第132話 Aー11 ジョブチェン(アヴァロン)
ユウそしてセシリアはジョブレベルがMAXになったためギルドでジョブチェンジをした。
そして二人は待合室に戻り、アルクとミリィに新しいジョブをお披露目した。
一部ジョブはジョブチェンジすると衣装と装備が変わるようになっている。
「どう?」
セシリアは
「いいんじゃない」とアルク。
「似合ってますよ」とミリィが感想を言う。
「魔導士なんだよ? 魔女と魔導士ってどう違うの?」とユウが聞く。
「アヴァロンにおいては魔女は後衛型で魔法メイン。魔導士は前・中衛型でアイテムや武器を使って戦うの」
そう言ってセシリアは腰部の鞘に収められた短剣をユウに見せる。
「あとはこの刻印された手袋で殴るの」
次に手袋の甲を見せる。そこには円の中に幾何学模様がある刻印が。
「イメージとしては格闘魔法使いだね」
とアルクがわかりやすく例えて述べる。
「なるほど」
「なるほどじゃない! てか、あんた全然変わってないわね」
ユウは槍使いからジョブクラス3のアサシンにジョブチェンしていた。
「変わってるから。特に色が」
アサシンゆえ全体的に色が黒い。
「色だけでしょ? というかそれ初期衣装じゃない?」
「初期衣装?」
「新たにジョブを手に入れると貰える衣装よ」
「ふうん。……って、セシもでしょ?」
「残念。これは前もって購入していたのよ」
とセシリアは胸を張って言う。
「あっ、やっぱり。マントがないからおかしいな思ったんだよ」
アルクは手を叩いて納得する。
「ユウもそんな初期衣装の上下黒の地味な服じゃなくて、もっとましなのを買いなさい」
「いやいやアサシンだから。地味じゃないと。ねえ?」
ユウはアルクとミリィに同意を求めた。
「あくまでジョブだし。特にこだわる必要ないんじゃないかな?」
「そもそもモンスター退治に暗殺というのもアレですし」
「ええ!?」
意外な返答にユウは驚く。
「スピカに会ったでしょ。あのスピカだって近接戦闘タイプだけどヒラヒラのドレスを着てたでしょ?」
「うん」
スピカは青のドレスに刀だった。
アンバランスだけど強く。さらにその姿は優美であった。
「だから目立つアサシンもいてもいいのよ」
とセシリアは言う。
「うん。少しは遊んでおくよ」
「そうしなさい。せっかくジョブクラス3なのに何もしないのは勿体無いわ。ジョブクラス3の先輩としてどんどん聞いてちょうだい」
「でもセシ、このままだとユウに追い越されるんじゃないのか?」
アルクの発言にセシリアは、
「ムッ、失礼な! そんなそうそう抜かれるわけないでしょ。ユウ! 言っとくけどジョブクラス3はジョブレベルが上がりにくいからね。ここからは簡単に思っちゃあいけないよ」
「そうなの?」
とユウは顔をミリィに向けて聞く。
「はい。ジョブクラス3以降は上がりにくいのです。ゆえにジョブクラス4はハイランカーと言われるのです」
「そうなんだ。アルクは? もうそろそろジョブクラス4じゃないの?」
「そうよ。あんたのランクだともうクラス4でしょ? ちょっとジョブレベルいくらよ」
セシリアはアルクに詰め寄る。
「待て、落ち着けセシ。レベルはまだ低いよ」
「本当に?」
疑わしい目をアルクに向けるセシリア。
「本当だって。それよりほら、慣らしをした方が良いんじゃないの?」
慣らしというのは新しいジョブのスタイルを体に慣らすということ。所謂、慣らし運転。
「そうね。ちょっくらモンスター狩りに行っちゃおうかしら」
◯ ◯ ◯
「ほらユウ! 敵を惹きつけて!」
「俺、アサシンだよ!? そっちが惹きつけなよ。前衛でしょ?」
