第183話 EXー3 緊急会議

 古城の一室。AI達が人型のアバター姿で集まり、ずいぶん前からとある件により緊急会議を行い、あれやこれやと意見をぶつけていた。


 けれど妙案はなく、AI達はグッタリしていた。


「まじでどうするよ」


 セブルスは椅子の背もたれにグッタリともたれかかり、顔を上にして天井を見上げる。


「なんか良い案ないの?」


 ロザリーは両肘をテーブルについて、両手で顔を覆っている。


「いっそアンケートを改竄するか?」

「駄目でしょ。中間で3位が最終で100以内に入ってないのはおかしいでしょ」


 ロザリー達の頭を悩ませているのはユウのことだった。ユウにはクルエールを中に入れるため生き残ってくれないといけない。

 だが、ここにきてタイタン側は次のイベントでユウを抹殺する覚悟で臨んでいることを知り、ロザリー達は対策を講じていた。


「てか、なんで中間で気付かないんだよ」

「だってこれで良いって言うから。それにあんただって気付かなかったの? タイタン担当でしょう?」


 セブルスはタイタンプレイヤーの管理を担当している。精神的に不安定な者を権能を使い、安定化させている。その他にも言論や行動にも注視している。


「ユウを恨んでんのが一部だから問題ないと思ったんだよ」


 ユウについて殺意や恨みを抱いているのはタイタン内でもレオパーティーとエイラに好意的だったプレイヤーで数は多くはなかった。


「アムネシアのミリィやアルクも関連しての上位ですね」


 とヤイアが溜め息交じりに答える。お嬢様然とした姿だが、今は頬杖をついて態度が悪い。


「ミリィってそんなに恨まれてますの?」

 マルテが誰ともなしに聞く。


「そりゃあ、垢BANくらってタイタンに鞍替えったプレイヤーは多いからね。中間後ミリィの同じ仲間として扱われて票も集まったんだろうね」

 ロザリーが手の平を上にして答える。


「アルクは? なぜ彼女も票が集まるので?」

「そりゃあ、垢BANのがれじゃない?」

「何かチートしてたんですか?」

「不正行為によるレベル上げ。そしてEXジョブ取得。まあ、EXジョブについては本人以外は知らないらしいけど」

「それら三つの矛先が合わさってユウはアンケート上位に入ったと?」

「そだねー」

「ロザリーしっかりしろよ」


 セブルスがロザリーを注意したところでクルミの姿をしたマリーとタイタンプレイヤーのキョウカが現れた。


「遅くなって、すまない」

 キョウカが謝辞を述べる。


 セブルスはそれを無視して、

「葵、どうするよ。このままユウを参加させたらリンチ受けるぜ」

「まず次のイベント開始時にユウの周囲にアヴァロンプレイヤーがいるようにしましょう。それと最悪、クルエールを中に入れるのは考え直さないといけませんね」

「考え直すって、今更?」

「なるべくユウがやられないようにしないといけませんね」

「あの、なんでしたらやられたら消滅というのを辞めてはどうでしょうか? この前のイベントと同じ様に最もポイントの低かったプレイヤーが消滅にしては?」

 マリーが意見を述べる。


「それもう論じた」

 ロザリーが即答する。


「すみません」

 マリーは恐縮して肩を縮める。


「おめーは何かないのか?」

 とセブルスは遅れてきたキョウカに意見を聞く。


「ふむ。そうだね。ユウではハイランカーを倒すのは無理だろうね。ならば、ユウは遠いところに配置させておけばいい。そしてアリスとぶつけさせ、クルエールの件について決意を明らかにさせればいいのでは?」

「それもさっき論じた」

「ならなぜ悩む?」

「あのな。ユウをアリスにぶつけさせてどうする? 戦わせるのか?」

「戦うのかい? 仲が良いのだろ?」

「……今は無理じゃね」

 セブルスは首を振る。


に角、今は次のイベントでユウがやられないように考えれば良いのでは?」

「だーかーらー、それが分かればとっくに解散してるっつーの!」

 ロザリーが声を荒くして文句を言う。


「何が問題だい?」

「ユウはまだ中堅上がりのローランカーよ。どうやって生き残らさせるのよ」

「葵が言った様に布陣を敷けば良いのだよ。なるべくタイタンプレイヤーに場所がバレないようにね」

 と言い、キョウカは不敵に笑う。


「アヴァロンは100人だけだぞ」

 セブルスは呆れたように言う。


「鬼ごっこは鬼から逃げて隠れのが基本。まさか鬼に立ち向かって遊ぶのかい? 違うだろ? アヴァロンプレイヤーからしたら戦うよりも逃げ隠れした方が得だと分かるだろ?」

「……まあ、そうだな」

「そして100人だ。それはつまり100しかいないというわけだ。大きな島に目当てのプレイヤーを探して見つけるのは大変だろう? なら勝機はあるではないか」

「勝機はあるって、お前はタイタン側だろ?」

「だが日本人の味方だ」


 セブルスの一睨みにもキョウカは笑顔で返す。


「皆さん、一つ変更点を加えたいと思います」

「何だ? 葵」


 次にセブルスは葵に視線を向ける。


「本イベント後、双方の中からランダムで若干名を解放させるというものです」

「あん? どうして今更?」

「ユウが生き残った場合、クルエールと融合し、アリスは解放されますよね?」


 ロザリーが理解して手を叩く。


「あ、そっか。このイベントはアヴァロンプレイヤーは負ければ消滅するってだけで報酬も何もなかったんだ」


 もしユウが勝ち、アリスが消滅したらタイタンプレイヤーは不審に思うだろう。


「そうです。ですので、アリスは解放しても問題がないように双方のプレイヤーから若干名を解放すると足さなくてはいけません」

「なるほどね。分かった。新しく告知しておくよ」

「お願いします」

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