第251話 Aー12 第二の異変

 アヴァロンプレイヤーがタイタン側の暴徒化したNPCを倒している時、異変が発生した。


 それはNPCではなくタイタンプレイヤーが現れたという異変。


 ここはアヴァロン側のフィールド。

 それがどうしてここに。


 暴走化したタイタン側のNPCがいるという時点でおかしいが。


「なんでタイタンプレイヤーがここいるのよ」


 突如として現れたタイタンプレイヤーにアヴァロン側の女格闘家が声をかける。


 だが、返事はなかった。代わりに発砲音が鳴り響く。

 そして眉間を撃ち抜かれた女格闘家は後ろに倒れる。


「おい! てめえ! 何してくれてんだ!?」


 女格闘家の仲間が啖呵を切る。

 だが、タイタンプレイヤーは虚な目をしたまま何も答えず、アヴァロンプレイヤーに銃口を向ける。


「なっ!?」


 アヴァロンプレイヤー達は驚き、たたらを踏む。

 そしてタイタンプレイヤーはトリガーを引……く前に吹き飛ばされた。

 それは先程眉間を撃ち抜かれた女格闘家が起き上がって、タイタンプレイヤーを蹴り飛ばしたからだ。


「大丈夫か? お前?」

 仲間が女格闘家に聞く。


「ゲームなんだから顔を撃たれたからって死にはしないよ。ま、クリティカルヒット判定なのかHPはごっそり削られたけどね。それより……」


 吹き飛ばされたタイタンプレイヤーはゆっくりと起き上がる。


「急に撃つなんて失礼ね」


 だが、タイタンプレイヤーは相変わらず何も答えずに銃口を女格闘家に向け、発砲する。


「2度も通用すると」


 女格闘家はメリケンサックを嵌めた拳で銃弾を弾く。

 そして一気に距離を詰めて、タイタンプレイヤーの顔を殴り飛ばす。


「うぉら!」


 その後、女格闘家の仲間が槍で倒れたタイタンプレイヤーを突き刺す。

 動けなくするつもりだったが、タイタンプレイヤーのHPが0になり、タイタンプレイヤーは消滅した。


「あっ!? やっちゃった。ごめん」

「いいよ。どうせ話が通じなさそうだったし」

「それより、どうなってんだ? イベントは開始されねえし、急にNPCが現れたと思ったら、次にタイタンプレイヤーだぜ? しかも話が通ず暴徒化」

「さあね。一体何が起こってんだか」


 女格闘家は溜め息を吐く。


  ◯ ◯ ◯


 虚な目をしたタイタンプレイヤーは各地で現れ、アヴァロンプレイヤーを攻撃した。

 アヴァロンプレイヤー達はそれをなんとか撃退するが、いまだに現れるNPCの対応もあり、苦戦が強いられていた。


「ああ! もう! どつなってんのよ!?」

 セシリアが苛立ちの声を放つ。


「セシ、声がでかい! 気づかれるよ!」

「でも……むう」


 ユウとセシリアは一度態勢を整えようと路地裏に隠れた。

 NPCもタイタンプレイヤーもあんまり道の細い路地裏やスペースの狭い物陰等には目を向けない。


 が、それはであって、ではない。時折、路地裏にも進入するタイタンプレイヤーがいる。


「どうすんのよ?」

「とりあへず。攻撃して疲れたら隠れる……みたいな?」

「ヒットアンドアウェイみたいな」

「そんな感じ」

「で、どうする? 今、タイタンプレイヤーが一体そこの道を彷徨いているけど。今なら背後から先制攻撃できるわよ」

「いや、あれはランクが高いからパス」

「でもあいつ、ずっとうろうろしてない? 私達を探してない?」

「まさか」


 と、そこでメッセージ音が鳴った。


「やばい! なんでこのタイミングでメッセージを送るのよ!」

「セシ、このメッセージ音は個人しか聞こえないよ」

「あ!? そうだったわ。……って、誰かと思えば運営じゃん。しかも2つも」


 セシリアとユウは運営からのメッセージを開封する。


『アヴァロンプレイヤーの皆様へ。

 此度はご迷惑のほど申し訳ありません。説明の方なのですが、長文となるのでメッセージを2つほどに別けさせていただきました。

 まず簡潔に申し上げさせていただきます。今、外からの襲撃により、アヴァロン内ではバグが生じております。NPC、タイタンプレイヤーが暴徒化しております。どうやら外敵はアヴァロンプレイヤーの皆様を傷つけようと考えている様子です。

 皆様方は彼らを倒しても問題はありません。こちら側も相手側と戦っており、収拾するには時間がかかります。それまでの間、ご協力のほどよろしくお願いします』


「外からの攻撃? 何それ? 警察?」

「警察なら自分達を攻撃するのはおかしくない?」

「それもそうよね」

「2つ目のメッセージを見てみよ……セシ!」

「ん!?」


 ユウはセシリアを横へと押し、セシリアを警棒で攻撃しようとするタイタンプレイヤーにダガー・ウィンジコルで切り掛かる。


 結果、ユウは左肩を殴られ、タイタンプレイヤーはユウのダガーで左胸をひと突きされる。


 双方、HPは大きく削られたが、致命傷ほどではない。


 次の一手に動いたのはユウだった。

 ユウは左胸に突き刺したダガーを捻り、そして抜き取る。そして顔、首、胸と切り掛かる。


「ユウ、どいて!」


 ユウは言葉通りに右へ大きく飛ぶ。


「くらえ!」


 セシリアのハンマー型魔道具によってタイタンプレイヤーは頭を叩かれる。

 大きくな打撃音と共にタイタンプレイヤーは腰を曲げる。


「まだまだぁ!」


 ハンマーの先が火を纏い始める。


「くらえ! フレイムインパクト!」


 火は大きくなり炎となり、相手を燃やす。

 だが、タイタンプレイヤーが腰を上げ、ハンマーを押し上げる。


 セシリアも力を込めてハンマーを下へと押すが相手の方が強く、とうとうハンマーを押し返された。


 セシリアはたたらを踏んで後退。


 やはりランクが上なだけあって、パワーで押し返された。


「ユウ、ど、どうする?」

「セシは前を。俺は後ろから攻撃する」


  ◯ ◯ ◯


「た、倒せた〜」


 戦闘が終わり、セシリアはペタンと地面に尻をつける。


「どんなに相手が強くても細い路地なら前後から攻撃すれば勝てるってことだね」

「でも向こうは飛び道具持ちよ。細い路地なら避けきれないじゃない」


 セシリアは文句を言う。


「まあまあ。ゲームなんだし、頭を打たれてもHPが0にならない限り死なないよ」

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