「ずっと後衛だったのよ! それに正確には今の私は前・中衛よ!」
セシリアは敵から離れて魔法を放つ。
王都グラストンからすぐの平原にてユウとミリィはモンスターを退治し、慣らし運転をしていた。
街からすぐ近くゆえモンスターも強くはない。一人でも余裕のはず。でも新しいジョブゆえ戦闘スタイルが合わず、なかなか倒せないでいる。
「私達も加勢すべきでしょうか?」
ミリィがアルクに聞く。
二人はユウ達とは遠く離れたところから観戦している。
「いや、慣らしだからね。やめておこう」
そもそも一人で倒せるほど敵は弱い。
ユウは槍使いの前身が
問題はセシリアだ。
「うっ、キモい。これ殴るの?」
へっぴり腰で殴らないのだ。
「よ、寄るなぁぁ!」
セシリアは火炎魔法を放ち、敵を燃やす。
「セシ、殴らないと!」
ユウがわざわざ敵の注意を惹きつけて、セシリアに隙やタイミングを与えているが殴るのでなく魔法を放っている。
「無理よ。キモいもん。ユウはダガーあるからいいけど。こっちは素手よ!」
「え? 腰に短剣装着しているでしょ?」
「あっ、そうだったわ」
セシリアは短剣を装着していたことを思い出して、腰の短剣を引き抜く。
「あーでもこれ近付いて刺さないといけないやつじゃん」
「当たり前。ほら!」
新たにモンスターが出現した。巨大シカ型モンスター。名はゼカルガ。この島にやってきてから散々駆逐したモンスターである。
キモくもなければ、怖くもない。
「これなら怖くないでしょ?」
「か、可哀想! 今まで散々火炎魔法で丸焼きにしてたでしょ?」
「うっ、で、でも〜」
ユウは敵に右横回りで近く。敵の注意がユウに向く。そしてダガー・ウィンジコルで切ったり、敵の攻撃を回避して背後からのチャンスをセシリアに与える。
セシリアは柄を握りしめる。そして意を決して、
「ううっ、ナムサン!」
敵の尻に短剣を突き刺す。
「ぶっきゃあ! け、尻に刺しちゃった! どうしよ!?」
その尻に短剣を刺されたモンスターはHPが0になり消失。
「やだー! 新品なのに! 尻の穴にズバって! えんがちょ、えんがちょ」
「大丈夫だよ、落ち着いてセシ。モンスターに尻の穴なんてないから」
「……そ、そだね」
とは言うが少し落ち込んでいるセシリア。
「ほら気を直して次にいくよ」
「まだやるの?」
「全然慣れてないじゃん。モンスターを殴れるくらいにならないと」
「あうぅ〜」
◯ ◯ ◯
慣らし運転の後、セシリアは武器屋に寄って帰るということでユウ達は先にパーティー用の家に帰っていた。
ユウはリビングで本を読み、アルクとミリィは夕食を作っていた。
「ただいま」
セシリアがリビングのドアを開けて言う。
「おかえ……え!?」
ユウは二度見した。
「どうしたのその武器」
「買っちゃった」
セシリアが茶目っけに答える。
「杖というかハンマーだな」
「ええハンマーです」
アルクとミリィも料理の手を止めてキッチンからリビングへ来て言う。
「そうよ。ハンマーよ。しかも刻印付きで魔法も可」
セシリアの持つハンマーは一見雷型のギザギザの杖のようにも見えるが上部が太く、叩く際の接地面は金属製で出来ている。
「ハンマーと杖の両方の性質を持っているということですね」
やはり僧侶ジョブのミリィはその辺りには詳しいらしい。
「これでもうバッチリよ!」
セシリアが意気込んで言う。
「なら明日が楽しみだな」
とアルクは肩をすくめて言う。
「むっ、何よ! 見てなさい! 大活躍するんだからね」
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