第100話 Aー3 カルガム山伝説
セラは天高く跳躍した。その到達点は空飛ぶクリスタルドラゴンを越えていた。
そしてセラはドラゴンに向けて短剣を目にも
その2本の短剣はドラゴンに突き刺さる。
「ギャアアア」
「うるさいよ」
セラは空中でドラゴンの頭に右回し蹴りを食らわす。
そしてまた短剣を取り出し、空中を動き回って切り刻む。
「すごい。どうなってるの?」
ユウは誰ともなしに驚きと疑問の声を投げた。
「たぶんだけど風属性のアクセサリーが影響しているかも」
「それだけであんなことできるの?」
「……ハイランカーならね」
セラは空を跳ねながら攻撃を多方向から繰り出す。
そしてドラゴンが悲鳴を上げて橋へと落下する。
しかし、ドラゴンが橋へとぶつかることはなかった。
なぜならドラゴンはHPが0になり消滅したからだ。
セラは軽やかに橋に降り立った。
「お疲れ様です」
「助けてくれてありがとうございます」
アルクとユウはセラに駆け寄って、礼を述べた。
「構わないわよ。それよりアイツ何だったの? なんか魔法の斬撃がなかなか通じなかったんだけど?」
「消去不可の魔法ダメージカットのバフ持ちだったんです」
「あーだからー」
セラは眉を八の字にさせて言うが、短時間でたった一人で倒したのだ。しかも魔法ダメージで。
○ ○ ○
「アルク、ユウ! 無事ね」
3人が橋を渡り、城門へと辿り着くとセシリアとミリィが駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ」
アルクが手を振って答える。
「それでそちらの方はホワイトローズの?」
ミリィがセラを見て聞く。
「セラだ。よろしくな」
「どうも」
「で、ここは当たりでいいんだよな?」
セラはクリスタルの城を見上げて聞く。
「たぶんそうだと」
「そっかそっか」
ミリィの言葉にセラはにやりと笑う。そして端末を取り出して操作する。
「それじゃあ入ろっか」
セシリアがアルクに向けて言った。
「ん、ああ。……それじゃあ自分達はお先に」
「ああ。がんばんな。ウチは仲間が着てから入るわ」
セラは手をひらひらさせて答える。
ユウ達は軽く一礼してから門扉を開けて青白いクリスタル城へと進んだ。
○ ○ ○
「にしても大きいね」
ユウは両開きの扉の前から城を見上げて言う。
「そうね。ずばり私の読みが的中ね。きっとここに攻略アイテムが隠されているのよ」
「どんなアイテムなの?」
ストーリーイベント攻略には過去の勇者グラムディアについて調べなくてはいけないということでセシリアは小説を読み、ここの洞窟にグラムディアに関する秘密があると知ったのだ。
「よく分からないわ」
「え? 小説とかに書いてないの?」
「二つあって一つは聖剣らしいけど。もう一つはさっぱり」
セシリアは肩を竦めて言う。
「ん? アルク、どうしたの?」
アルクは先程から扉を開けようと押したり引っ張ったりをしている。
「……開かない」
「スライドドアじゃない」
「セシ、ここはファンタジー世界だぞ」
と言いつつもアルクは試しにスライドさせようとしてみる。
しかし、扉はうんとも動かない。
「鍵が必要なのかな?」
「そう言えばさっきのクリスタルドラゴンからアイテムドロップしなかったの?」
「いや、そういうのはなかった」
「もしかして別の通路から城に入るとか?」
とミリィが言う。
「城の周りを探ってみよう」
そしてユウ達は城周りを探索する。
「そういえば図書館で借りた本には他に何が書かれてたの?」
ユウはセシリアに尋ねる。
「ん? 前に話したでしょ?」
「セシ、その時はユウはいなかったよ」
「そうだっけ?」
「確かリゾートイベントの時でしたから」
ミリィが記憶を辿って答える。
「あーそっかそっか。その時、ユウはいなかっね。説明するとね……グラムディアは覚えているわよね?」
「黒騎士だろ。ストーリーイベントの初めでヤイア姫を拐った」
「そう。で、この前図書館で借りた『カルガム伝説』でグラムディアのことが書かれてたんだよ。簡潔に言うとね……」
