第203話 Mー10 ユウVSアリス

 アリスは発砲しつつ、ユウを追っていた。そして大きく離れたところでアリスは、

「待って! 話があるの!」

 と声を張り上げる。


 ユウは立ち止まり、アリスに振り返る。


「何?」

「私がクルエールと融合する」


 アリスは自身の胸に右手を当て、告げる。


「駄目だ!」


 ユウが間髪入れずに言葉をぶつける。


 その言葉にアリスは驚き、震えた。


 賛同してくれなかった悲しみ、そして怒りが去来する。


「俺がクルエールと融合する。クルエールと約束をしたんだ。融合すれば君をここから解放するって」

「わ、私だって。私にはさ、兄貴がいるから。ここに残らなければいけないの」

「俺だって仲間がいる」


 ユウはダガー・ウィンジコルを構える。


 それを見て、アリスは新たに決意を決める。


「譲れないってわけね」

「ごめん」

「いいわよ。ゲームならゲームらしく勝敗をつけましょう」

「ああ」

「勝っても負けても文句は言わないでね」

「言わないよ」


 アリスは拳銃の銃口を向ける。

 そして発砲して、勝負が始まった。


  ◯ ◯ ◯


 ユウはアリスを守りたい、助けてあげたいと本気だった。だからアリスを倒す。倒してクルエールと融合。そしてアリスを解放する。

 だからユウはダガー・ウィンジコルを振り、アリスを切る。自分が勝つのだと、その意志を刃に乗せて。


  ◯ ◯ ◯


 アリスは兄貴や大勢のタイタンプレイヤーから憎まれているユウを解放してあげたかった。強い意志を持ち、2丁拳銃のトリガーを引く。


 射撃においてアリスは下手っぴだ。2丁拳銃になればなおのこと、当てることは難しい。


 しかし、そんなことはどうでもいい。


 どうせ周りは木々が遮蔽物として邪魔をしている。


 そしてユウは接近戦を得意としている。

 なら向かってくる敵に銃口を向け、撃つだけでいい。


 ユウを倒すことだけを考え、無駄なことは考えず、トリガーをがむしゃらに引く。


 それが功を奏しているのかはわからないが、いつも以上に好戦している。


  ◯ ◯ ◯


 鳴り響く銃声はアリスの言葉のようでもあった。

 自分が勝たなくてはいけない。だから負けろ。全ては自分に任せろと。


 そしてそれを否定するようにユウはダガーで断ち切る。


 アリスの思いを、決意を、望みを。


 全ては自分に任せろとダガーを振る。


 自分は強い。だから負けろ。俺には仲間がいる。1人ではない。


 距離が詰まり、ユウのダガーが振り下ろされる。

 それをアリスは銃をクロスさせ、受け止める。


 押し合い、アリスが負け、後ろへとタタラを踏む。

 そこをチャンスとユウはアリスの腹をダガーで横に切る。


 アリスはカウンターにと銃口をユウの右側頭部にぶつかる。そしてトリガーを引き、銃弾をぶつける。


 ユウは4発中2発は防いだが、残り2発をくらう。


 すぐに木々を盾にしてユウは体勢を整える。アリスもまたすぐに距離を取り、リロード。


 そして戦いは再度口火が切られる。


  ◯ ◯ ◯


「ごめん!」

 ユウは最後の一撃を放つ。


 アリスは右からの袈裟懸けの一閃を受け、HPがゼロになった。


「やられちゃったか」

 自嘲気味にアリスは呟く。


「俺が君を解放する」

「……バカ」


 アリスは最後にそう言って消えた。


 ユウはアリスが消えてもしばらくは立っていた。


「これで良かったんだ」


 まるで自分に言い聞かせるようにユウは独りごちる。


 これで後はクルエールを自分の中に入れて、アリスを解放。


 ──アルクは大丈夫かな? それとスピカさんも。連絡……いや、戦闘中だったら迷惑だよな。終わったら向こうからくるだろうし待ってようかな。


 が、静寂を掻き消すようにどこからか発砲音が鳴る。


 ──敵!? 撃たれた!? どこから!?


 前後左右を確認するが誰もいない。


 ──いや、気配が!


 上と考えるや、見上げるのではなく、ユウは前方へと跳び転がった。


 再度発砲音が。今度は2つ。


 先程ユウが立っていた地面に穴が空く。


 そして青年が空から舞い落ちて来た。


「お前がユウか!」

「だとしたら?」

「死ね」


 言葉と同時に男は発砲する。


 ユウはサイドステップで大木の後ろに隠れる。

 ダメージは……受けていた。

 HPを確認すると少し減っていた。


 ──威力はないけど速いってやつか?


「エイラを覚えているか?」


 エイラ、その名は覚えている。だけどユウは、

「誰だ?」

 あえて知らないフリをした。


「お前がこの前、殺した女だ!」


 青年は激昂し、発砲する。


 ユウは木々を盾にその場を離れる。


「逃げるな!」

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