第214話 EXー2 緊急事態
中世風の城内にある作戦会議室。
そこに六体と一人が緊急で集まっていた。
ここはアヴァロンでもタイタンでもない電脳空間。
「このスレッドを立ち上げたプレイヤーは誰なんですか?」
マジシャン風の姿をした少女が自身の持つ端末を指して短髪の女性に聞く。
問いかけた少女の名前はロザリー、問いかけた短髪の女性はセブルス。
プレイヤーこと人間をこのゲーム世界に閉じ込めたメンバーである。そして一人を除いてここにいるメンバーはその張本人達。
六体は自我を持ったAIことAEAIで、残りの一人は人間でキョウカというプレイヤーである。
「かなり刺激的な内容ですわね」
とマルテが言う。
そのスレッドには自分は公安の人間で外から来たことや、プレイヤーを助けに来たことが書かれていた。
「内容からいたずら……と言いたいが、書いたプレイヤーを特定できないとなると……」
「マジで外部侵入があったと?」
スレッドの内容はほとんどが嘘だが、中には本当のことも書いてあった。
「葵、どうだ?」
「ありました。全部で4体」
『まじか!』
ロザリーとセブルスの声がハモった。
「アヴァロンの方はどうなのです?」
白いドレスを着たお嬢様然としたヤイアが尋ねる。
「そちらはありません。タイタンだけですね」
「それって麒麟児が目当てってこと?」
「はい」
「ふうん。クルエールでなく麒麟児かー」
マルテが自身の顎に拳を当てつつ言う。
「クルエールは魔改造された
とロザリーは言う。
「でも、このゲームを作ったのはクルエールでしょ? クルエールを助けて、支配権を元に戻した方が簡単でしょ? 麒麟児を助けたらからといっても……ねえ?」
「そう……ですね。もしかしたら何かあるのかもしれませんね」
「何かとは?」
「彼らが麒麟児の力を取り戻す何か持ってきたとか?」
「戻せる力? あんのか? そんなもん?」
とセブルスが聞く。
「とにかく。外から侵入された以上、警戒を。セブルスはスレッドの彼らを調べて。ロザリーはタイタンプレイヤーの動向を注視。マリーとキョウカは麒麟児を。そしてヤイアはアヴァロンにも注意を」
「あら? こちらもですか? 侵入の痕跡はないのでしょ?」
葵は首を振り、
「いいえ、私達はこのスレッドから侵入を知りました。すでに後手に回っています。ですので、いつ第二陣が来るのか分かりません。なるべく注意を怠らないように」
「わかりましたわ」
「あれ? 私は?」
マルテだけが呼ばれなかった。
「マルテはフィールドの調査を。彼らが現れたことで異変がないのかを調べて下さい。ウイルスを撒いてある可能性もあるので注意を」
「無理矢理来たんだから、でかい穴くらいはありそうだな」
とセブルスは言う。
「麒麟児ことカナタには何か異変はありましたか?」
「これといって何も。いつも通りです」
マリーが変化はないと首を振って答える。
カナタは中国産の量子コンピュータで、自我を持つAIである。名は麒麟児。ゲーム内では葵達により、子供姿でタイタン内に封じられた。
「もし変化があるとしたら背が伸びるとかですか?」
「カナタは少年姿だから、見た目の変化といえば、背が伸びるとかかな?」
キョウカが疑問交じりに答える。
「見た目が変化って。馬鹿かよ。変化といえばステータスやチート能力とかだろ?」
「チートねえ? もしかしてアヴァロンのユウと同じように融合とか?」
「誰に融合だよ?」
「例えば、外から来た者とカナタとか。この場合は合体かな?」
「それはないね」
「どうして?」
「カナタの力は抑えられている。融合はもちろん、チート行為は無理だ」
「では、外から来た者がそういったことを可能にするプログラムかクラッキング能力を持っていたら?」
「……」
セブルスは何も答えず、半眼でキョウカに視線をぶつける。
葵は咳払いし、
「とにかく。外からの者達について調べましょう。今は言った通りにしてください」
「フン」
葵にそう言われては仕方がなく、セブルスは不愉快気味にそっぽを向く。
「皆さん、いいですね?」
『了解』
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