第34話 Aー14 制圧戦2 交戦
ユウ一人だけアルクたちと離されてイベントステージに飛ばされた。
でも一人知り合いがいた。
「一体どうしたものでしょうか?」
それがアムネシアのミリィだった。
今はユウたちがいるフィールドは第29フィールドで高原。中央の26フィールドから南東の方角にある。アルクとセシリアは三段目の第43フィールド。二人はユウにインカムで『私たちが来るまで待つように』と伝えた。
すでに開始時刻を10分を過ぎ、フラッグの中心ではアヴァロンプレイヤーたちが攻めるか守るかを議論していた。そしてその中から一人のプレイヤーがユウに近づいてきた。
「てめえちょっと見てこいよ」
ごつい体の格闘家が偉そうにユウに命令をだす。
「お前がいけよ」
「シーフなら身軽だろさくっと見に行けばいいんだよ。な!」
と、睨みながら言ってユウの肩を掴む。
「あのな、出たら戻れねえなら行く意味ねえだろ。お前が行けよ。でかい図体して腰ぬけか?」
「んだとてめえ!」
格闘家はユウの肩から胸ぐらを掴む。そしてユウを引きずりフィールドの外へ放り投げようとする。
「待ちなさい!」
ミリィが杖で格闘家の顔を
ユウもその隙に相手の手首を捻る。そして解放され相手の背中に蹴りをいれる。思いの外、格闘家は受け身もとれずに倒れた。
「てめえら何する」
「うるさいボケ!」
格闘家の仲間たちがユウとミリィを取り囲む。
「お前ら協調性がないんか?」
その内の一人、ユウと同じシーフが啖呵を切る。
「命令することが協調性か? お前何様だよ」
ユウは相手を卑下するように鼻で笑った。
「てめえ、マジ調子こいてっといてこますぞ!」
シーフが顔を歪ませながら一歩前に出る。それにユウも相手を睨み返しながら一歩前に出る。
二人が視線をぶつけ合っていると、いくつかの乾いた音が鳴った。
ユウとミリィを囲んでいたプレイヤーの一人が、
「なんじゃあ、こりゃあ?」
と、腹を押さえていた。
そして誰かが言った。
「銃撃だ!」
囲んでいたプレイヤーもその声に一斉に散り散りになる。
とうとう戦闘が始まったのだ。
しかし、霧が邪魔で相手がどこにいて何人なのかは分からない。一応、音から大体の方角を推測することはできるが。
また乾いた音が鳴る。今度は先程より多く音が鳴る。それが次第に連続で鳴り響く。数発から、数十発へと。
アヴァロンプレイヤーの多くは為すすべなく撃たれ倒れる。
「私の後ろへ」
ミリィがユウに叫ぶ。ユウはすぐに言われた通りミリィの後ろに隠れる。
そしてミリィは杖で地面に刺し、魔法を唱えた。
「我を守れ! リフレクトシールド!」
一瞬ミリィの前面に白い光が瞬き、人より少し大きい八角形の形を作る。八角形の光はすぐに消えたが、シールドは展開されていて銃撃を跳ね返す。
「ユウさんは回り込んで前面の敵に奇襲して下さい。たぶん相手も霧でこちらのことを把握できていないと思います」
「君は?」
「私はここで相手の注意を引き付けます。囲まれたら終わりです」
「先手必勝だね」
「先手は取られていますが。まあ、今から挽回しましょう」
「行ってくるよ」
ユウが動こうとしたところで、
「待ってください」
と、急に止められた。
「その前にバフをかけておきます」
ミリィはユウに向け補助魔法を唱える。
「基本ステータスと回避率、それに視力を上げました」
「ありがとう。それじゃあ今度こそ行ってくるよ」
ユウは一気に駆け出した。フィールドを抜けないように注意し前方へと回り込む。
大きく回り込んだおかげかユウがタイタンプレイヤーを見つけたとき相手は背を向けていた。
その中でミリィのリフレクトシールドに跳ねられた弾を受け、悶えるプレイヤーたちがいる。彼らは膝を地に着け悶え、こちらにまだ気づいていない。ユウはどうして相手は悶えているのか不思議と思ったがこれはチャンスと思い、深く考えずに悶えているプレイヤーの一人に近づいた。
そして後ろからダガー・ウィンジコルで頸動脈を切り裂く。
相手はユウも引くような大きな叫び声を上げた。
その声に気づきタイタンプレイヤーたちは後ろに振り返ってユウに向けトリガーを引く。それをユウは頸動脈を切り裂いたプレイヤーを盾にする。
弾は盾にしたプレイヤーに当たる。どうやら仲間からの攻撃は無効らしい。
「卑怯もの! 前に出やがれ」
タイタンプレイヤーが怒鳴る。
そしてタイタンプレイヤーの一人がナイフを取り出しユウに向かう。それに相手の仲間プレイヤーが掩護射撃を放つ。
