。
そのティアは二人のやり取りに小首を傾げている。
「他の皆はどう?」
サラが周りを見渡して尋ねる。だが、誰も口を開こうというものはいない。皆、考えあぐねているのだろう。
「とりあへず。合併案の話し合いに参加するは。別に私は決めたわけではないから。話し合いでこちらのパーティー方針に支障がある場合は反対させてもらいます」
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