セシリアは歩きながらユウにカルガム伝説について語り始める。
○ ○ ○
昔、王都グラストンにグラムディアという勇敢な若者がいました。彼はお姫様に恋をし、お姫様も勇敢な彼に恋をしました。身分違いの恋ですが、王様が魔王を討伐したならばお姫様との婚約を認めると言いました。
グラムディアはさっそく魔王討伐に向かいます。
けれど魔王城に行くには竜の力が必要ということでグラムディアはカルガム山の竜王と相対しました。しかし、竜王は力は貸さぬと言います。なんとか力を貸してもらおうと交渉を続けると竜王は麓の洞窟奥にあるクリスタル城に宝があるのでそれを取ってきたら力を貸すと言いました。なぜそのような注文をしたのかというと竜王は大きいので洞窟に入れないからです。
洞窟には強力なモンスターが沢山出現しましたが、グラムディアは見事に洞窟奥にあるクリスタル城から宝を持ち出して竜王に届けました。
竜王は大層喜び約束通りグラムディアに力を貸すことにしました。
その後、グラムディアは魔王を討ち滅ぼして王都グラストンに戻ってきました。王様もお姫様との婚約を認め、彼を勇者と認め、勇者戴冠式や祭り、パレードを催しました。民衆も喜び、それらは大歓声で終わりました。
しかし、王様は勇者グラムディアの力を恐れて近衛兵に寝込みを襲わせました。
勇者グラムディアはなんとか助かり、カルガム山に逃げのびたのです。しかし、王都グラストンでは勇者がご乱心をし、王様を攻撃したというデマが流されました。勇者は一晩で反逆者となってしまったのです。
しばらくしてお姫様が城を抜けてグラムディアに会いやってきたのです。グラムディアはお姫様に全てを話しました。お姫様はグラムディアの言葉を信じて、王様の行為に激怒し一緒に暮らすと決意しました。そこでグラムディアは麓の洞窟奥にある城をお姫様のために改築しました。けれど完成には時間が必要でした。
そして竜王の宝と聖剣を使って強力な結界を構築して城が完成しました。グラムディアはお姫様の下に戻ろうと洞窟を出ると、山の頂から煙が立っています。急いで戻ると倒れた竜王がいました。竜王は王都からの軍勢にお姫様が連れて行かれたことを告げて亡くなりました。
グラムディアはお姫様を助けに王都に向かいました。聖剣は洞窟の城に置いてきたので軍に立ち向かうのは骨が折りました。さらに軍もまたグラムディアが聖剣を持ってないことを好機と窺い攻めに転じました。なんとか軍勢を退けて城に忍び込んで王様の下に。しかし、王様はなんと実の娘を人質にしました。
それでもなんとかお姫様を救出したのはいいけどグラムディアは大ケガをしました。せめてお姫様だけでも助けようと停戦を持ち掛けました。王様もそれを受け取り二人は城へと呼ばれました。
しかし、それは罠で城に入ると四方八方から矢が放たれて二人は亡くなってしまいました。
それ以降、黒騎士グラムディアと名乗る亡霊が王都にたびたび現れ、暴れるようになりましたとさ。
○ ○ ○
「……というのがカルガム山の伝説よ」
「長いよ! 全然簡潔じゃないじゃん!」
全てを聞き終えてユウは突っ込んだ。
「もう、文句言わないでよ」
「つまりここが小説に出てくるお城ってこと?」
「そういうことよ。そして小説通りならここにお宝と聖剣があるのよ」
○ ○ ○
「これは良いこと聞いちゃった」
セラは門扉で仲間達を待っていた。普通ならここからではユウ達の話し声は聞こえないが、セラは魔法のアクセサリーにてユウ達の会話を盗み聞きしていたのだ。
「カルガム山伝説ね」
セラは端末で王都にいる団員にメッセージを送った。
『図書館でカルガム山伝説の小説があるんだって。そこに黒騎士もとい元勇者グラムディアのことが書かれているらしいわ』
「これでよしっと。……にしてもあいつら遅いわね。何してんのかしら?」
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