盾にしたプレイヤーの背中をウィンジコルで刺して消滅させる。そして、ユウはナイフを持って向かってくる敵プレイヤーをウィンジコルで迎え討つ。掩護射撃をかわしつつ、向かってくる敵に相対する。うまくナイフをウィンジコルで弾き、相手の胸を切り裂く。
相手は苦痛の悲鳴を上げ、後退する。そしてナイフを捨て、拳銃を取り出してユウに発砲する。
しかし、それをユウは避ける。
相手は驚きながらも何度も銃弾を放つ。
ユウは回避したり、銃弾をウィンジコルではじいたりして相手に詰め寄る。
「クッソォー!」
「やあー!」
ユウのウィンジコルが相手の左胸を突き刺す。
相手は悲鳴を上げ消滅。
「てめら、一斉射撃だ!」
相手の仲間プレイヤーたちが銃弾の嵐をユウに放つ。
さすがに全ての銃弾を回避したり、弾いたりはできず数発撃たれる。
「なんで痛がらねえ? こいつ化物かよ!」
タイタンプレイヤーは謎の言葉を発しながらトリガーを引き続ける。
ユウは一人に近づきウィンジコルで切り裂く。そしてもう一人、すぐ近くにいる別のプレイヤーにも攻撃を。
だが、調子が良かったのもそこまでタイタンプレイヤーの一人が手榴弾を投げたのだ。手榴弾はユウの手前で爆発し、ユウは後ろへと飛ばされた。すかさず残りのタイタンプレイヤーがユウの体を踏み、銃を向ける。
殺られる。ユウはそう思った。
しかし、
「ぶへ!」
ユウを踏みつけていたプレイヤーの体の真ん中から矛が突き出ていた。敵プレイヤーは消滅し、代わりに別のプレイヤーが視界に現れた。
「君! 大丈夫かい!」
片手に円錐型の大槍を持つ女性騎士が尋ねる。
「大丈夫です。他のタイタンプレイヤーは?」
ユウは起き上がり、周りを見ると他のアヴァロンプレイヤーがタイタンプレイヤーを倒していた。
「銃撃が止んだと思って駆け出したらちょうど君が踏まれている現場に出くわしたんだよ」
「助かりました。ありがとうございます」
「なーに。礼を言うのはこっちのほうさ」
女騎士はユウの肩を叩いた。
○ ○ ○
「無事でしたか!」
ユウの姿を見つけミリィが心配して駆け寄る。
「ミリィの作戦のおかげだよ」
「そんな。私なんてしょせんユウさんに無茶をさせただけですし」
ミリィはそう言って俯く。
「気にしなくていいから。あれがあの時の最善だったんだし」
「ユウさん。そう言っていただきありがとうございます」
「かたっくるしいからそういうのはやめてよ」
「すみません」
ミリィははにかむ。
「あと、さん付けもやめてくれない」
「はい。よろしくユウ」
○ ○ ○
アルクとセシリアがフィールドの外へ出ようと動きだした時、
「おい! あんたら何勝手に動こうとしてんだ?」
双剣の剣士が二人を咎める。
「何って、なか……」
セシリアの発言をアルクが手を向け止める。
「攻撃に向かうんだよ」
「何が攻撃だよ。これは制圧戦だぜ。そういうのは中心の奴らに任せて俺達はここを死守しなきゃあならねえだろ」
「はあ? それで勝てるとでも思ってるわけ?」
セシリアが疑問に思って聞く。
双剣の剣士は鼻で笑ったのち、
「当たり前だろ。制圧戦はフィールドの数で決まるんだよ。制圧しても制圧されたらおしまいだろ。相手より1つ多ければ勝ちなんだよ。つまり中央さえ押さえたらいいんだよ」
そう言われてセシリアは言い返すことができず口を閉ざした。
「それでその中央のフィールドをどう押さえる? まさか中央付近のフィールドにいるプレイヤーに任せるのか? そいつらのほとんどが初心者クラスだぞ」
セシリアに代わりアルクが問う。双剣の剣士はその問いに少し考えたのち、
「それは南にいるスゥイーリアたち、ホワイトローズの奴らが制圧部隊を送るんだろ」
「なるほど」
アルクはそう言ったのち少し離れて、インカムを使い誰かと通信をする。少しして、
「どうやら私たちが制圧部隊ではないが先遣隊として選ばれたぞ」
「え!?」
双剣の剣士は目を丸くする。
「いやいや、待てよ」
「すまないがここを頼む」
アルクは相手に背を向け、早歩きで去る。
「待て!」
と、言われるがアルクは無視して進む。
双剣の剣士はインカムを使い誰かと連絡を取り始める。信じられなかったので確認の連絡だろうか。スゥイーリアか? それともホワイトローズの誰かか? いや
「本当なの?」
セシリアが心配して聞く。
「ああ。本当のことだ。制圧部隊編成の前に情報が欲しいらしい。それで今、先遣隊を名乗り出たんだ」
「で、OKだったの?」
「ああ」
スゥイーリアとの縁がここで有効になるとは嬉しいことだ。
「さあ、行こう。ユウが待っている」
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