第42話 EXー4 定例報告会3
イベントは終わり、一日が終わろうとしている。
いつもの城の中にある会議室。
いつものマリーを除いたメンバーたち。
ただ、いつもと違うのは空気が異様に重かったのだ。もう誰も語りたくない様子だ。
「どうですか? 皆さんの様子は?」
それでも葵が口火を切る。
それにまずセブルスがうろんな目を向ける。
「どうって、もう最悪。皆、暴れまくってるぜ。一部暴徒化して大変だ。なんとか権能を行使して強制的に沈静化した」
いつもは活気あふれる彼女も今回はぐてんとしている。
葵はどう返していいかわからなかった。とりあへず次に進むことにした。
「アヴァロンはどうですか?」
その問いにヤイアは、
「まさにセブルスが仰ったようにこちらもデモと暴徒化。ただ、こちらはほぼ全プレイヤーが参加していて大変でした。セブルスと同じように権能を行使し強制的に沈静化しました。その際は私一人では対応できないのでマルテにも手伝ってもらいましたわ」
「ええ、本当に大変でした」
マルテは机に突っ伏しながら答える。
「ロザリーはどうでしたか?」
「私は処理で大変なんだから」
ロザリーはテーブルに肩肘ついて答える。
皆、疲れていると察して今日は早めに終わらせようと葵は締め括る。
「では最後に計画通り次のプランに移りますのでくれぐれも……」
「あー待った。待った」
急にセブルスが割り込んで待ったをかける。
「なんですか?」
「その、大丈夫なのか? 精神状態マジでやばいぞ。なんとか沈静化できたけどさ」
「そんなに?」
「一時的なら問題ないが、このままだと鬱になるぞ」
「セロトニンかドーパミンでも打っとけば?」
ロザリーが適当に提案する。
「駄目に決まってるだろ。セロトニンは人によっちゃあセロトニン症候群になりやすい奴とかいるし」
「それじゃあ、エサをぶらさげるとか」
「エサってなんだよ?」
「……んー、なんか」
ロザリーは肩を竦める。それにセブルスはため息を吐いた。
「アップデートでうさを晴らしてくれれば問題ないのですが」
葵が頬に手を当てる。
「楽しんでもらえるようにしたんでしょ?」
ロザリーが尋ねる。
「ええ。……きっと」
「やっぱイベント早めるとかは?」
「いえ、まずは休ませないと。心が参ってるかたもおりますし」
と、ヤイアは休憩を優先させる。それだけアヴァロン側は大変ということだ。
「それじゃあ、休みのようなイベントをしようよ」
「というと?」
葵がロザリーに尋ねる。
「テコいれだよ」
「水着かよ。安直だな」
セブルスは呆れてため息を吐いた。先程からため息を吐いている。それだけ精神状態は芳しくないのだろう。
「それにもうすぐ五月といえどまだ四月ですわよ。時期が早すぎません」
と、マルテが。
「いいじゃん別に。どうせここはゲーム内。季節なんて関係ないでしょ」
「んー、水着ですか」
葵は腕を組み考える。
「少しはモンスター退治から離れてバカンスでのんびりとさ」
ロザリーの発言に葵は目を見開いた。
「そうです! モンスター退治ばっかだからストレスは溜まるのです。このゲームを満喫するためには戦うこと以外を勧めなくては」
「おい、まさかまじでテコいれするのか?」
葵は大きく頷く。
「やりましょう」
「やったー!」
ロザリーが万歳のポーズをとる。
「ただし今すぐというわけには。まずは休みをいれないと。それにイベントステージも用意しないとですし」
「それならこんなこともあろうかと作製してたよ」
「お前、まさか初めっから……」
「違うよ、セブルス。夏にやるかなーと思って作っていただけだよ」
「どうだか」
「では、とりあへず今はプラン通りに勧めましょう。そして次はテコ、……ではなくリゾート系のイベントにしましょう」
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